メインコンテンツにスキップ

JLL日本の東京オフィスがLEED認証の最高レベル「プラチナ」取得

JLL日本の本社オフィスが2023年4月19日、世界的なグリーンビルディング認証制度として知られるLEEDのインテリア設計・建設分野である「LEED v4 Interior Design and Construction: Commercial Interiors(以下、LEEDv4 ID+C: CI)」の最高レベル「プラチナ」を取得した。JLLの調査では、当該評価バージョンにおいてプラチナを取得した事例は国内で2件目(2023年4月19日時点)だ。

最先端の環境配慮型オフィスとはどのようなものなのか。今回のプロジェクトを参考に、LEED認証取得におけるポイントを紐解いていく。

LEED認証の評価システム

プロジェクトの形態によってLEED認証の主な評価システムは以下の5種類に分けられる。

BD+C(建物設計と建設) 新築または大規模な改修を行う建物が対象。新築、コア&シェル、学校、店舗、データセンター、倉庫と配送センター、宿泊施設、ヘルスケアが対象。
ID+C(インテリア設計と建設) オフィスや店舗、ショールーム、ホテルなどの新築・大規模改修時における一部スペースの内装工事が該当する。
O+M(既存建物の運用-保守) 既存建物における環境性能を管理・運用面を中心に評価する。既存オフィスビルや商業施設、学校、ホテル、物流施設などが対象。
ND(近隣開発) 街区単位の環境性能を対象に、二段階で評価される。計画段階から設計・施工までを対象にした計画認証(予備認証)と、開発完成後に一定期間内に申請することで最終認証を受けることができる。
Homes(ホーム) 新築または大規模な改修を行う戸建て住宅や3階以下の低層集合住宅、4階以上の中層集合住宅が対象。
jll-leed-environmental-certification-acquired-by-jll-japan-teaser

認証を取得した建物・室内環境は総じて環境負荷の低減に大きく寄与していると認識されている

LEED認証の評価項目

評価項目には下記9つのクレジットカテゴリーがあり、必須条件を満たしたうえで、選択項目のポイントを加算していき、合計点によって4つのレベルに分類される。プラチナ(80ポイント以上)を最高レベルとし、以降、ゴールド(60-79ポイント)、シルバー(50-59ポイント)、標準認証(40-49ポイント)となる。認証を取得した建物・室内環境は総じて環境負荷の低減に大きく寄与していると認識されている。

1 総合プロセス
2 立地と交通手段
3 持続可能な敷地
4 水の効率的利用
5 エネルギーと大気
6 材料と資源
7 室内環境品質
8 革新性
9 地域における重要項目

JLL日本 リサーチ事業部が2023年4月に発表した「サステナブル不動産への道:ビル認証編(以下、同レポート)」によると、2022年12月末時点における日本のLEED認証取得物件は223件。最高位のプラチナを取得しているのは30件(全体の14%)だ。

日本の建築物等は223件と世界22位に留まっているが、直近5年間でみると1年あたり平均24件取得。2013-2017年の5年間の取得実績平均15件/年と比較すると、着実に増えている

LEEDの取得件数が日本でも増えている。JLL日本 リサーチ事業部の同レポートによると、LEED認証を取得している建築物等は2022年12月末現在、世界150カ国・地域で100,281件。そのうち日本の建築物等は223件と世界22位に留まっているが、直近5年間でみると1年あたり平均24件取得。2013-2017年の5年間の取得実績平均15件/年と比較すると、着実に増えていることがわかる。

LEED取得で差別化を図るオフィスビル

一方、テナントの受け皿となるオフィスビル側の取得実績も今後増えていく可能性がある。オフィス市場に詳しいJLL日本 リサーチ事業部 シニアディレクター 大東 雄人は「外資系企業の誘致を視野に現在進行中の大規模再開発でLEED認証やWELL®認証※2を取得する事例もあり、実際に外資系企業が入居を発表した事例もある。オフィスの大量供給を控え、ビルの競争力を向上させ、競合と差別化を図るためにもLEED認証をはじめとするグリーンビルディング認証を取得するオフィスビルが増えていくのではないか」との見解だ。

LEED認証取得に向けた具体的な取り組み

入居ビルの選定

今回のLEEDの評価システムでは、内装における省エネ性能のみならず、入居するビルの環境性能も加点対象となる。例えば、前述した評価項目「立地と交通手段」において、公共交通機関が充実している立地は自動車による炭素排出量削減に寄与するため、「建物の敷地境界から400m以内(敷地境界を400mオフセットした範囲内)の建築密度」や「建物の歩行距離400m以内のバスおよび800m以内の電車本数」などの要件を満たす必要があった。そのため、グリーンビルディング認証の取得支援など、環境関連の多彩なサービスを提供しているJLL日本 エナジー&サステナビリティ事業部が移転先の選定にも携わっている。

当該ビルが選定された理由として、前述した立地条件の他、省エネ型空調システムを採用したことでビル自体のエネルギー効率が非常に高かったことや、雨水の再利用による節水効率の高さといったLEED取得に向けて評価の高い高効率設備が整っていたことも挙げられる。

LEED認証取得のポイント

物件選定時からLEED認証取得を前提としたプランを遂行できたことが成功の要因

今回のLEED認証取得プロジェクトにおいて最も難しかった点について、プロジェクトを担当したJLL日本 エナジー&サステナビリティサービス事業部長 松本 仁は「LEED認証取得に必要な要件を精査するのはもちろん、すべての工事関係者に伝達し協力をとりつけ、実行しなければならなった。海外発の環境認証であるため、認証取得要件が日本の商習慣、文化とは異なるため、理解してもらうのが最も難しかった」と説明する。

一方、自社の移転プロジェクトであったため、物件選定時からLEED認証取得を前提としたプランを遂行できたことが成功の要因ともいえる。JLL日本 エナジー&サステナビリティサービス事業部 シニアサステナビリティマネージャー 渡部 まきは「通常、グリーンビルディング認証の取得を相談される場合、移転先がすでに決まった段階からプロジェクトに参画することが多い。その場合、入居ビルの性能によってはクライアントが希望するランクを取得するのが困難なケースは少なくない」と指摘する。

また、JLL日本 エナジー&サステナビリティサービス事業部 アシスタントエンジニアリングマネージャー 山本 武史は「移転先を決めてからLEED認証を取得する場合、特に外資系企業はグローバル本社とのせめぎ合いになる。例えば、本社からはゴールド取得を求められる半面、入居ビルの環境性能を鑑みるとシルバー取得が限界といったケースだ。それゆえ、LEED認証取得を視野に入れて移転先の選定を行うべき」とアドバイスする。

LEED認証は目指すランクが高くなるほど、要件が難しくなる。事前に検討を開始する時期を早め、入居先のビルの仕様を確認することが重要だ。今回のプロジェクトでは、設計・施工の期間が短く、LEEDの加点に寄与する材料・機器・家具を選定することを諦めざるを得ない場面もあったという。LEED認証取得に関する豊富な知識・経験を有し、物件選定から工事のプロジェクト管理まで一気通貫で対応できるリソースを持つ専門家の協力が不可欠だ。