ABWとは?メリット・デメリットや導入方法、成功事例からみるオフィス設計のポイント
ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)とは?
働き方の多様性をサポートするワークスタイルとして普及しているのが「ABW(Activity Based Working)」だ。
ABWの定義
ABWは「社内外問わず、業務内容などに最適な場所を自由に選択できる働き方」と定義されており、具体的には、働く時間や場所を従業員が自由に選択できるため、その日の気分や体調に合わせて適切な場所、タイミングで仕事をすることを認めているワークスタイルである。
就業場所はオフィスの他、自宅やサテライトオフィス、カフェやレンタルスペースなど様々。従業員に裁量を与える ことがABW最大の特長といえるだろう。
ABWにおける主な仕事場
ABWでは基本的にどこを執務スペースにしても構わない。通常の就業スタイルのようにオフィスの執務スペースで作業をするもよし、リラックスしながら自宅で作業をしても問題ない。本社オフィス以外にサテライトオフィスが用意されていれば、オフィス機能が十分な環境で働くこともできる。
その他、行きつけのカフェや飲食店、旅行先で仕事をする「ワーケーション」も可能だ。また、最近では駅ナカやショッピングモール内に個室型ワークブースが登場している。
ABWにおける主な業務時間とフレックス制との違い
ABWでは勤務時間が自由という点が挙げられる。通常の勤務体系では就業時間が固定化されるケースが多いが、ABWの働き方は勤務時間を自由に決められ、午前中はプライベートに充て、午後から夜にかけて執務時間とすることも可能だ。勤務時間を柔軟に決められるという点ではすでに多くの企業が導入しているフレックスタイム制と似ているが、ABWには必ず勤務しなければならない「コアタイム」の概念がない。
ABWが注目される背景
ABWが注目され始めたきっかけとしては、政府主導の働き方改革やICT環境の急速な進化 に加え、コロナ禍によるリモートワークの定着 が挙げられる。
オフィスは単なる作業場から、コミュニケーションやイノベーション創出の場へと役割を変えつつある。生産性向上やコスト最適化だけでなく、優秀な人材の確保やエンゲージメント向上を実現する経営戦略としてもABWへの注目が高まっている。
ABWとフリーアドレスの違い
オフィス内に多種多様な執務環境を整備する、いわゆる「ABW型オフィス」は過去にも存在していたが、在宅勤務など社外の執務環境には目を向けていなかった。しかし、コロナ禍を受けて定着したオフィスとリモートワークを組み合わせるハイブリッドワークは、まさにABWの概念と一致する。
ABWと並んで取り上げられることが多いのが「フリーアドレス」である。両者とも従業員の働く場所の選択肢を増やす、柔軟性の高い働き方であるという点で似ているが、違いがある。
フリーアドレスは、事前に指定された固定席で働くのではなく、空いている適当な席を自由に活用することができるオフィス運用形態を指す。一方でABWは、社内に限らず、社外でも自由に働く場所を選択することができる。フリーアドレスはあくまで社内での勤務 を前提としているが、ABWは必ずしも会社に出社する必要がない 働き方だ。
フリーアドレスと似た言葉に、ABWやフリーアドレスよりも手軽に導入できる「グループアドレス」がある。こちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみて欲しい。
ABWを導入する6つのメリット
ABWはワークライフバランスを取りやすく、より一層前向きな気持ちで仕事に取り組むことができる。
実際にABWを導入した場合、主に以下の6つのメリットが考えられる。
1.作業効率・生産効率の向上
2. 従業員の意欲向上
3. 備品などの費用削減
4. 人材採用時の優位性
5. アイデア創出に寄与
6. BCPに貢献
作業効率・生産効率の向上
ABWは勤務場所が固定されないため、従業員が気分転換やリラックスして仕事に向き合うことができる。その結果、オフィスの中だけで仕事をするよりストレスがたまりにくく、作業効率や生産効率の向上に寄与すると考えられている。
従業員の意欲向上
自分の好きな場所、時間に仕事をできるというだけで、プライベートが充実するため自然とメリハリのついた生活を送ることができるようになる。従来の働き方では就業時間が固定化していたが、ABWはワークライフバランスが取りやすく、より一層前向きな気持ちで仕事に取り組むことができる。
