デジタルワークプレイスとは?導入メリットと構築ステップ、リアルオフィスとの融合方法まで解説
著者
JLL日本 マーケティング&コミュニケーション事業部 コンテンツチーム
デジタルワークプレイス(DWP)とは?定義と注目される背景
まず、デジタルワークプレイスの定義と、注目される社会的な背景を整理する。
デジタルワークプレイスの定義
デジタルワークプレイス(DWP:Digital Workplace)とは、場所を問わず働けるように、ツール・データ・業務環境を統合したデジタルな仕事環境のことである。ウェブ会議やビジネスチャット、クラウド上の業務システムなどを個別に導入するのではなく、従業員が一貫した体験で業務を進められる「もう1つのワークプレイス」として設計する点に本質がある。
言い換えれば、デジタルワークプレイスはツールの寄せ集めではなく、場所を問わず働くことができる統合された業務環境である。物理的なオフィスと対をなす概念として捉えると理解しやすい。
注目される背景(ハイブリッドワークの定着・生成AIの普及)
注目される背景の1つはハイブリッドワークの定着である。総務省「令和7年通信利用動向調査」(2026年5月公表)によると、テレワークを導入している企業は50.1%に達した。オフィスと自宅など複数の場所で働くことが常態化し、どこにいても同じように業務を進められる環境の整備が急務となっている。 もう1つの背景が生成AIの普及だ。JLLが公表した市場分析「【2026年】世界の不動産市場に変革をもたらす6つの潮流」(2025年12月)によると、JLLのテクノロジー調査では法人テナントの92%が「AI導入プログラムを開始している」と回答した。AIを業務に組み込む前提として、データとツールが統合されたデジタル環境が不可欠になっており、デジタルワークプレイスはその受け皿として重要性を増している。
テレワーク・ハイブリッドワーク・オフィスDXとの違い
デジタルワークプレイスは、混同されやすい3つの概念と次のように整理できる。
テレワークやハイブリッドワークが「どこで働くか」という働き方そのものを指すのに対し、デジタルワークプレイスはその働き方を成立させるデジタル環境を指す。ハイブリッドワークを制度として導入しても、デジタルワークプレイスが未整備であれば、オフィスとリモートの間に情報格差が生まれてしまう。
また、オフィスDXが物理オフィス側のデジタル化を指すのに対し、デジタルワークプレイスは働く場所全体を覆う概念である。両者は対立するものではなく、組み合わせることで「リアルとデジタルが融合したワークプレイス体験」が完成する。この点は後述する。
デジタルワークプレイスの構成要素
デジタルワークプレイスは、主に4つの要素で構成される。
コラボレーション・コミュニケーションツール
ウェブ会議、ビジネスチャット、ドキュメントの共同編集など、離れた場所にいるメンバー同士の協業を支えるツール群である。デジタルワークプレイスの最も身近な構成要素であり、リモートワーカーとオフィス内のメンバーが同じ情報にアクセスし、同じ議論に参加できる状態をつくることが目的になる。
クラウド基盤・業務アプリケーション
業務システムやファイルサーバーをクラウドへ移行することで、どの場所・どの端末からでも同じ業務環境を利用できるようになる。SaaS型の業務アプリケーションを組み合わせれば、システムの保守負担を抑えながら、事業の変化に応じて機能を柔軟に追加できる。デジタルワークプレイスの土台にあたる要素である。
セキュリティ(ゼロトラスト・ID管理)
働く場所が分散すると、社内ネットワークの内側だけを守る従来の境界型セキュリティでは対応できない。「すべてのアクセスを検証する」ゼロトラストの考え方に基づき、多要素認証やID管理を整備することが前提となる。利便性とセキュリティを両立できるかどうかが、デジタルワークプレイスの成否を左右する。
従業員体験(EX)の設計
