オフィス改革とは?成功につながる設計・導入ステップ・成功事例
オフィス改革とは?
まずはオフィス改革の定義を理解したうえで、なぜ今このテーマが企業の経営課題として浮上しているのかを確認していこう。
オフィス改革の定義
オフィス改革とは、オフィスのレイアウトやデザインを見直し、従業員が効率的かつ快適に働ける環境を整える取り組みのことである。
具体的な施策としては、作業スペースの再配置やコラボレーションを促進するための共有エリアの設計、個人の作業に集中できるブース配置、テクノロジー導入による業務プロセスの最適化などさまざまな要素が含まれる。
オフィス改革と働き方改革の関連性とは?
オフィス改革を語るときにしばしば登場する言葉が「働き方改革」である。働き方改革は2019年に施行された「働き方改革関連法」に基づき、個々の事情に応じて多様な働き方を選択できるようにするための取り組みといえる。
オフィス改革も働き方改革の一環であり、特にオフィス環境整備の領域での取り組みが該当する。
なぜ今オフィス改革が求められるのか?
ハイブリッドワークの定着により、オフィスの稼働率低下やコミュニケーション不足が多くの企業で顕在化している。出社率が低下したオフィスでは余剰スペースが生まれ、コスト面での非効率が発生する一方、出社時にはコラボレーションやイノベーションを促す場としてのオフィスの価値が改めて問われている。
こうした背景から、官民を問わずオフィス改革への関心は急速に高まっている。内閣人事局は2025年に「オフィス改革ガイドブック」を公表し、中央省庁でのオフィス改革推進を後押ししている。民間企業においても、エンゲージメント向上・人材獲得競争への対応・DX推進といった経営課題の解決策として、オフィス改革を戦略的に位置づける動きが広がっている。
もはやオフィス改革は「レイアウトを変える」という表面的な取り組みにとどまらず、空間設計・テクノロジー・制度・コミュニケーションを統合的に設計する経営施策へと進化しているといえるだろう。
オフィス改革の目的と期待できる効果
働きやすいオフィス環境を実現すると、従業員は仕事に集中しやすくなり業務効率が向上する
オフィス改革は、どのような目的や効果を期待して行われるのだろうか。
社内コミュニケーションの活性化
オフィス改革によるフリーアドレス制や共有スペースの設置は、従業員間の偶発的な交流を促し、部署間の風通しを良くする。社内コミュニケーションが活性化することにより、部署内のチームワーク向上や、情報共有の活発化、部署を超えた連携が期待でき、全社的に業務がスムーズに進行できるだろう。
従業員のエンゲージメントを高める上でも、オフィスにおけるコミュニケーション環境の整備は重要な要素となり、偶発的なコラボレーションによるイノベーション創発も期待されている。
コスト削減
オフィス改革の施策のうち、無人受付システムによる人件費、オンライン会議システム導入による交通費や紙の資料作成費など、直接的な経費削減効果がある。事前申告制にすることで残業代が削減された事例もあり、業務効率化と生産性向上にも寄与する。なかには初期投資が必要なものもあるが、長期的なコスト削減を織り込めば一考の価値がある。
従業員のウェルネス向上
健康的に働けるオフィス環境の構築は、従業員が生産性を維持しながら働くことが期待できる。具体的には、休憩時間にしっかりと心身を休められるカフェやラウンジといったリフレッシュスペースや体の負担を軽減するデスクとチェアの導入などが挙げられる。健康経営の実現にも寄与し、従業員と企業の双方にメリットがあるといえるだろう。
業務効率化
オフィス改革は業務効率化にも寄与する。適切な照明や空調、集中して作業ができるスペースやミーティングスペースを整備することで働きやすいオフィス環境を実現することで、従業員は仕事に集中しやすくなり業務効率が向上する。
モチベーション向上