コスト削減
オフィス勤務を前提にした従前の働き方ではオフィスにあらゆる機能を集約し、さらに従業員全員分の座席を用意する必要があった。しかし、ABWではフリーアドレス席の導入などにより、オフィス面積を最適化することができ、賃料コストの削減につながる。
人材採用時の優位性
従業員に働き方の裁量が与えられるABWでは、働きやすい企業として人材採用時の企業イメージの向上に寄与する可能性が高く、従業員が企業に対して帰属意識を高め、ひいては業務に対するモチベーション向上効果も考えられる。また、働く場所を問わないABWでは、育児や介護で時間的制約の大きい人材や地方に住む人材の採用にも適している。
アイデア創出に寄与
環境を変えて仕事をすることで新たな刺激を受けることができる。固定席方のオフィスでは隣の席など、会話をする同僚も固定化されがちになるため、オフィス内にも環境が異なる多種多様な執務スペースを設けることで、より多くの同僚と接する機会が生まれ、偶発的なコミュニケーションが事業アイデアやイノベーション創発の機会を増やすことにつながる。
BCPに貢献
ABWでは日頃からオフィス以外の場所で働く環境やICTツールが整備されているため、災害やパンデミックなどの有事の際にも、自宅やサテライトオフィスへスムーズに切り替えて業務を継続できる。特定の拠点への依存度を下げることで被災リスクを分散したり事業停止期間を最小限に抑えたりでき、経営上のリスクマネジメントとしても有効に機能する。
ABW導入時に予想されるデメリット・課題と対策
画期的な働き方に感じられるABWだが、デメリットも存在する。導入時の主なデメリットは以下の6点が考えられる。
1. 勤怠管理が難しい
2. 準備とシステム円滑化に時間がかかる
3. 社内コミュニケーションの低下
4. 従業員のモチベーションに差が生じる可能性
5. セキュリティリスクの上昇
6. 導入前と変化がない
勤怠管理が難しい
誰が、どこで、いつ働いているのか、ABWにおいて部下の労務管理が最大の課題といえるだろう。従業員全員がオフィスに出勤する従前の働き方は勤怠管理がしやすいが、それぞれが自由な場所・時間で勤務をしているABWでは勤怠状況を把握するのが難しい。
準備とシステム円滑化に時間がかかる
ABWを導入するとなれば、従業員同士の共有事項やルールの徹底、ワークプレイス環境の整備など、様々な準備が必要になる。その結果、円滑に稼働するまで相応の時間がかかると予想される。
社内コミュニケーションの低下
働く場所や時間が分散することで、顔を合わせた会話や雑談の機会が物理的に減少する。「誰がどこにいるか分からない」状況が生まれ、気軽な相談や情報共有が滞りやすくなる。結果としてチームの一体感や組織への帰属意識が希薄になり、孤立感を深める従業員が出てくる懸念がある。
従業員のモチベーションに差が生じる可能性
従業員に一定の裁量を与えるABWは業務効率化やアイデア創出といったメリットもある半面、プライベートを重視しすぎる従業員が現れる可能性もある。また、すべての従業員がオフィスに出社する従前の働き方は、業務に行き詰った際、上司や同僚に気軽に相談することができるが、ABWは自由に働ける半面、孤立化する可能性がある。
セキュリティリスクの上昇
オフィス外へのPCや資料の持ち出し機会が増えるため、紛失や盗難、カフェ等での画面の覗き見等による情報漏洩リスクが高まる。また、公衆Wi-Fi利用などによる不正アクセスやウイルス感染の危険性もあり、ハード・ソフト両面でのセキュリティ対策強化と、従業員一人ひとりのリテラシー向上が不可欠となる。
導入前と変化がない
ABWを導入するだけでは、社内環境や従業員の仕事に対するモチベーションが劇的に変化するとは断言できない。例えば、ABW型のオフィスに変更しても同じ座席を使い続け、最終的に固定席化するケースもありえる。新しい働き方であるABWの活用方法などが従業員に浸透するまでには時間がかかる。
このため、JLLではABWへ移行する前段階から新しい働き方の意義や本質を従業員に浸透させる「チェンジマネジメント」を実施している。
ABWが向いている企業や部署の特徴
ABWはさまざまな企業や職種にメリットがあるワークスタイルだが、その中でも特にABWが向いている企業・業種・部署の特徴をいくつか紹介する。
