オフィスにソロワークスペースを導入する企業が増加
オンライン営業や会議が定着した現在、もはやオフィスにあって当然の設備となった個室ブース。例えば、IT機器に関する多種多様なソリューションを提供しているエイコーでは、コミュニケーション活性化を主体としたフリーアドレス型オフィス内にソロワークに対応するブースを導入している他、リーガルテックの急成長企業であるLegalOn Technologiesのオフィスでは眺望抜群の窓際に予約なしで利用できる半個室型のブースを設置。また、JLLのオフィスでもオンラインミーティングなどに対応する個人ブースを多数設置している。
ソロワークとは?
そもそも「ソロワーク」とは読んで字の如く「一人で仕事をする」働き方であり、もともとはコロナ禍で定着した在宅勤務に由来するワークスタイルといえるだろう。
従前のオフィス勤務では事業部やプロジェクト等に携わるメンバー同士が協働して業務を進めることが多かったが、コロナ禍を受けて多くの企業が在宅勤務に切り替えた際、1人で仕事をしても業務効率が向上するケースがみられたことで、ソロワークの有用性が認められるようになった。そして、オンラインミーティング・営業が定着し、オフィス出社時と遜色なく業務を進められるようになった。こうした背景から、アフターコロナ時代の働き方は業務内容や気分によって働く環境を柔軟に選択できるハイブリッドワークやABW(Activity Based Working)に対応したオフィスが台頭。その中の1つの選択肢としてソロワークが可能な執務環境に注目が集まるようになった。
オフィスにもソロワークスペースが求められている
「1人で仕事ができる環境」ならば在宅勤務で事足りそうなものだが、在宅勤務が業務を進める最適な環境といえないことに多くの企業が気づくようになった。
日本の狭小な住宅環境では執務専用の個室を確保するのが難しく、家族と同居したままリビングなどで仕事をせざるを得ない残念なケースもありえる。
そして、オンライン業務を円滑に進めることができない貧弱なITインフラなど、様々な課題がある。上司や同僚とのコミュニケーション低下、さらに1人で仕事を抱え込むことによる心理的負担増も在宅勤務の大きな欠点に挙げられる。
JLLが日本を含むグローバルで活躍するオフィスワーカー3,300人超に対して行ったアンケート調査(2022年)によると、コロナ禍を受けて在宅勤務を実施した日本の回答者は64%にのぼり、アジア太平洋地域全体の68%とほぼ同等であったが、「在宅勤務のほうがより生産性が高い働き方ができた」と回答した日本の回答者はわずか21%に留まり、アジア太平洋地域の46%と大きな隔たりがあった。
さらに、日本の回答者の「一週間(週5日勤務)の理想の働き方」を調査したところ、オフィス勤務が週3.6日と最も高く、在宅勤務が週1日、オフィス・自宅以外での勤務が週0.4日となり、「オフィスでフルタイム勤務したい」との回答が52%にのぼるなど、世界的にみても日本のオフィスワーカーは在宅勤務よりもオフィス勤務を好むという独自の傾向が見受けられる。
このように、オフィスと在宅勤務を組み合わせたハイブリッドワークを導入する企業が増えているのは事実だろう。ソロワークは在宅勤務で対応しつつ、コミュニケーションやイノベーションの創発を前提にした協業型の業務はオフィスで行うなど、働く場の役割を明確化し、コミュニケーション特化型のオフィス環境に再整備する企業も存在する。しかし、前述した通り、在宅勤務に大きな課題の残る日本の住宅事情とオフィス回帰の本格化によってオフィスにおけるソロワークスペースのニーズが高まるようになった。
オフィス内にソロワークスペースを導入するメリット・デメリット
では、オフィス内にソロワークスペースを導入入時の具体的なメリット・デメリットとはどのようなものがあるのだろうか。
メリット
●メリット1 視線や雑音を気にせず作業ができる
周りの視線や騒音を気にせずに集中して作業を遂行できるため、業務効率や生産性が上がる可能性が高い。特に個室型ブースがその役割を果たす。
●メリット2:オンラインミーティング・営業の場に最適