オフィス改革は従業員のモチベーション向上にも寄与する。フリーアドレス制の導入により、執務場所の自由度が高まり、ストレス緩和と気分転換を促進する。円滑な人間関係の構築、明確な情報伝達が可能な環境を提供することで、相互理解を深め、組織の目標に対する貢献意識を高め、柔軟な業務スタイルと成長の機会を創出する。
オフィス改革の4つのアプローチ
従業員の能力を最大限に発揮させるクリエイティブスペースの設置をオフィス改善の施策として取り入れる企業も増えている
オフィス改革の効果を最大化するには、空間設計・テクノロジー・制度・コミュニケーションの4つのアプローチを統合的に設計することが重要である。
空間設計 – レイアウト・ゾーニングの最適化
空間設計は、オフィス改革の最も視覚的にわかりやすい施策である。
フリーアドレス制とは、従業員が固定席を持たず、日々好きな席で作業を行えるオフィス環境のことである。この制度の導入により、組織の垣根を超えたコミュニケーションが促進されるようになり、新しいアイデアの創出や部署間の連携強化などに寄与する。また、スペース効率の向上と不要な座席を削減でき、コスト削減にもつながる。
さらに、業務内容に応じて働く場所を自由に選択できるABW(Activity Based Working)を導入することで、集中作業にはソロワークスペース、チームでの議論にはコラボレーションエリア、リラックスしながらのアイデア出しにはカフェスペースなど、目的に最適な空間を使い分けることが可能になる。
従業員が息抜きできるラウンジやカフェスペースなどの休憩スペース、能力を最大限に発揮させるクリエイティブスペース、さまざまな目的に合った目的別ワークスペースの設置も、空間設計の重要な要素である。
簡単な会議ができるスタンディングデスクや、カジュアルな雰囲気のオープンミーティングスペースがあれば、会議室が埋まっていても気軽に打ち合わせやアイデア出しを行うことができる。
テクノロジー - スマートオフィス化とDX推進
オフィス改革を成功させるには、新しいテクノロジーを積極的に取り入れていくことも有効だ。
近年話題を集めるスマートオフィスとは、IoTやAI、ロボットなどのスマートデバイスを用いて、従来よりも業務効率や生産性を向上させたオフィスを指す。スマートオフィスへの転換により、生産性の向上・コミュニケーションの活性化・フレキシブルな働き方の実現・従業員のウェルビーイング向上など、さまざまなメリットが期待できる。
JLLが2022年に経営者層を対象に行った調査によると、2025年までに導入を計画しているテクノロジーの上位には、サステナビリティ・テクノロジー、デジタルインフラの改善、パフォーマンス監視用センサー、予測管理・修繕技術、データサイエンスなどが挙げられている。
設備やレイアウトの改善だけでなく、ペーパーレス化もオフィス改革の重要な一環である。社内文書を紙から電子データへ切り替えることで、申請から承認までのプロセスの時間短縮や印刷コストの削減に寄与する。場所を選ばない柔軟な働き方の助けにもなり、テレワークやABWへの移行がスムーズに行えるほか、クライアントへ迅速に資料を提示でき、保管スペースの縮小も期待できる。
制度 - 働き方のルールと評価の再設計
空間やテクノロジーを整えても、働き方の制度が旧来のままでは改革は定着しない。
ハイブリッドワーク制度の整備は、オフィス改革と表裏一体の取り組みである。出社日数のルール設定やフレックスタイム制度の導入、リモートワーク時の勤怠管理の仕組みなど、従業員が柔軟に働ける制度的基盤を構築することが求められる。
また、オフィス改革に連動した人事評価・マネジメントの見直しも重要なポイントとなる。フリーアドレス環境では「在席時間」で評価する旧来型のマネジメントが機能しにくくなるため、成果やプロセスに基づく評価体系への移行を検討すべきである。
コミュニケーション - 偶発的な交流とチーム連携の促進
オフィス改革において見落とされがちなのが、コミュニケーション設計の観点である。
