オフィスレイアウトの効果と重要性
オフィスのレイアウトは企業の競争力を高める戦略的投資といえる。本セクションでは、レイアウトが業務効率、コミュニケーション、採用力に与える影響を解説する。
企業におけるオフィスレイアウトの役割
オフィスレイアウトは単なる空間配置ではなく、企業の働き方や文化を体現する重要な経営資源と考えるべきだろう。適切なレイアウトは社員が働きやすく、生産性向上に直接的に寄与する。
業務効率、コミュニケーション、人材採用に与える影響
レイアウトの種類によって、コミュニケーションの円滑さやスペース効率、増員時のレイアウト変更のしやすさに違いがある。部署や業務内容、企業文化などによって適したレイアウトが異なるため、それぞれの特徴を押さえて自社に最適なオフィスレイアウトを構築することが大切である。
また、快適で働きやすいオフィスは優秀な人材を雇用することに役立つ。求職者にとって魅力的な職場環境は人材獲得の競争力を高め、社員の職場への愛着形成に寄与する。
働き方改革とハイブリッドワークに対応したレイアウトの必要性
ハイブリッドワークの普及により、オフィスの在り方が大きく変化している。固定席だけでなく、業務内容や気分に合わせて働く場所を選べる柔軟なレイアウトは自律的な働き方を促し、偶発的なコミュニケーションも生み出す。
オフィスレイアウトの考え方4つのポイント
効果的なオフィスレイアウトを実現するには、計画段階での4つのポイントを押さえる必要がある。基本コンセプト、ゾーニング、動線、基準寸法という観点から解説する。
基本コンセプトを明確にする
レイアウトを検討する際は、まず固定席かフリーアドレスか、内勤者と外勤者の割合、来客の頻度などを分析するべきだろう。例えば集中して作業したいエンジニアが多い場合はソロワークに特化したブースを多く設置するなど、業務上のニーズに応じて自社に最適なコンセプトを策定する。
機能・役割別のゾーニング設計を行う
ゾーニング計画とは、エントランスや応接室、ワークスペースなど、機能や用途によって空間を区分けし、大まかな配置を考えることである。適切にゾーニングを行い、業務内容に合わせたレイアウトにすることで、限られたスペースを効果的に活用できる。
セキュリティレベルに応じたゾーン分けも重要である。オフィスには毎日、社員だけではなく来客者や清掃員、配達員など社外の人々も訪れるため、各エリアのセキュリティレベルを用途や利用者をイメージしながら設定する必要がある。
業務内容に合わせた動線を考える
動線とは、オフィス内での人の動きのことを指す。社員が何か行動を起こす際の自然な動きや経路をしっかりとイメージして、レイアウトを設計すると働きやすいオフィス環境を作ることができる。
動線を考える際の基本的なポイントは以下の通りである。まず社員がよく行うアクションに対してシンプルにどの経路だと最短で働きやすそうかを考えることが重要である。また、主要動線だけでなく、副次的な動線も考慮しておくとトラブル時にストレスを軽減できる。
さらに、健康経営の観点から座りすぎ防止のためにあえて回遊を促すような動線を設計することも一考に値する。一方、避難経路や非常口への動線は社員の安全を確保するための必須条件である。
動線設計では、業務効率だけでなく健康経営や安全性も重要な視点である。
基準寸法とは、建築基準法・労働安全衛生法・消防法の3つの法律をもとに「基準」が設けられている、オフィス空間において人が安全かつ快適に動けるとされる通路幅やデスク間の距離を指す。
基準寸法を無視したオフィスレイアウトは、快適な執務環境とはならず、社員の不満、ストレスの増加や生産性の低下につながりかねない。そのため、基準寸法を参考にゆとりのあるオフィスレイアウトを考えることが大切である。
主要なオフィスレイアウトの種類とその特徴
オフィスレイアウトには、それぞれ異なる特徴を持った様々な種類がある。一般的に知られている島型、同向型、ブース型、フリーアドレス型、ABW型の5つのタイプについて解説する。
島型(対向型)レイアウト
最もスタンダードでコミュニケーションも取りやすい、無駄のないレイアウトである。主には部署ごとにデスクを対面式に並べる場合が多い。電話やパソコンといった配線処理がしやすく、島ごとに部署が分かれているので、どの部署がどこにあるかが分かりやすいといったメリットがある。
同向型(並列型)レイアウト
デスクを一方向に並べて配置する。コールセンターや銀行の店舗などでよく見られるレイアウトで、全て同じ向きに並べる同向型は、窓口対応のある業務やワークフローが確立した定型業務に適している。
集中作業や窓口業務に適した配置で、プライバシー確保と作業集中度の向上が期待できる。
ブース型(個別型)レイアウト
