メインコンテンツにスキップ

セットアップオフィスとは?なぜ注目されるのか

ハイブリッドワークが定着しつつあり、オフィスの広さより質を重視する企業が増加している
 

現在セットアップオフィスに注目が集まっている背景や、オフィス市場の動きはどのようなものだろうか。

セットアップオフィスの定義


セットアップオフィスとは、貸主側が受付や会議室の造作などのオフィス内の間取り工事を行い、内装付きオフィスとして貸し出す形態をいう。

通常の賃貸オフィスとは異なり、レイアウトや内装等に係る工事費用と時間が削減できることから、短期間でのオフィス移転や、担当者の業務負担の軽減・効率化を求める企業からの需要が高まっている。

拡大するセットアップオフィス市場


コロナ禍を経て企業のオフィス戦略は大きく転換し、より省コストでフレキシブルなオフィス形態へのニーズが高まってきた。

その潮流の中で注目を浴びる「セットアップオフィス」市場に数多くのデベロッパーが参入。首都圏や大都市圏を中心に、中小ビルのみならず大規模ビルの区分フロアをセットアップオフィス化する事例も見られ、さらに現在は機関投資家や中小の不動産会社なども物件の差別化戦略として既存物件をセットアップオフィスへリノベーションするなど、その市場は拡大中だ。

「質」が重要視されるオフィス選び


かつてのオフィスは全従業員が出社することを前提に、単一フロアに執務機能を集約させるために広大なオフィススペースが求められていたが、現在ではリモートワークとオフィス出社を組み合わせたハイブリッドワークが定着しつつあり、オフィスの広さより質を重視する企業が増加している。

企業が人材確保や長期雇用に有効なオフィスを選定する3つの基準は以下のとおりだ。

1. 採用に有利な駅近などの立地条件

2. 企業のブランディングに寄与するビルグレード

3. 社員のエンゲージメントを高められる、築浅で充実した屋内設備やしつらえ

働き方やオフィスのありかたが多様化し選択肢が増えることで、自社にとって最適な移転先を見極める難易度は上がっており、移転先の情報収集・分析がこれまで以上に不可欠となる。

次のオフィスの選択肢を考える

セットアップオフィスを利用するメリット

移転時の負担が少ないセットアップオフィス
レイアウトや内装デザイン・内装工事が不要または最小限で済み、移転に費やす時間と担当部署の負担が減る

セットアップオフィスをテナント側として利用するときのメリットについても整理しておこう。

通常のオフィス移転で必要となるレイアウトや内装デザイン・内装工事が不要または最小限で済み、移転に費やす時間と担当部署の負担が減るのはセットアップオフィスの明らかなメリットである。

セットアップオフィスではグレードの高い内装やインテリアをしつらえていることも多く、そのようなオフィスを選択すれば従業員のモチベーション向上にも寄与するだろう。

セットアップオフィスのデメリット

一方でセットアップオフィスのデメリットとしては、既にレイアウトが決まっているため自由度が少ないことや、もし変更したい場合はテナント負担で工事を行い、原状回復の費用もかかるという点だ。

また、内装工事や什器備品の費用は賃料に転嫁されているため、周辺相場よりも賃料設定が高いのもセットアップオフィスのデメリットといえる。

オーナー・投資家にとってのメリットとデメリット

必要な設備があらかじめ用意されたセットアップオフィスは、急ぎの移転やオフィス整備の手間を削減したい企業にとって通常のオフィスよりも付加価値が高いため、一般的なオフィスよりも高い賃料を設定できることが多い。

また、同様の立地・ビルグレードであっても、セットアップオフィスは周囲のオフィスと比べて差別化を図れるのもメリットだ。

一方で、貸主・オーナー側のデメリットとしては、セットアップオフィスの設備投資は貸主が行うため、初期費用が多くかかることが挙げられる。また、一般的なオフィスと比較して原状回復の範囲が分かりづらいため退去の際にトラブルになるリスクも考えられる。

セットアップオフィスの優位性をうまく訴求できないと、単に賃料の高い物件と捉えられて競争力が失われる可能性があるのもデメリットといえるだろう。

ビルオーナーや投資対象としてセットアップオフィスの運営を検討している場合、豊富な実績を持った専門家のサポートを受けるのも失敗がなく効率的な方法だ。

セットアップオフィスへの投資・運営についてJLLに相談する

セットアップオフィスにおける原状回復義務

近年はオフィスを取り巻く環境が大きく変化し、移転や再構築のスパンも短くなりがちだ。セットアップオフィスに入居後、数年でふたたび移転することも当然考えられる。その際の原状回復の範囲や費用が気になる担当者もいるだろう。