周囲の雑音によって会話が聞き取りづらく、オンラインミーティング・営業の進行にも影響し、相手に悪印象を与えかねない。また、オフィスの自席で実施する場合は周囲に配慮が必要だが、ソロワークスペースではそのような必要がない。
●メリット3:作業が中断しない
各席に電話が備え付けられている固定各席型のオフィスでは自各席で仕事をすると電話を受けたり、上司や同僚から声をかけられることも多く、作業を中断せざるを得ない場面がある。ソロワークスペースを設けることで、自分の作業以外の業務で進行が中断するのを防ぐことができる。
デメリット
デメリット1:場所や行動の把握ができない
オープンスペースから隔離された個室やブースなどをソロワークスペースとするケースが多く、誰がどこで働いているかが把握できない。業務連絡や作業の引き継ぎなどを行う際に従業員同士で居場所を把握しておく工夫が必要となる。
デメリット2:環境を整えるのにコストがかかる
オフィス内にソロワークスペースを設置する際には専用の什器やパーティションなどを追設する必要があり、費コストがかかる。
デメリット3:生産性が落ちてしまうことがある
「他者の目に触れにくい」という特性を良いことに、従業員の中にはONとOFFの要領がつかめず、間違った認識をしてしまう人も出てくるかもしれない。そうなると導入したことにより逆に生産性が落ちてしまうことも考えられる。従業員に正しいスペースの使い方や、仕事のこなし方を指導していくべきだろう。
ソロワークスペースの種類
オフィス機能の一部としてソロワークスペースを求めるワーカーの声が高まっており、生産性向上などの効果も期待されている。在宅勤務とは異なるソロワークスペースには大きく3種類が存在する。
1. 個室型(オフィス内)
2. 半個室型(オフィス内)
3.サテライトオフィス
個室型(オフィス内)
昨今のオフィスは従業員同士のコミュニケーションを促すよう什器の高さを低めに調整して周囲を見渡しやすくし、フリーアドレスなどの開放的なレイアウトとなっていることが多いが、オープンな執務空間の一部を壁やパーティションで間仕切りし、周囲の会話や雑音などをシャットアウトする個室タイプは最も集中しやすいソロワークスペースといえる。コロナ以降、フォンブース型のソロワークスペースも人気を博しており、視線や騒音はほぼ完全にシャットアウトできる。
半個室型(オフィス内)
個室型のように独立しておらず、間仕切りやパーティションを一部設置し、周囲の視線を遮断しながら周囲の状況把握や外部から話しかけることも容易に行えるソロワークスペースだ。デスクと一体化した什器タイプが多く、狭い場所に設置でき、執務空間全体との調和もとりやすい。
サテライトオフィス
東急不動産が運営する「NewWork」など、外部貸しのサテライトオフィスの整備が進み、自宅やオフィスとは異なるソロワークスペースとしてコロナ禍以降、存在感が際立ってきた。半個室型が主流ながら東京電力ホールディングスの「Solotime」や野村不動産の「H1T」など、情報漏洩のリスクを軽減した個室ブースを備えた施設も増えている。
オフィスには集中できるソロワークスペースが不可欠
対面型のリアルオフィスではコロナ禍以降「コミュニケーション活性化によるイノベーションの創発」といった役割を求める向きが強まっているが、某メーカーの調査では、オフィスの平均的な集中力は43%に過ぎず、新幹線(70%)や喫茶店(83%)といった不特定多数が集う場所よりもオフィスは集中できない環境とされる。そのため、オフィス内に集中できるソロワークスペースを設けることは生産性向上に不可欠といえるだろう。
オフィスに関するご相談はJLLへ
オフィス回帰が本格化し、人材採用の強化などを目的に働き方やオフィス環境の改善に取り組む企業が増えています。JLLではオフィス移転やリニューアルなどのワークプレイス戦略について、オフィスコンセプトの作成、立地調査、物件紹介、プロジェクトマネジメント、移転後のオフィス運用まで一気通貫で支援しています。ソロワークスペースを含めたワークプレイス戦略の見直しを検討されている方はお気軽にご相談ください。