ABWは外出が多い営業職や、自宅でも効率的に業務が可能なIT関連、企画、マーケティングなどの職種に適している。
また、オフィス内でも複数部署にわたるプロジェクトが多い職種、高い創造性が求められる職種では、ABW型の働き方を導入することで、業務効率化や社員同士の交流促進、部署を超えた連携の向上が期待できるだろう。
新しい制度を柔軟に取り入れる社風がある
ABWは日本では比較的新しいワークスタイルのため、取り入れる際には、経営層から各部署のリーダーや管理職・一般社員まで全員が柔軟に対応できるような意識改革が必要である。日頃から、前例にとらわれずチャレンジしてみる文化が根付いている企業ほどABWがスムーズに導入できるだろう。
ITツールを積極的に活用できる
ABWでは多くの従業員がオフィス外で働く機会が増えるため、スムーズに情報を共有し、コミュニケーションを取るためのウェブ会議システムやプロジェクト管理ツール、ファイル共有システム、モバイルデバイスの活用などが不可欠だ。これらのITツールを積極的に促進し、必要な研修やフォロー体制を整備できる企業はABWの導入に成功しやすいといえる。
コミュニケーションが良好である
ABWを導入しても、上司と部下の関係が良好でなければ、指示の伝達や理解不足などによって生産性が低下するおそれがある。直接顔を合わせずテキストやオンラインのコミュニケーションであっても、信頼関係が構築されており、こまめにコミュニケーションが取れる環境が整っていれば、ABW導入による働き方の変化にもスムーズに対応できるだろう。
ABW導入を成功させるための秘訣
経営層が独断で改善するのではなく、従業員一人ひとりの意見もしっかりと聞き、向き合うことが大切
ABWを導入する目的・ゴールを考える
「なぜABWを導入するのか」を明確にし、ゴールや目指すべき姿に合わせて筋道を立てていく必要がある。例えば、従業員同士のコミュニケーション不足を解消したい、従業員の自立心を促したいなど、社内の状況に合わせた目標設定をするところから始めるべきだろう。
従業員全員でABW導入時の課題・デメリットに向き合う
ABWを導入した当初は、あらゆる課題や問題が発生するだろう。それらの問題を経営層が独断で改善するのではなく、従業員一人ひとりの意見もしっかりと聞き、向き合うことが大切だ。経営層からは見えない問題や改善策が、従業員から豊富に意見される可能性もある。一番大切なのは「経営層、従業員問わず社内一丸となって会社を作り上げていく」という意識だ。
働きやすい環境づくり
社内環境やレイアウトもABWに応じた形に変えていく必要がある。例えば、いつ従業員が執務スペースで作業を行ってもいいようにフリーアドレス形式にする、どの席にもネットワーク環境を整えておくなどが求められる。また、ハイブッドワークを円滑に進めるためにソーシャルネットワーク、CRMツール、プロジェクト管理ツール等のデジタルツールの導入も欠かせない。その他の社内環境に関しても従業員の意見を聞きながら最善の形を目指すのがいいだろう。
ゾーニングされた空間設計を行う
ABWを機能させるには、業務内容(アクティビティ)に応じた明確なゾーニングが不可欠だ。一人で没頭するための「集中エリア」、活発な議論を促す「コラボレーションエリア」、ウェブ会議や通話専用の「フォンブース」など、目的別に空間を区分けする必要がある。
音や視線を適切にコントロールし、ワーカーがその時々のタスクに最適な環境を迷わず選択できるように設計することで、生産性を最大化できる。
ABWを導入する手順
ABWを導入することが決定した場合、実際の準備や手続きをどのように進めていけば良いのだろうか。以下にステップで紹介する。
ステップ1:ABW導入の目的を定める
ABWは「手段」であり「目的」ではないことを念頭に「なんのためにABWを導入するのか」という目的を明確にしておこう。
社内コミュニケーションの向上や自律的な働き方の促進など目的は異なるものの、現状のオフィスや働き方における課題があり、その解決手段としてABWが有効であれば検討を進めるべきである。
一方、ABWありきで検討を進めてしまうと、導入後の効果測定が難しく、従業員もABW型の働き方を実践する動機が乏しいため形式的なものになってしまう危険性がある。
ステップ2:従業員の働き方やオフィスの状況を調査する