セットアップオフィスにも一般のオフィス同様に原状回復義務があるが、通常は全額テナントが負担する内装造作を貸主が行っているため、原状回復の範囲は一般オフィスと比較して少ない傾向である。

借主が独自に行ったレイアウト変更や造作に関しては借主負担になるが、それ以外に関しては時間・費用ともに抑えられるケースが多いだろう。

セットアップオフィスの比較対象となるオフィスの選択肢

オフィスの形態を検討する人々

オフィス移転や開設にかかる負担を減らしてコア業務に集中したい・短期間で移転を完了させたいなど、セットアップオフィスを選択する理由は複数挙げられるが、時と場合によっては、セットアップオフィス以外のオフィス形態が最適なケースもあり得る。

従来の一般的な賃貸オフィス以外にどのようなオフィス形態があるのか、それぞれの特徴やメリット・デメリット、セットアップオフィスとの違いなどについても知っておこう。

居抜きオフィス


居抜きオフィスとは、前の入居者(テナント)が使用していた内装や設備、オフィス家具などをそのままの状態で引き継いで利用するオフィス形態である。

セットアップオフィスは貸主(ビルオーナー)が新しい内装や設備を用意するのに対し、居抜きオフィスでは前入居者のものを引き継ぐ点が大きな違いだ。

入居時の内装工事費用や手間を大幅に削減でき、迅速に移転を完了できるのがメリットだが、レイアウトの自由度が低いことや設備の老朽化、退去時に前入居者から引き継いだ部分も含めて原状回復義務を負う可能性がある点には注意が必要である。

シェアオフィス


シェアオフィスは、1つのオフィス空間を複数の企業や個人で共有して利用する形態を指し、フリーアドレスのワークスペースにデスクや共有の会議室、ラウンジなどが設けられているのが一般的だ。

自社専用の占有スペースを持つセットアップオフィスとは異なり、シェアオフィスは基本的にオープンスペースを他者と共同で利用する。そのため、他の利用者とのコミュニケーションが生まれやすく、新たなビジネスチャンスにつながる可能性がある。セットアップオフィスが賃貸借契約を結ぶのに対し、シェアオフィスはサービス利用契約であることが多い点も違いの一つだ。    

サービスオフィス


業務に必要な家具や通信環境に加え、受付や秘書代行・電話対応といった人的サービスが充実しているのがサービスオフィスである。来客対応などを専門スタッフに任せられるため、従業員は自身のコア業務に集中できるという利点がある。

多くは都心部や駅前などの好立地にあり、企業の信頼性向上にも寄与する。セットアップオフィスも家具などが設置済みだが、サービスオフィスはさらに手厚いビジネスサポートを受けられる点が大きな違いである。ただし、サービスが充実している分、他のオフィス形態に比べて賃料等のコストが割高になる傾向がある。

レンタルオフィス


レンタルオフィスは、デスクや椅子・インターネット環境など、業務に必要な設備があらかじめ整った個室スペースをレンタルする形態のオフィスで、月単位など短期間の利用契約も可能だ。

セットアップオフィスとの違いは、受付や会議室・ラウンジなどを自社で占有するのではなく、他の入居者と共有する点にある。そのため、1名から10名程度の小規模な利用に適しており、スタートアップ企業や企業のサテライトオフィスとしての需要が高いのが特徴である。初期費用を抑え、迅速に業務を開始できる点はセットアップオフィスと共通している。

インキュベーションオフィス


「孵化」を意味するインキュベーションの名の通り、起業家やスタートアップ・ベンチャー企業の成長を支援することを目的としたオフィスである。賃料が比較的安価に設定されていることに加え、常駐するインキュベーションマネージャーから経営ノウハウの提供や資金調達の相談、人材紹介といった専門的なサポートを受けられるのが最大の特徴だ。

セットアップオフィスが主に物理的なオフィス環境の提供であるのに対し、インキュベーションオフィスは事業成長を支援するソフト面のサービスが充実している点が異なる。ただし、入居には事業計画などの審査があり、どの企業でも利用できるわけではない。

