オフィス内装コストを抑えるためのポイント
オフィス内装コストが世界的に高騰している4つの理由
世界的な労働力不足に伴う人件費の高騰、物価上昇などの影響は企業のオフィス戦略にも大きな影響を与えている。まずは世界の状況を見てみたい。
内装工事コストに関するJLLの調査レポート(英語版)によると、EMEA(欧州・アフリカ・中東地域)では過去1年間平均で人件費が12%超上昇、内装工事コストは前年比5.2%上昇した。
北米地域(米国・カナダ)では、高品質のオフィスを求めるテナントの要望を受けて設計・内装工事が高度化しており、こうした要因が内装工事コストの上昇を促す主な要因となっている。
一方、アジア太平洋地域を調査対象とした内装工事コストに関するJLLレポート(英語版)では、建築資材価格の上昇は落ち着いているものの、依然としてエネルギーコスト高騰とサプライチェーンの混乱が内装工事コスト高の要因となっているという。
内装工事コストが高騰している要因は地域によって異なるが、主に以下の4点が挙げられる。
1. 労働力不足による人件費の高騰
2. ガソリン、電気料金の高騰
3. 地政学的リスクに伴う輸入価格の高騰
4. 高品質のオフィスに対する需要増
従業員をオフィスに呼び戻すための高品質化が内装コスト増の要因に
従業員に自発的にオフィスに出社してもらうために魅力的なオフィス環境を構築する必要があり、内装工事コストの負担が大きくなっている
JLLの調査によると、リモートワークなど先進的な働き方で知られる欧米の主要都市ではオフィス出社率がコロナ前の水準に戻っておらず、経営陣が“オフィス回帰”を呼びかけても、従業員側は退職も辞さぬ覚悟で必死の抵抗を続けているという。
欧米企業においてオフィス出社を阻害する大きな理由に挙げられているのが、オフィス内の騒音やプライバシーの欠如だという。多くのオフィスにおいて在宅勤務レベルの快適さに至っていないというのが根本的な要因とされている。
JLL プロジェクト・開発マネジメント シニアディレクター 兼 プロジェクト・プログラム実行担当 アンドリュー・ハドソンは「ハイブリッドワーク制度を採用しながら、従業員に自発的にオフィスに出社してもらうために魅力的なオフィス環境を構築する必要があるが、オフィス内に共同スペースや個室ブースなどの多種多様なスペースを構築したり、IWMSなどのオフィス関連のテクノロジーを採用するなど、内装工事コストの負担が大きくなっている」と指摘する。
内装工事コストの高騰は日本でも大きな課題に
オフィスマーケットの世界的な潮流として、いわゆる“質への逃避”が顕著になっている。この傾向は日本でも同様で、例えば「人材採用」の観点からオフィスの立地や品質にこだわって移転を検討する企業が増えている。
しかも、円安下の日本は輸入価格高騰(建築資材、ガソリンなど)や人手不足に対する人件費上昇が著しい。2023年5月に発表したJLL記事「【座談会】オフィス戦略のプロが『オフィスコストの最適化』を議論」でも言及しているが、内装工事コストの高騰を受けて、オフィス移転・リニューアルプロジェクトを中止するテナント企業も存在するという。そのため、入居契約の前に工事区分の変更協議を行うなど、コスト削減策が重視されるようになっているという。
ちなみに、前述したアジア太平洋地域版の内装工事コストに関するJLLのレポートによると、当該域内の主要都市において内装工事コストの相場が最も高かったのは東京だった。
内装工事コストを抑制するための施策
オフィス移転・リニューアルに伴う内装工事コストを抑制するためには下記のような方法が考えられる。
フリーアドレスやABW型オフィスを採用し、床面積を効率化
全員出社が前提で執務スペースを固定席とする場合、外出が多い営業担当者がオフィスに滞在する時間は限られる。固定席では座席が未稼働となる時間が多い半面、必要な床面積が大きくなる。そのため、執務席を共有するフリーアドレスや、業務に合わせて働く場所を選べるABW型オフィスを採用することで床面積を最適化。賃料負担を軽減することができる。
【フリーアドレス導入事例】:コンサルティング会社のリンクアンドモチベーションはコロナ禍を受けて働き方・オフィスの在り方を見直し、縮小移転を実施。新たなオフィスはフリーアドレスを採用したことでオフィス面積を大幅に削減できたことで賃料負担分をIT投資や従業員のベースアップに回すなど、再投資に成功した。
【ABW型オフィス導入事例】:JLL日本では2022年11月に東京本社オフィス、同年12月に関西オフィスを統合移転した。JLLが提唱する最先端のワークプレイス戦略「FoW(Future of Work)」を具現化するべく多種多様な機能・スペースを有するABW型オフィスとしている。また、オフィス移転のゴール設定・コンセプト設定からプロジェクトマネジメントなど、プロジェクト全体を自社のリソースで推進しているのが特徴。
※JLL日本の東京・関西オフィスは事前予約制でオフィスツアーを実施しています。ご興味ありましたら下記よりお問合せください。
セットアップオフィス/居抜きオフィスへの移転
ビルオーナー側がコスト負担し「内装付きのオフィス」として賃借できるセットアップオフィスも通常の賃貸オフィスに比べて内装工事コストが抑えられ、オフィス移転に要する期間も短縮できる。
賃貸オフィスでは、テナントが退去する際に原状回復工事によって内装造作物を撤去するのが一般的だが、居抜きオフィスはパーティションや会議室などの内装・設備が残った状態を後継テナントが引き継いで契約するため、内装工事コストを抑えられる可能性が高い。
