米国のオフィス出社状況はどのように変化したか?
コロナ禍を契機にリモートワークが急速に広がった米国では、コロナ収束を受けて出社回帰を求める経営層とリモートワークを継続したい社員との間で大きな軋轢が生じている。その結果、米国の出社回帰の状況は世界的にみても大きく遅れを取っているのが現状だ。
一方、JLLが企業のCRE責任者を対象にした調査レポート「2024年版Future of Work (働き方の未来)グローバル調査」によると、米国を含むアメリカ大陸地域では47%の企業が社員に毎日の出社を要請しており、2022年の34%(※グローバルの調査結果)と比較して出社回帰を望む企業が増加していることが分かる。世界的にも「2030年までにさらに出社頻度が増える」と考える回答者が43%にのぼり、米国でも今後出社回帰の流れが強まることが予想される。
オフィス回帰に向けて内装デザインが大きく変化
企業はリモートワークを超えるワークプレイス・エクスペリエンス(優れた就労体験)を従業員に提供しなければならないというプレッシャーにさらされている
世界的にみても、オフィスの使われ方は大きく変化している。企業は長期にわたって構築してきた従来型の働き方や企業文化を見直し、新たな形を模索しなければならなくなった。リモートワークによって社員が得たワークライフバランスの恩恵を損なうことなく、企業はリモートワークを超えるワークプレイス・エクスペリエンス(優れた就労体験)を社員に提供しなければならないというプレッシャーにさらされているともいえるだろう。
一部の民間調査では、コロナ前のようにオフィス出社を義務化した場合、転職を検討する社員の存在が明らかになる等、優秀な人材を確保するためには、もはやリモートワークを全面廃止するのは難しい状況ともいえる。
とはいえ、リモートワークだけでは社内コミュニケーションが停滞し、イノベーション創発等の付加価値が生まれにくくなる。そのため、リモートワークとオフィスを併用する「ハイブリッドワーク」を導入する企業が増えているのが現状であり、欧米等のグローバル企業ではオフィスの内装デザインを大きく変えようとしている。
JLLフランス ワークダイナミクス ディレクター レミ・カルヴェラックは「欧州企業のオフィスデザインはここ数十年で最大の変化を見せつつある」とし、「企業はリモートワークとオフィス勤務の最適なバランス感覚を見出そうと、オフィスデザインを変革している。最大の変化はオフィススペースの比率だ」と指摘している。
多くの企業がコラボレーションスペースを拡大し、固定席の割合を逆転したという。フリーアドレスやABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)型オフィスに切り替える企業が目立つ。
また、働くための「場所貸し」に終始するのではなく、企業の施設運営担当者はちょっとした社内イベントを業務時間に組み込む方法も模索しているという。多くの従業員は「自分が企業に所属している」と実感し、帰属意識が醸成されることで充足感・安心感を得ているからだ。
カルヴェラックによると「オフィス戦略に注力する一部の欧州企業では、従来型の受付エリアに代わって、バリスタが飲料を提供するバーカウンターを設けるなど、ホスピタリティを提供することを重視している」という。