ツールを導入しても、ログイン先やデータの保管場所が分散していては、かえって業務効率は悪化する。ポータルの統合やシングルサインオンなどにより、従業員が迷わず業務にたどり着ける一貫した業務体験を設計することが重要だ。デジタルワークプレイスの評価軸は導入したツールの数ではなく、従業員体験(EX:Employee Experience)の質である。
デジタルワークプレイス導入のメリット
デジタルワークプレイスはツールの寄せ集めではなく、場所を問わず働ける統合された業務環境である
デジタルワークプレイスの導入は、企業に4つの効果をもたらす。
生産性の向上
情報の検索やツール間の行き来に費やしていた時間が減り、本来の業務に集中できる時間が増える。承認プロセスのデジタル化や生成AIによる文書作成支援など、業務プロセスそのものの効率化も進めやすくなる。ツールが統合されているほど、AI活用によるデータの横断的な利用も進めやすい。
柔軟な働き方の実現
場所を問わず同じ環境で業務ができれば、ハイブリッドワークやサテライトオフィス勤務など、多様な働き方を実務レベルで支えられる。オフィスとリモートの情報格差が解消されることで、働く場所によって成果や評価に差が生じる問題も緩和できる。人材確保の観点でも効果が大きい。
コストの最適化
クラウド移行により、サーバーなどの設備投資や保守運用のコストを利用量に応じた変動費へ転換できる。さらに、出社率に応じてオフィス面積や座席数を見直せば、不動産コストの最適化にもつながる。デジタル環境への投資とオフィス戦略を一体で考えることで、コスト効果は最大化される。
ペーパーレス・情報共有の高度化
紙の書類や押印を前提とした業務をデジタル化することで、保管・印刷コストの削減に加え、情報の検索性と共有スピードが大きく向上する。蓄積されたデータは業務改善や経営判断の材料としても活用でき、組織の知識が個人に留まらない状態をつくることが可能だ。
企デジタルワークプレイス構築の基本ステップ
構築は、次の4ステップで段階的に進めるのが基本である。
ステップ1:現状分析(業務と課題の棚卸し)
最初に行うべきは、業務プロセスと利用ツールの棚卸しである。どの業務がどこで行われ、どこに分断や重複があるのかを可視化する。従業員へのサーベイやヒアリングで現場の困りごとを把握し、解決すべき課題の優先順位を定める。ツール選定から入らないことが、個別最適の乱立を防ぐ最大のポイントだ。
ステップ2:ツール選定
課題に基づいて、コラボレーション・クラウド・セキュリティの各領域でツールを選定する。個々の機能だけでなく、既存システムとの連携性と拡張性を重視したい。将来のAI活用を見据え、データを横断的に扱える構成にしておくことも重要である。全社導入の前にパイロット部門で試すと、定着時の障害を早期に発見できる。
ステップ3:業務プロセスの整備
ツールを入れ替えるだけで、紙の承認フローや対面前提の会議運営が残っていては効果が出ない。業務プロセス自体をデジタル前提に再設計し、情報の置き場所や会議のルールを統一する。例外運用を減らすほど、従業員体験は一貫したものになる。
ステップ4:定着支援(チェンジマネジメント)
新しい環境は、導入しただけでは使われない。研修や活用ガイドの整備、部門ごとの推進役の設置など、従業員の行動変容を支えるチェンジマネジメントが不可欠である。利用状況のデータをモニタリングし、活用が進まない部門への支援を続けることで、投資効果がはじめて実現する。
物理的なオフィスと融合することでデジタルワークプレイスは完成する
デジタルとリアルのワークプレイスを一体で設計してはじめて、働く体験は完成する
デジタル環境の整備はゴールではない。物理的なオフィスと融合してこそ完成を迎える。
スマートオフィスとの連携
ハイブリッドワークでは、オフィスは対面の協業や偶発的な交流を担う場へと役割を変える。センサーや予約システムを備えたスマートオフィスとデジタルワークプレイスを連携させれば、在席状況の確認、会議室や座席の予約、入退館までが1つの体験としてつながる。デジタルと物理のワークプレイスを一体で設計してはじめて、働く体験は完成するのである。