【セットアップオフィス活用事例】:IoT と AI を組み合わせることで、あらゆる作業現場の働き方に革新を起こすシリコンバレー発スタートアップのMODE, Inc.は 2024 年 8 月 13 日、東京・神田岩本町に位置するセットアップオフィスに移転した。セットアップオフィスを選択した理由は初期投資を抑えるためだという。内装造作工事が必要な一般的な賃貸オフィスビルの場合は一時的に大きくキャッシュアウトし、スタートアップ企業には大きな負担になる。セットアップオフィスは賃料水準が競合物件に比べて多少割高だが、毎月賃料としてコストを負担するほうが事業を行う上で都合がいいとの判断だ。加えて、高騰する内装工事コストを抑制することができ、移転から間もなく業務を開始できる点も高く評価している。
【居抜きオフィス活用事例】:クラウドコンピューティングサービス事業などを展開するIT企業のさくらインターネットは2021年10月、大阪のAグレードオフィスで賃借していた850坪のオフィスを解約し、中規模オフィスのワンフロア85坪へと移転した。移転先は内装コストを抑えられる「居抜き物件」だ。前テナントから引き継いだオフィス什器の他、カウンターバーなどを有効活用しており、オフィスの半分程度をオープンスペースとし、コミュニケーション活性化を念頭に置いている。
入居契約前に工事区分の変更を協議する
施工会社の選定と費用負担を取り決める工事区分において、B工事ではテナントが工事費用を負担しながらも、オーナーが指定した施工会社を起用することになるので、相見積もりによるコスト適正化が難しい。そのため、オーナーと交渉し、B工事をC工事に変更することができれば、テナント自ら発注先を選定でき、B工事に比べてコストを下げられる可能性がある。
※工事対象は物件によって内容が異なる
プロジェクトマネージャーを起用する
オフィス移転・リニューアルプロジェクトではオフィスの規模が巨大になるほど多種多様なタスクが生じ、社内リソースのみで対応すると工事コストや工期を管理しきれず、結果として無駄なコストが生じる可能性が高い。
当初想定していた品質を保ちつつ、決められた予算・工期内で移転プロジェクトを完遂するためには、オフィス移転に精通した外部のプロジェクトマネージャーを起用するのも一考の価値がある。
プロジェクトマネージャーは予算・スケジュールの策定、建材・家具などの調達計画など、施工業者やコスト・工期、品質などをマネジメントし、事業主の代理として適正な予算・コストでプロジェクトを遂行に導くことができる。
【プロジェクトマネージャー起用事例】:日本を代表する化粧品会社である資生堂は2023年11月、人財育成施設「Shiseido Future University(以下、SFU)」が開業した。SFUは創業150周年記念事業プロジェクトとして、JLLがプロジェクトマネージャーを担当。「国内外のグループ会社から選抜された次世代の経営リーダーとなりうる“人財”を育成するにふさわしい」施設と位置付けられ、単なる汎用研修施設とは一線を画す、資生堂の歴史や文化といった“DNA”をも体感できる施設づくりを目指した。これまで経験したことがない施設をつくることになるため、多くのステークホルダーの意見調整が必要となり、資生堂が理想とする空間構成において難易度の高い工事が求められた。デザインの実現可能性など、様々な観点から検討事項が多く、同社が理想とする高品質な空間づくりを実現しながら限られた予算・工期内に収めることに成功した。
オフィスは“コスト”ではなく事業成長への“投資”と考えるべき
従業員にとって安全かつ働きやすい環境を整備することで、コスト削減以上の事業成長・事業利益をもたらす
一方、オフィスを短期的なコスト(賃料)と捉えるだけではなく、従業員にとって安全かつ働きやすい環境を整備することで、コスト削減以上の事業成長・事業利益をもたらすという考え方も非常に重要だ。
ハドソンは「オフィスに投じたコストから付加価値を引き出し続けるためには、従業員の意見に耳を傾け、時間をかけて少しずつ調整を加えていくべきだ。人材をオフィス戦略の中心に置くことでのみ、勝利(事業成長)を収めることができる」と強調している。
オフィス内装コストのご相談はJLL へ
JLLではオフィス移転・リニューアルに伴う内装工事コストの適正化に向けて、テナントがオーナーと交渉する際のサポートをはじめ、原状回復工事の査定サービスなども提供しています。
また、2024年3月には、オフィスのデザイン・設計部門「デザインソリューションズ」を設立。3Dの空間イメージやウォークスルー動画などを活用して設計の初期段階からワークプレイスの具体的な空間イメージを共有し、またAIを駆使し迅速に2D、3Dテストフィットプランを提供。設計期間の短縮とコスト抑制に貢献していますので、同サービスにご興味のある方は下記をご覧ください。
JLLはこれまで手掛けてきた多種多様な開発プロジェクトをデータベース化しており、工事見積りに無駄がないか精査し、交渉を支援する体制を有しています。オフィスの移転先選定、設計から建築まで一気通貫でサービスを提供することでクライアントのニーズを満たした効率的なコンサルティングを行い、内装工事コストの適正化を支援します。
オフィス移転・リニューアル時の内装コストなどについてご相談がありましたら下記からお問合せください。