850坪から85坪、オフィス面積9割減
コロナ禍を受けて、働き方やオフィスの在り方を再考する企業が増えている。在宅などのリモートワークに対応するシステム整備も進み、これまでのように全社員の出社ありきのオフィスの存在感は相対的に低下しつつある。リモートワーク中心の働き方に切り替え、オフィスを縮小するケースも少なくない。
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クラウドコンピューティングサービス事業などを展開するIT企業、さくらインターネット株式会社もそんな一社だ。2021年10月、大阪のAグレードオフィス「グランフロント大阪」にて賃借していた850坪のオフィスを解約し、「東京建物梅田ビル」11階のワンフロア85坪へと移転した。
同社では2016年から「さぶりこ(Sakura Business and Life Co-Creation)」と呼ぶ福利厚生制度を推進。その一環として条件付きでリモートワークを承認する「どこでもワーク」を採用していたが、コロナ禍を受けて、リモートワーク主体の働く環境づくりを進める。業務上出社が必要な場合や家庭・住宅事情を鑑みてオフィス出社を一部で認めつつも、在宅勤務や外部貸しコワーキングスペースの利用を促進。その結果、コロナ後の出社率は10%程度で推移することになり、オフィスの存在意義を再考することになった。
縮小移転先のオフィスは「仮住まい」
大阪を代表するフラッグシップビルからの大幅な縮小移転劇は「面積9割減」という話題性から多くのメディアが取り上げる結果となったが、オフィス移転の指揮を取ったさくらインターネット 取締役 前田 章博氏は「今回の移転はあくまでも『仮住まい』」と説明する。オフィス縮小によってオフィス什器の数などを一気に減らし、身軽な状態で新たなオフィス戦略を仕掛け直すタイミングを計るための「雌伏の時」に過ぎないというのだ。
「押印処理など、なるべくデジタル対応しているが、どうしても出社が伴う業務があり、必要最低限の執務機能、面積を導き出した結果として偶然10分の1へ縮小することになった」(前田氏)
以前のオフィスは創業20周年記念事業の一環として最先端の設備を備え、全席フリーアドレスを採用。働き方改革を推進する上で申し分のない環境だった。さらにキーポイントとなるのが「お客様や従業員のコミュニケーションを育むタッチポイント」(前田氏)であることを目的とした。オフィスの半分程度のスペースをイベント・コラボレーションスペースとし、ユーザーとの懇親会や子供向けのプログラミング教室、スタートアップのピッチイベントなど、年間平均で200回超のイベントを実施。前田氏は「飲食を伴うイベントも多く、ケータリングのしやすさやオフィス内の水回りに課題があった」と振り返る。
グランフロント大阪に構えていた旧オフィス
「以前のオフィスはイベント開催に伴う事前申請の煩雑さや、執務スペース内に水回り機能がないといった様々な課題を内包しながら4年ほど運営してきた。賃貸借契約の満期が近づく中、これらの課題を解消しつつ、当社の理想を実現できるオフィスを目指そうと考えた。条件に見合った移転先が見つかればよかったが、コロナ禍という制約があり、かつ退去期限も迫っていたため『仮住まい』することにした」(前田氏)
面積の半分をオープンスペースとした新オフィス
「仮住まい」のため居抜き物件を選択