IWMS(統合ワークプレイス管理システム)
IWMS(Integrated Workplace Management System)は、不動産・施設・スペースの管理を統合するプラットフォームである。オフィスの利用状況やコストのデータを一元管理でき、ワークプレイス全体をデータに基づいて運営する基盤になる。デジタルワークプレイスと物理オフィスをつなぐ中核的な仕組みとして、日本でも導入が広がりつつある。
オフィス利用データの活用(出社状況・スペース最適化)
JLLの「Global Occupancy Planning Benchmark Report 2026」(2026年5月)によると、オフィスの平均利用率は実績56%に対し、企業が目指す目標は74%と大きな開きがある。座席や会議室の利用データを取得・分析すれば、出社実態に合わせたスペースの再配分や、出社を促す施策の効果検証が可能になる。デジタルワークプレイスで得られるデータは、オフィス戦略の精度を高める資産でもある。
こうしたリアルとデジタルを一体で設計する取り組みは、IT部門と総務・ファシリティ部門の連携が必要になり、自社だけでは進めにくい領域でもある。ワークプレイス戦略とテクノロジー活用の両面でグローバルな実績を持つ専門家に相談するのも良い方法だ。
デジタルワークプレイスに関するよくある質問
デジタルワークプレイスについて、よく寄せられる質問と回答をまとめた。
デジタルワークプレイスとテレワークの違いは何か?
テレワークは「オフィス以外の場所で働く」という働き方の形態を指す。これに対しデジタルワークプレイスは、その働き方を成立させる統合されたデジタル環境を指す。テレワーク制度があっても、ツールやデータが分断されていれば快適には働けない。制度と環境はセットで整備する必要がある。
導入には何から着手すればよいか?
業務プロセスと利用ツールの棚卸し(現状分析)から始めたい。どこに分断や非効率があるかを可視化し、課題の優先順位を定めたうえで、ツール選定・業務プロセスの整備・定着支援へと進む。ツールの導入から入ると個別最適が乱立しやすいため、全体の設計図を先に描くことが重要である。
中小企業でも構築できるか?
構築できる。クラウド型のサービスを組み合わせれば、大規模なシステム投資をせずにスモールスタートが可能。まずコミュニケーションツールとファイル共有から着手し、効果を確認しながらセキュリティや業務アプリケーションへ段階的に広げるとよいだろう。重要なのは規模ではなく、自社の課題に合わせた優先順位づけである。
デジタルワークプレイスが進むとオフィスは不要になるか?
不要にはならない。デジタル環境が整うほど、オフィスは対面の協業や偶発的な交流、企業文化の醸成を担う場へとその役割はさらに重要になる。実際に、出社とリモートを組み合わせるハイブリッドワークが世界的な主流となっている。詳しくは本稿の「物理的なオフィスと融合することでデジタルワークプレイスは完成する」で解説している。
デジタルワークプレイスの構築を支援するJLL
デジタルワークプレイスとは、場所を問わず働けるように統合されたデジタルな業務環境であり、生産性の向上、柔軟な働き方、コストの最適化をもたらす。構築は現状分析からツール選定、業務プロセスの整備、定着支援の順で進め、スマートオフィスやIWMSとの連携によるリアルオフィスとの融合までを視野に入れることが成功のポイントである。
一方で、デジタル環境とオフィス戦略を一体で設計するには、テクノロジーと不動産の両方の知見が必要になる。リアルとデジタルのワークプレイスを一体で設計できる専門家の支援を受けることで、投資効果を最大化できる。
JLLはグローバルな知見と豊富なデータ、実績に基づき、テクノロジーを活用したワークプレイスの構築を支援する。デジタルワークプレイスの構築とオフィスの見直しにあたっては、ぜひJLLにご相談いただきたい。