パーティションで区切られた個別のワークスペースを提供するレイアウト。集中力を要する業務に適しており、エンジニアやクリエイティブ職向きの執務環境を提供する。プライバシーが確保されるため、機密性の高い業務にも向いている。
フリーアドレス型レイアウト
座席を自由に選べるオフィスの運用施策。出社した社員は、空いている席を自由に選んで業務をすることが可能で、リモートワークが多い部署や外出の多い営業職などオフィスにいる人数が一定でない企業も執務スペースを有効活用することができる。また、固定席を持たない柔軟な働き方により、部署間コミュニケーション活性化の効果が期待できる。
ABW型レイアウト
ABWはActivity Based Workingの略称で、働く場所や時間を自由に選択できるワークスタイルを指す。オフィス内にとどまらず、サテライトオフィスや自宅・カフェなど、自由に働く場所を選択可能である。
オフィスにおけるABW型のレイアウトは執務空間のみならず、集中ブースやカフェスペース・コラボレーションエリア・リフレッシュスペースなど様々な環境の整備が含まれる。業務内容や気分に合わせて働く場所を自由に選択でき、創造性の創出や生産性向上が期待される。
オフィスレイアウトは、働き方と密接に関わる。多様な種類のレイアウトの中から自社の働き方にあったレイアウトを採用することで、快適なオフィスをつくることができる。
自社に最適なオフィスレイアウトの選び方
多様なレイアウトの中から自社に最適なものを選ぶには、複数の判断基準を総合的に検討する必要がある。5つの観点からレイアウト選定のポイントを示す。
企業のビジョンと働き方のコンセプトを明確化する
オフィスレイアウトを見直す際は、はじめに企業のコンセプトや目標を明確にすることが大切である。その上で、社員の働き方のニーズを反映させたレイアウト案を考える必要がある。
デザイン性と機能性のバランスを取りつつ、将来的な変化にも対応できる柔軟性を持たせることがポイントである。詳しくはオフィスデザインの最新事例と導入ポイントをご覧いただきたい。
業種や職種別に適したレイアウトを選ぶ
業種や職種によって、最適なレイアウトは異なる。例えば、IT・テクノロジー企業では、フリーアドレスやABWを活用したコラボレーション重視の空間設計の他、集中して働ける個室ブースなどを整備しているケースが多い。一方、接客が必要なサービス業では、顧客対応エリアと執務エリアの明確な区分けが重要である。接客スペースの充実と来客動線の最適化、社員のコミュニケーション促進を重視したオープンなレイアウトが適している。 とはいえ、同じIT企業・サービス業といえども、業務内容や顧客属性など千差万別であり、最適解となるオフィスレイアウトは必ずしも上述した内容になるとは限らない。個々の企業に合った最適解を見つけ出すことが重要だ。
社員数と将来的な組織変更への対応
オフィスの移転時などに、社員数が50名の時はどのくらいのスペースが必要かを検討する必要がある。一般的には1人あたりの必要坪数は2-4坪が適正といわれている。
将来的な人員増加を見越してあらかじめ余裕のあるスペースを確保しておくことも重要である。組織変更の際も柔軟に対応でき、レイアウト変更の費用や手間を抑えられる設計が求められる。
リモートワークとの併用を考慮したレイアウト設計
オフィス出社とリモートワークとを併用するハイブリッドワークの普及により、使われなくなったスペースが出てくる半面、新しく追設すべきスペースも顕在化してくる。
固定席であれば、全社員を収容できる広さから出社人数に対応した床面積へ調整することが可能だ。一方で在宅勤務の社員をまじえてオンラインミーティングを行うため、防音機能のあるブースを追設することが求められるなど、ニーズの変化に対応できる新しいレイアウトを検討するべきだろう。
コスト対効果を見据えた投資判断
オフィスレイアウトの見直しは、企業の生産性向上や社員満足度の向上など長期的なコストメリットが期待できるため、全社的に行う必要があり、スペースを最適化することで固定費削減も可能になる。また、テクノロジーの導入を目的としたオフィス改装にあたっては、長期的な視点でのコストや費用対効果も考慮すべきだろう。
オフィスレイアウト変更の具体的な進め方
オフィスレイアウト変更を成功させるには、適切な計画と十分な準備が不可欠である。以下に具体的なステップを示す。
STEP1:現状分析と課題の洗い出し
STEP2:コンセプト設計とゾーニング計画の策定
STEP3:レイアウト図面の作成と寸法確認
STEP4:法令適合性のチェック(建築基準法、消防法等)
STEP5:家具・設備の選定と配線計画
STEP6:施工スケジュールと予算管理