スケルトンオフィス


スケルトンオフィスは、内装が一切施されていない、建物の構造体(骨組み)がむき出しの状態のオフィス物件を指す。壁紙や床、天井などが何もないため、入居者は自社のブランドイメージや働き方に合わせて、ゼロから自由にオフィス空間をデザインできるのが最大のメリットである。

オフィス家具や内装がすべて整った状態で提供されるセットアップオフィスとは真逆の存在といえる。デザインの自由度は非常に高い一方で、内装工事に多大な時間とコストがかかる点がデメリットだ。

なお、「フレキシブルオフィス」という呼称も知られているが、これは特定のオフィス形態ではなく、上記のシェアオフィスやレンタルオフィスなど事業スケールや従業員の増減・多様な働き方などに対応できるオフィス全般の総称である。

セットアップオフィスに向いている企業

セットアップオフィスは成長期の企業にも最適

メリット・デメリットともにあるセットアップオフィスだが、自社に向いているのかどうか、判断に迷うこともあるのではないだろうか。

セットアップオフィスが向いているのは以下のような企業と考えられる。

  • オフィス移転の初期コストを抑えたい企業
  • スタートアップやベンチャーなどのスピード感を重視する企業
  • 短期間で再度移転が決まっている/可能性が高い企業


移転にかかる初期コストや時間の節約、内装造作や原状回復工事における身軽さを求める企業ほど、セットアップオフィスに向いているといえる。

セットアップオフィス選びの成功ポイント

移転先としてセットアップオフィスを選択しようと考えている企業が気をつけておきたいポイントは次の5つといえる。

1. 機能性…オープンスペースエリアと個室エリアの配置、執務室、ミーティングルーム、休憩エリアなどは自社にとって使いやすいか

2. レイアウト…従業員数や事業内容などに見合った広さとレイアウトか、動線は業務にふさわしいか

3. セキュリティ…必要な時にプライバシーの確保ができるか、隣接するオフィスとの遮音、出入り口の状態などは安全か

4. 立地条件…企業のブランドイメージや従業員の反応に鑑みて、自社の戦略に沿った立地かどうか

5. 他のオフィス形態との比較…セットアップオフィスと、一般的な賃貸オフィス・シェアオフィス・居抜きオフィスではどれがもっとも自社にふさわしいか

自社のオフィス戦略をもとに各項目を検討し多角的な視点で選定したい。

オフィス移転を成功させる

セットアップオフィスの成功事例

【MODE】拡張移転にセットアップオフィスを選択したスタートアップ企業


IoTとAIを組み合わせることで作業現場の働き方に革新を起こすシリコンバレー発スタートアップのMODEは、2024年8月に行った3回目の拡張移転先にセットアップオフィスを選んだ。

一般的な賃貸オフィスでは、内装工事で一時的に多額のキャッシュアウトを伴い大きな財務的負担となるが、セットアップオフィスは月々の賃料としてコストを平準化できるため、事業運営上のメリットが大きいと判断したという。

また、スタートアップ企業にとって事業の成長スピードは何よりも重要であるため、家具が備わったオフィスが業務開始までのリードタイムを短縮できる点も評価していた。

今後の事業拡大に伴い、短期間でオフィスを拡張していくことも視野に入れている。迅速な移転を可能にし、柔軟なオフィス戦略を実現できるセットアップオフィスは、同社の成長戦略に適した選択肢であったといえる。

東京・大阪のセットアップオフィス物件一覧

日本経済の中心地である東京。渋谷・新宿・新橋・銀座などの主要エリアや、再開発が進む横浜・神奈川などの関東圏のセットアップオフィスや、大阪をはじめとする各都市のセットアップオフィスを探すなら以下のページから。詳細ページではアクセスや内装デザインなどの情報も確認できる。

主要エリアのセットアップオフィスを比較検討する

セットアップオフィスへの移転・新規開設のご相談はJLLへ

JLLは、CRE戦略に関するグローバルな知見と、国内外の豊富な支援実績を有する。データに基づいた客観的な分析により、クライアントの経営課題に寄り添い、コスト削減から企業価値向上、ESG経営の実現まで、最適なCRE戦略の策定と実行をワンストップでサポート。自社の不動産ポートフォリオを最大限に活用し、持続的な成長を目指すためにJLLにご相談ください。

セットアップオフィス探しやオフィス戦略についてJLLに相談する