オフィスや働き方の状況調査を行う。オンラインアンケートフォームやサーベイツールを活用して従業員のニーズを吸い上げ、現状の働き方におけるボトルネックを特定する。単に不満を聞くだけでなく、データを分析して「なぜ生産性が上がらないのか」、「どこに無駄があるのか」といった社内の課題を明確化することが、後のレイアウト検討や制度設計の土台となる。
ステップ3:レイアウトを検討する
課題やニーズが把握できれば、いよいよABW型の働き方に対応するためにオフィス移転やレイアウト変更を検討する。1人用ブースやカフェスペース、ソファなど、仕事の内容や気分によって様々な場所を選べるオフィスが理想的だ。
ABWを経験したことがない担当者ばかりでは効果的なレイアウトを組むことは難しいかもしれない。また電源や動線の確保・セキュリティなど考慮しなければならない点が多数あるため、失敗しないためには専門家へ相談するのが安心だ。
ステップ4:社内制度の見直しと社内教育
従業員の自主性を重んじるABWにおいては、各自の成果が適切に反映されるような評価制度の整備が必要となってくる。また上司から部下の様子が見えにくい状況に合わせ、新たなマネジメントの手段を考えねばならない。
同時に、制度やツールを整備するだけでは定着しないため、社員への教育も不可欠となる。ABWの目的やITツールの使用方法、セキュリティ意識に関する研修やガイドライン周知を徹底し、新しい働き方への意識変革(チェンジマネジメント)を促そう。
その他にも、来客や電話対応などの面でも課題が想定されるため、社内ルールの整備やITツールの導入などの対策を検討しておこう。
ステップ5:ネットワーク環境やセキュリティの整備
現在デスクトップパソコンで業務を行っている場合、自席以外の場所でも仕事ができるようにノートパソコンやスマートフォンなどモバイル端末への切り替え作業を行う。
また、カフェや自宅などオフィス外からパソコンなどで社内ネットワークにアクセスする場合のシステム方式を決定し、端末の紛失・盗難等のリスク、ネットワーク接続に伴うセキュリティ対策を進める。
個人情報や経理情報などを扱う業務は社外で行わないなど明文化したルールを作り、研修を実施して全従業員への周知を徹底しよう。
ステップ6:サードプレイスの活用を検討する
オフィスと自宅以外の第三の働く場所、いわゆるサードプレイスの活用もABW導入の重要な要素だ。例えばコワーキングスペースやシェアオフィスを活用したサテライトオフィスが挙げられる。アクセス・作業環境の快適さ・セキュリティ面・費用などを考慮し、自社に最適なワークプレイス戦略を選定しよう。
ステップ7:定期的な見直しを行う
ABW導入後も、社会環境や働き方の変化に合わせて定期的に制度やオフィスのあり方を見直していく必要がある。現場からのフィードバックを収集し、現状に合わなくなったルールの改善や新しい技術の導入を検討することで、オフィスの快適性を持続的に高め、従業員の満足度やモチベーションを向上させることができるだろう。
ABWとこれからのオフィスの在り方
ABWは働く時間と場所を自由に設定できるため、従業員の仕事に対する負担とストレスを緩和するだけではなく、働く意欲をさらに高めることができる
ハイブリッドワークとABW型オフィス
これまでの働き方は基本的にすべての従業員がオフィスに出社し、始業時間から終業時間まで業務に就く働き方が典型的であった。働く場所のみならず、始業時間・休憩時間が固定化されると、従業員には心理的・肉体的負担が掛かり、業務効率が低下する可能性がある。例えば、通勤に焦点を当てるとわかりやすい。郊外から都市部のオフィスへ通うために通勤ラッシュ時のストレスに耐えなければならなかった。また悪天候の影響で電車が遅延していてもオフィスへ向かうために駅で長時間待機しなければならないなどの課題があった。
JLLによる調査レポート「ヒューマンパフォーマンスの解読」によると、調査対象である経営者層の46.8%が、これからの働き方を実現するにあたり、会社として働き方改革に合わせた既存オフィスの見直し(レイアウト・改修など)が必要と答え、43.6%がサテライトオフィス(自社・外部コワーキングスペース)の設置が必要と回答した。
働く時間と場所を自由に設定できるABWは、上記の課題をクリアしたハイブリッドワークなど、これからの時代に適した働き方だ。従業員の仕事に対する負担とストレスを緩和するだけではなく、働く意欲をさらに高めることができるため、企業と従業員双方にメリットをもたらす。