動線設計による偶発的な交流の創出は、レイアウト変更だけでは実現しにくい。個人ロッカーや事務機器を集めたコミュニケーションエリアを中央に配置したり、異なる部署のメンバーが自然と顔を合わせるカフェスペースやラウンジを戦略的に設けたりすることで、部署を超えた「ナナメ」のコミュニケーションが育まれる。
ハイブリッドワーク環境では、オフィスにいる従業員とリモート勤務の従業員をつなぐオンライン・オフラインのハイブリッドコミュニケーション設計も不可欠となる。防音性の高い個室ブースやオンライン会議対応の設備を整備することで、リモート側の参加者も含めた質の高いコミュニケーションが可能になる。
オフィス改革を成功させるための4ステップ
続いて、実際にオフィス改革をどのような手順で進めていけばよいかを段階的に解説する。
1. 現状分析 - 課題の洗い出しと従業員の声の収集
オフィス改革の第一歩は、現状の課題を正確に把握することである。
オフィスの現状に関する問題点を明らかにし、改善すべき課題を特定する。同時に、作業効率化やコミュニケーションの活性化など、オフィス改革を通じて達成したい具体的な目標を設定する。
従業員からの直接的なフィードバックも欠かせない。アンケートやヒアリングを通じて改善すべきポイントを把握し、従業員が参加するワークショップを実施することで、より具体的なニーズやアイデアを引き出すことができる。経営層のビジョンと現場の課題を擦り合わせ、全社的な合意形成を図ることが重要だ。
2. 目標設定とKPI策定
現状分析の結果をもとに、オフィス改革で達成すべき目標とKPIを設定する。
KPIの例としては、
- スペース稼働率(改革前後でのオフィス利用率の変化)
- 従業員満足度(サーベイスコアの改善度)
- 生産性指標(残業時間の削減率やプロジェクト完了速度)
- 離職率の変化
- コスト削減額
- などが挙げられる。
改革前のベースラインデータを取得しておくことで、施策の効果を客観的に評価できる体制が整う。KPIは「何のためにオフィスを変えるのか」を組織全体で共有するための共通言語としても機能するため、必ず用意しておきたい。
3. 設計と施策の決定
従業員の声を基に、具体的な改善策を計画する。フリーアドレスの導入やリフレッシュスペースの設置などが一例だ。
4軸(空間・テクノロジー・制度・コミュニケーション)のなかで、自社の課題に最もインパクトの大きい施策から優先順位をつけて着手する。限られた予算の中で最大の効果を得るために、全社一斉ではなく、まずは1フロアや1部署からのパイロット導入を行い、効果を検証しながら段階的に展開していくアプローチが有効である。
施策の責任者を決め、計画に沿って改革を実施する際には、従業員の理解と協力を得るためのステークホルダーとの合意形成も重要なプロセスとなる。
4. 実装と効果測定・改善
施策の実行後は、定期的にKPIをモニタリングし、目標達成度を評価する。効果測定の結果をもとに施策の改善点を見つけ出し、必要に応じて計画を調整する。
オフィス改革は一度きりの取り組みではなく継続的なプロセスである。社会情勢やビジネス環境の変化に応じてオフィスの課題は変わるため、PDCAサイクルを回しながら定期的に見直しを行い、段階的に改革の適用範囲を全社へ広げていくことが成功の鍵となる。
オフィス改革を推進する上で注意すべきポイント
オフィス改革を推進する際には、期待した効果を最大限に引き出すためにいくつかの注意点がある。よくある失敗パターンを事前に把握し、対策を講じておこう。
目的が曖昧なまま施策を先行させる
オフィス改革でよくある失敗は、「レイアウトを変えること」自体が目的化してしまうケースである。トレンドに流されてフリーアドレスを導入したものの、自社の業務特性や従業員のニーズに合っておらず、かえって業務効率が低下してしまうことがある。改革に着手する前に、解決すべき課題と達成したい目標を明確にしておくことが不可欠である。
フリーアドレス制の導入によるモチベーション低下