STEP7:運用開始後の効果測定と改善
特に重要なポイントとして、まず課題の洗い出しでは経営層だけでなく現場社員へのヒアリングを実施し、具体的な問題点を明確にすることが不可欠である。その上でコンセプト設計では5年後、10年後の事業計画も見据えた柔軟性のある計画を立てる必要がある。
設計段階では、建築基準法、消防法、労働安全衛生法に加え、バリアフリー法や省エネ法への対応も確認しておくことで、後戻りのないスムーズな進行が可能となる。
そして運用開始後は3カ月、6カ月、1年のタイミングで定期的に効果測定を行い、継続的な改善を図ることが重要である。
オフィス改善は実施して終わりではない。改装後に狙い通り快適度が向上しているかどうか測定し、評価と改善を行うことが不可欠である。
オフィスレイアウトで失敗しないための注意点
オフィスレイアウトを変更する際のよくある失敗を回避するには、事前に押さえるべき重要なポイントがある。7つの観点から失敗しないための注意点を解説する。
デザイン性だけでなく機能性とのバランスを重視する
働きやすいオフィスづくりには、デザイン性に加えて「疲れにくさ」や「実用性の高さ」も重要である。長時間でも疲れにくい快適性や機能性、耐久性をしっかりと考慮してレイアウト設計・家具の選定を行うことがポイントだ。
社員の意見を取り入れた参加型の計画プロセス
社員へのアンケートやヒアリングを行い、具体的な不満や要望を収集することで、表面的な快適さだけでなく、仕事を進める上での潜在的なニーズや本質的な課題の特定が可能となる。
将来的な組織変更や人員増減への柔軟性確保
人員増減や組織変更の際も柔軟に対応でき、レイアウト変更の費用や手間を抑えられる設計が重要である。部署間の壁がないレイアウトは、社内コミュニケーションの促進効果もある。
配線・空調・照明など設備面での事前確認
オフィスレイアウトを考える際は、電話線やLANケーブルなどの配線についても準備を進めなければならない。特殊なレイアウトにする場合や席数が大幅に増える場合は、変更に伴って配線を見直したり有線と無線を使い分けたりする必要が出てくる。
優先順位をつけた計画で予算超過を防ぐ
予算内で効果的なオフィスレイアウトを実現するには、優先順位をつけた計画が不可欠である。すべての要望を一度に実現しようとすると予算超過のリスクが高まるため、「必須項目」「推奨項目」「将来的な検討項目」といった優先順位を明確にし、段階的に実施することが重要である。
定期的な見直しとPDCAサイクルの実施
運用開始後も定期的に見直しを行い、継続的にオフィス環境を最適化していく必要がある。社員満足度調査や利用率データの分析を通じて、当初の目標が達成できているかを検証し、必要に応じてレイアウトの微調整や運用ルールの改善を行うPDCAサイクルの実施が求められる。
判断に迷ったら専門家の意見を聞く
自社の知見やリソースのみで適切な判断や実施ができるかどうか不安な場合は、総合的なオフィス戦略に詳しい専門家のサポートを受けるのも有効である。最適なレイアウト選びについても参考にしていただきたい。
オフィスレイアウト変更の成功事例
実際の企業事例を通じて、オフィスレイアウト変更がもたらす具体的な成果を紹介する。JLLが支援した3つの成功事例を示す。
生産性向上を実現した企業の事例
株式会社エイコーは、創業50周年を機に東京本社オフィスを移転し、生産性向上と面積最適化を実現した。
同社は4フロア432坪から274坪のワンフロアへの統合移転を実施。移転コンセプトを「360°Communication」とし、あらゆる壁をなくし、タテ(会社と社員、上司と部下)・ヨコ(他部門や他拠点)・ナナメ(社員同士)で人・情報が繋がるコミュニケーションの活性化を重視した。
新オフィス「Fo-me(フォーム)」は、働く場所を自由に選択できるフリーアドレス型とし、座席数は158席。オフィス中央に「むすぶスペース」と呼ばれる個人ロッカーやメールボックス、事務機器を集めたコミュニケーションエリアを配置した。さらに座席管理システムを導入し、大型モニターに誰がどこに座っているのか表示されることで、相談したい人物をすぐに探すことができる。
その結果、職種ごとの外出時間やオフィス内での働き方をデータ化し検証することで、前オフィスと比べて面積を37%縮小しながら、社員の快適性とコミュニケーション活性化を両立することに成功した。
コミュニケーション活性化に成功した事例①
株式会社LegalOn Technologiesは、急速な事業拡大に伴い1,600坪の大規模オフィスへ移転し、イノベーションを生む環境を構築した。