このような働き方を可能にする「ABW型オフィス」には、大きく分けて2つのとらえ方がある。
1つはメイン(本社)オフィス以外の選択肢を内包したABW型オフィスだ。これには自宅やコワーキングスペース・シェアオフィスといったサテライトオフィスも含まれる。
もう1つは自社内のオフィスをABWに適したデザインに変更するもので、これも「ABW型オフィス」と呼ぶことができる。
ABW導入の担当者は、上記も念頭にリサーチや検討を進めていくと良い。
サテライトオフィス
本社オフィス以外に設置する第二のオフィスとしての「サテライトオフィス」もぜひ検討したい。従業員の自宅に近い場所に設置されていれば、子育てや介護を行う従業員にとっては働く環境が大幅に改善することになる。実際に従業員の多様なライフスタイルを考慮し、アクセスの良いターミナル駅にサテライトオフィスを設置するなど、分散型ワークプレイス戦略を採用する企業も増えてきている。また都心ではなく地方に設置すれば、地方在住の優秀な人材獲得にもつながるため企業サイドにとってもメリットが多い。
ABW型オフィス
ABW型オフィスは、従業員の多様な生き方を尊重したこれからの働き方を象徴するオフィスといえる。仕事内容によって自由に働く場所や時間を選べるABWの長所を取り入れたABW型オフィスでは、フリーアドレスの導入や、オフィス内に業務に集中できる個人ブースや、リラックスしてアイデアを練るカフェスペースなど個人の多様な需要に応じたスペースを用意することで、従業員の満足度・生産性の向上に寄与する
ABW型オフィスのデザイン・レイアウト例
ここからは、ABW型オフィスのデザインで参考になる事例を紹介していく。
フリーアドレス席
ABW型オフィス導入にあたり、オフィスの全部あるいは一部にフリーアドレス席を導入することになるだろう。個人の固定席を取り除くのであれば、従業員の私物を置くスペースがなくなるなどといった不便を解消するために、パーソナルロッカーを設置する等の工夫が必要になる。
コミュニケーションを活性化させるコラボレーションスペース
オープンなコラボレーションスペースを設置することは、従業員同士の活発なコミュニケーションにつながる。チームメンバー同士の交流に限らず、部署間を超えた情報交換やアイデア共有など、イノベーションが生まれるきっかけになり、また他者との交流から得られる刺激は従業員の満足度やモチベーション向上につながる。
個人の集中力を高めるプライバシースペース
コミュニケーションを促すように設計されたオフィスでも、従業員が一人で集中できるスペースを取り入れることも重要である。従業員が一人で考え事をしたり、瞑想を行うことのできるクワイエットルーム等、オープンスペースからの雑音がストレスにならないための工夫も効果的である。
ウェブミーティング用ブース
ABW導入オフィスでは、自宅やサテライトオフィス等で働く従業員と、オフィスにいる上司やチームメンバーとの打ち合わせが同時に複数行われることも珍しくない。オンラインの会議ツールを使用できる遮音ブースがあれば周囲の音や機密漏洩を気にせず打ち合わせが行える。
1on1スペース
ABWの導入により対面で働く時間が減少した結果、部下が業務上のちょっとした疑問や不安などを上司に相談する機会が得られないと感じる可能性もある。オープンスペースでは話しにくい話題を落ち着いて話せるブースを設置すれば商談や取引先との打ち合わせにも使えて一石二鳥だ。
リフレッシュスペース
仕事を離れて一時的にリラックスできるスペースを設置することも、オフィス出社時の生産性を高めるのに役立つ。また、異なる部署の従業員が居合わせることでコミュニケーションや雑談が生まれ、思わぬ業務改善のアイデアやイノベーションの創出も期待できる。 こういったスペースに人を惹きつけるためにカフェを併設したり、オフィスアートを展示したり、モニターやサイネージ・資料コーナー等を設置したりするのも効果的だ。
オフィス環境を最適化するIoTセンサー
ABW型オフィスのオフィススペースを最適化するためのデジタルツールも有効である。座席に人感センサーを設置し利用状況を計測することで、利用頻度が低いフリーアドレス席を減らし、代わりにミーティングルームを設置するなどの代替策を考えることができる。定期的なモニタリングと測定結果に基づく改善提案を通じて、無駄な執務スペース・賃料コストの削減を実現し、生産性の高いオフィスづくりへと繋げることができる。