フリーアドレス制の導入は、部署の垣根を超えた交流を促す一方で、居場所の喪失感やストレスを引き起こし、従業員の集中力ややる気の低下につながる可能性もある。これを未然に防ぐには、事前に十分な説明を行って理解を得ることや、個別作業が可能なソロワークスペースの確保などが必要である。
管理職のマネジメントの難しさ
オフィス改革により、管理職にとっては部下の業務進捗が把握しづらくなる懸念もある。従来のやり方に頼らず、オフィス環境や仕事の進め方の変化に対応したマネジメントの見直しが求められる。
情報セキュリティ対策コストの増大
ペーパーレス化やリモートワークの導入に伴い、情報セキュリティ対策のレベルを上げることも欠かせない。紙の書類を電子化した場合にはアクセス権限やバックアップ方法の見直しと周知が必須だ。また、クラウドサービスなど新しい技術の導入は作業効率とコスト削減を促進するが、顧客情報や機密情報の漏洩リスクも増大するため、より厳重なセキュリティ対策が求められる。これらの対策のアップデートは、必ず運用開始と同時に行っておこう。
効果測定の欠如による改革の形骸化
KPIを設定せずにオフィス改革を進めた結果、「何が変わったのかわからない」「投資対効果を説明できない」という状態に陥り、改革が頓挫するケースも少なくない。改革の成果を可視化し、経営層やステークホルダーに継続的な投資の価値を示すためにも、KPIの設定と定期的なモニタリングは不可欠である。
オフィス改革の成功事例
すでにオフィス改革に取り組み成果を上げている企業の事例を紹介する。これからオフィス改革に取り組もうと考える企業はぜひ参考にしてほしい。
オフィス移転時にフリーアドレスを導入し、コミュニケーションを活性化
エイコーは、2022年に東京本社オフィスを「Fo-me」と名付けた新オフィスへ移転した。新オフィスでは、コミュニケーションを活性化させるフリーアドレス方式を導入、8つの理想的なワークスタイルを目指した。
新オフィスでは「コミュニケーション」にフォーカスして電子化や業務フローの効率化を推進しており、オンラインや対面でのコミュニケーション、仕事以外のつながりを深める会話、効率的な休憩を通じて社員間の距離を縮めている。これを支えるカフェスペースやコミュニケーションエリアを設け、集中作業とコミュニケーションのバランスを保つ工夫がなされている。
5つのコンセプトにもとづき移転した東京・大阪オフィスがW受賞
JLLは2022年に自社が提唱する「Future of Work(働き方の未来)」と多様な働き方の実現に向け、東京本社と関西支社の移転を実施。ワークプレイス5つの柱として以下を掲げた。
- ABW型オフィス
- テクノロジーとデータの活用
- コミュニケーションの促進
- 従業員のウェルビーイング意識の向上
- サステナブルなオフィス環境
「第36回日経ニューオフィス賞」にて「ニューオフィス推進賞・クリエイティブ・オフィス賞」(東京)、「近畿ニューオフィス奨励賞」(大阪)、「2023年度グッドデザイン賞」(東京)など多数の賞を受賞。不動産の未来を拓き、より良い世界をつくるため、各分野のソートリーダーシップ(各分野をけん引する革新的な活動)を発揮している。
JLLのワークプレイス戦略・オフィス改革支援サービス
オフィス改革を成功させるには、従業員のニーズに耳を傾けながら、空間・テクノロジー・制度・コミュニケーションの4軸を統合的に設計し、データに基づいて継続的に改善していくことが欠かせない。
自社だけで推進するのが難しい場合は、ワークプレイス戦略の専門家と連携することが有効な選択肢となる。
JLLは、オフィス戦略のプロフェッショナルとして、現状分析・データ活用に基づくオフィス環境の最適化提案、グローバル事例を踏まえた改革ロードマップの策定支援、物件選定からプロジェクトマネジメント、移転後のオフィス運営までを一気通貫で支援する体制を整えている。
自社のオフィス改革に関心をお持ちの企業は、ぜひJLLにご相談いただきたい。