同社は「法とテクノロジーの力で、安心して前進できる社会を創る」をパーパスに掲げるリーガルテック企業である。新オフィスのコンセプトを「融合と加速」とし、イノベーションを生むためには一つの場所に人が集まり、コミュニケーションをとることが重要との考えのもと、レイアウトを設計した。
コミュニケーション活性化を実現するため、4-20人収容の会議室を約50室整備し、空いている会議室の前で即時利用できる予約システムを導入。執務席は固定席を基本としつつ、開発部門は一部フリーアドレスを採用している。
高層フロアからの眺望を堪能できるよう、窓際には予約なしで気軽に利用できるブースや休憩用ソファ、本棚を配置した「ビューア」を設けた他、部署を超えて自由にコミュニケーションが取れる広大な「フリースペース」や飲食コーナーを充実させ、社員のウェルビーイングにも配慮している。
コミュニケーション活性化に成功した事例②
法律事務所ZeLo・外国法共同事業は、急速な事業成長に伴い300坪から520坪への拡張移転を実施し、組織・個人の成長を促す執務環境を構築した。
同社は「リーガルサービスを変革する」という創業理念のもと、リーガルテックを用いたサービスを提供する法律事務所である。移転コンセプトは「オフィス環境をアップデートしながら迅速に床面積を拡張する」とし、よりフラットにコミュニケーションが生まれる執務環境を目指した。
最大の特長は、窓側に配置した弁護士の執務スペースである。パーティションで仕切られた執務スペース、広いゆとりのあるデスク環境、複数人で本棚をコの字型に囲うレイアウト等、集中力を維持するプライベート性を確保しつつコミュニケーション促進を両立している。
また、業務上必要なライブラリースペースを前オフィスと比較して面積ベースで約3倍に拡張し、バーコードを読み込むだけで蔵書を借りることができる図書システムを導入。さらに、オフィスの一角に筋トレマシンやAIマッサージチェアを配置し、社員のウェルビーイングにも配慮している。
これらの事例から、オフィスレイアウトの戦略的な変更により、生産性向上、コミュニケーション活性化、社員満足度向上という多面的な成果が得られることが分かる。
ハイブリッドワークに対応したレイアウト事例
株式会社リンクアンドモチベーションは、「Compatible Work」という独自の働き方を推進し、床面積を7割弱も縮小しながら、労働生産性と社員エンゲージメントの同時向上を実現した。
同社は経営学、社会システム論、行動経済学、心理学などの学術的成果を取り入れた「モチベーションエンジニアリング」によって組織課題の解決や社員の成長支援などのコンサルティングサービスを提供している企業である。東京本社オフィスを1,900坪弱から530坪へ大幅に縮小移転し、全国7つのオフィス全体で総床面積を約6割削減、賃料は約7割削減した。
新オフィスはハイブリッドワークに適したフリーアドレス席を採用している。座席数は330ほどで、グループ会社を含めて800名超が勤務するが、在席率50%に制限し、社員1人あたり週1回程度のローテーション制としている。執務エリアは縮小したが、ヒトの出入りが多い来客エリアは会議室の数を維持した。
また、執務室は3つの事業グループ毎に執務可能なエリアをゾーニングしているが、社員のエンゲージメントを維持するため、指定エリア内での座席位置等の使い方はそれぞれに委ねている。
「Compatible Work」の最大の特長は、「労働生産性の向上」と「社員エンゲージメントの向上」の同時実現を果たすべく、オフィスとテレワーク双方の活用メリットをマニュアル化し、社員に具体的な使用例を提示している点にある。オフィスワークは「協働/一体感の醸成」「偶発/他者からの学び」「情理/他者理解の促進」「共感/同一感覚の共有」、テレワークは「集中/業務効率の向上」「計画/計画的なタスクの進行」「合理/型化業務の遂行」「同報/事実の一斉伝達」といった、それぞれ5つのメリットがあると定義し、具体的な行動例まで言語化している。
コスト削減分は「Compatible Work」実現に向けたITへの投資に加え、社員のベースアップを実行しており、床面積の削減分をどこに再投資するかを重視した戦略的なアプローチが特徴的である。
最適なオフィス環境を実現するレイアウト戦略
オフィスレイアウトは企業成長の重要な投資である。適切なレイアウトは社員の生産性向上、コミュニケーション活性化、採用力強化など、多面的な効果をもたらす。
専門家の知見を活用した戦略的なアプローチにより、自社に最適なオフィス環境を実現することができる。JLLは豊富な実績とデータに基づき、企画段階から施工後の運用まで一貫したワークプレイス戦略の支援を提供しており、企業の理想的なオフィス環境の実現をサポートしているため、レイアウト変更で迷ったらぜひ相談していただきたい。