ABW型オフィスの成功事例
GMOあおぞらネット銀行のオフィス事例
2019年12月「渋谷フクラス」に新オフィスを開設したGMOあおぞらネット銀行は、設計にあたり業務効率化やモチベーション向上・そしてコミュニケーションやコラボレーションを生み出せる環境づくりに主眼を置いた。
執務スペースは一部を除きフリーアドレスで構成され、以下のようなユニークで多彩なエリアが設置されている。
●渋谷の街並みを一望できる半個室型の集中ブース
●クッションソファーやハンモックのあるリフレッシュエリア
●卓球台にもなるテーブルを設置した多目的エリア
●個室型からファミレス席まであるミーティングエリア
●ドリンクやお菓子の購入ができるスナックエリア
●オンライン会議用の個室ブース
また、16階にはグループ企業が利用できる福利厚生施設として広さ600坪超を誇るシナジーカフェ「GMO Yours・フクラス」を開設。昼寝スペースやフィットネスジム、託児所も完備し、グループ全体の従業員の能力を最大限発揮できる共有スペースの環境づくりを目指したという。
エイコー - 東京本社オフィス移転事例
IT機器の導入支援など、オフィス環境に関する多種多様なソリューションを提供しているエイコーは、2022年に東京本社オフィスを4フロア(432坪)からワンフロア(274坪)へ統合移転した。
執務環境は働く場所を自由に選択できるフリーアドレス型オフィスとし、個人ロッカーやメールボックス、事務機器・事務用品を集め、従業員同士を“結ぶ”コミュニケーションエリア、1on1向けのモニター席、オンライン会議・営業にも対応した個室ブース、広大なカフェスペースなどを備えるABW型のオフィスとなっている。
床面積を37%縮小しコストを削減したと同時に、従業員の働きやすさやコミュニケーション向上を実現した。
ABWに関するよくある質問
ABWな働き方とは?
ABWとは、社内外問わず業務内容に最適な場所と時間を自由に選択できる働き方である。オフィスだけでなく自宅やカフェなど様々な場所で従業員が裁量を持って仕事をすることが認められており、勤務時間も選べるのが特徴。
ABWオフィスとはどういう意味?
ABWオフィスとは、従業員が仕事内容に最適な場所や時間を自由に選べるように設計されたオフィスのことである。これには、自宅やコワーキングスペースなどのサテライトオフィスも含まれ、また多様な働き方に対応するデザインを採用した自社オフィスも指す。従業員の多様なライフスタイルを支え、生産性の向上に貢献する。
フリーアドレスとABWの違いは?
フリーアドレスは社内の任意の空席を選ぶ働き方であり、オフィス勤務が前提である。一方、ABWは場所を選ばず働くことができ、社外での勤務も含まれる。またフリーアドレスはオフィス内の柔軟性に注目するのに対し、ABWは働き方全体を見直し従業員の主体性を重視する概念である。
フリーアドレスは事務職に向いているか?
事務職の中でも向き不向きがあり、個人情報や財務上の機密情報を多く扱う人事や経理などの部門は固定アドレスが適しているケースも多い。一方で、ITツールの活用が進んでいる企業では、オンラインで必要な情報にアクセスでき、部署間の連携も取りやすくなるため、事務職にとってもフリーアドレスのメリットが多く、向いているといえる。
ABWのメリットとデメリットは?
ABWのメリットは、勤務場所が固定されないことで作業効率や従業員のモチベーションが上がり、スペースの最適化によるコスト削減や人材採用時の優位性が得られることなどがあげられる。一方、デメリットは、勤怠管理が難しい、準備とシステム円滑化に時間がかかる、従業員のモチベーションに差が生じる可能性などが想定される。
理想のオフィスを実現するJLLのワークプレイス戦略コンサル
ABW型オフィスの導入によって従業員のモチベーションが上がる一方で、新たな形だからこそ課題や問題が生まれる可能性もある。そのような場合にすみやかに課題を解決し、ABW本来の効果を発揮させるには、専門家のサポートを受けるのも良い方法だ。
JLLでは、豊富な実績とデータ・テクノロジーを活用し、従業員のニーズを生かしたワークプレイス戦略の立案から入居計画の実施・ポートフォリオの最適化・従業員に対するチェンジマネジメントなどを支援している。
ワークプレイス戦略を考えるにあたっては、JLLの提供するABW導入支援や総合的なソリューションもぜひ役立ててほしい。