サービスオフィスとは?基本的な仕組みと特徴
サービスオフィスとは、一般的に家具付きの執務スペースに加え、会議室やラウンジといった共用部、さらには受付や電話代行などのビジネスサポートサービスまでをパッケージで提供するオフィス形態とされる。利用者は内装工事やインフラ整備を行う必要がなく、契約後すぐに事業を開始できることが最大の特徴といえるだろう。
現在、このオフィス形態が普及した背景には、ハイブリッドワークといった働き方の多様化や、将来予測が困難なVUCA時代の到来がある。事業の状況に応じて迅速に規模を拡大・縮小できる柔軟性は、変化の激しい現代の経営環境に極めて適している。また、柔軟な契約形態やオフィスサービスの提供を希望するスタートアップや、迅速に日本でのビジネス拠点を確保したい外資系企業のニーズとも合致し、多くの企業にとって合理的な選択肢となっている。
サービスオフィスと他のオフィス形態との違い
自社のニーズに最適なオフィスを選ぶには、様々なオフィス形態の特徴を正確に理解し、比較検討することが不可欠だ。サービスオフィスと他の主要なオフィス形態との違いに着目しながら解説する。
一般的な賃貸オフィス
一般的な賃貸オフィスは、内装造作や設備のない空間を賃貸借契約する形態だ。レイアウトの自由度が高い半面、敷金・礼金や内装工事費といった高額な初期費用と、入居までに数カ月の準備期間が必要となる。また、昨今主流となっている定期借家契約の場合は契約期間が定められ、途中解約が難しい。普通借家契約の退去時は3-6カ月前の解約予告が求められ、原状回復工事の負担も大きい。サービスや家具が完備され、短期契約も可能なサービスオフィスとは、初期投資と入居スピード、退去時のコスト負担・フレキシブル性において大きく異なる。
レンタルオフィス
レンタルオフィスは、しばしばサービスオフィスと混同されやすい形態である。両者とも家具付きの執務スペースを提供する点は共通するが、主な違いはサービスの充実度にある。レンタルオフィスが主に「場所の提供」に重点を置き、家具などの設備が一定水準に留まるが、サービスオフィスは高級感のある家具などの設備を提供し、加えて専門スタッフによる受付、電話代行、秘書サービスなど、ビジネスを円滑に進めるための付帯サービスが充実している。
シェアオフィス
シェアオフィスは、複数の企業や個人がオープンスペースや会議室などの設備を共有(シェア)して利用するオフィス形態を指す。サービスオフィスがプライベートな「個室」を基本とするのに対し、シェアオフィスは共有スペースの利用が主体となる。そのため、プライバシーやセキュリティのレベルが相対的に低く、他社との情報分離を重視する企業にとっては相応のセキュリティ対策が必要になる。
コワーキングスペース
コワーキングスペースは、起業家やフリーランス、様々な企業がオープンスペースを共有して働く形態が一般的だ。利用者同士の交流や協業(コワーク)を通じて、新たなビジネスチャンスやイノベーションを生み出すことを重視する点も特徴といえる。コミュニティマネージャーが常駐し、イベントを積極的に開催するなど、コミュニティ形成に主眼 が置く施設も多い。一部のサービスオフィスも交流の場は提供するが、主目的はあくまでビジネスに集中できる環境の提供にある。
居抜きオフィス
居抜きオフィスとは、前テナントが使用していた内装や什器を引き継いで入居する物件のことである。初期費用を抑えられる点はサービスオフィスと共通するが、居抜きオフィスでは受付や秘書機能といった運営側のサービスは提供されず、インフラの維持管理も自社で行う必要がある点がサービスオフィスとの違いである。
インキュベーションオフィス
インキュベーションオフィスは、創業初期のスタートアップや起業家の事業成長を支援(インキュベート)することに特化した施設であり、行政が運営するケースも少なくない。安価な賃料に加え、専門家による経営相談や資金調達支援、ネットワーキング機会の提供といったソフト面のサポートが充実している。サービスオフィスが幅広い企業を対象とするのに対し、インキュベーションオフィスは入居審査があり、対象者が限定される。
自社のニーズに最適なオフィスを選ぶには、様々なオフィス形態の特徴を正確に理解し、比較検討することが不可欠だ
サービスオフィス導入の5つのメリット
サービスオフィスの活用は、コスト・スピード・柔軟性など、現代のビジネス環境に適した多くの利点をもたらす。ここでは、企業が享受できる具体的な5つのメリットを解説する。
初期費用を抑えてスピーディーに業務を開始できる
サービスオフィスの最大のメリットの1つが、オフィス開設に伴う初期投資を削減できる点である。一般的な賃貸オフィスで必要となる高額な敷金・礼金、内装工事費、什器購入費などが不要なため、省コストで事業を始められる。また、インターネットや電話回線などのインフラも完備されており、契約後すぐに業務を開始できるスピード感は新規参入企業やスタートアップにとっても大きな強みとなる。
ビジネスの成長に合わせた柔軟な拡張・縮小
サービスオフィスの契約形態は、事業の成長や市場の変化に応じて、利用する部屋の広さや席数を変更したり、短期契約を更新したりといった調整が容易である。人員の増減に合わせた最適なオフィス環境を維持できるほか、期間の定まったプロジェクト単位での利用や、特定の時期だけ必要となるプロジェクト用の短期的拠点として活用することが可能だ。
好立地を低コストで利用可能
都心の一等地や主要駅の近くなど、ビジネスにおける好立地の住所を比較的低コストで利用できる点も大きな魅力である。優れた立地は、企業の信頼性やブランドイメージの向上に直結し、採用活動においても有利に働く。多くのサービスオフィスでは法人登記も可能であり、特に創業期の企業が事業基盤を固める上で、このメリットは計り知れない。
リソースを集中投下できる
サービスオフィスでは、専門スタッフによる受付対応、電話代行、郵便物管理といったビジネスサポートサービスが提供される。これらの業務を自社で対応する必要がなくなるため、社員のリソースを営業活動などに集中させることが可能だ。結果として、組織全体の生産性が向上し、事業の成長を加速させることができる。
BCP(事業継続計画)対策
災害やパンデミックなど、不測の事態に備えるBCP対策としてもサービスオフィスは有効である。メインオフィスが機能不全に陥った際のバックアップ拠点や、社員の通勤リスクを分散させるためのサテライトオフィスとして活用できる。短期契約が可能なため、緊急時にも迅速に代替オフィスを確保でき、事業の継続性を高めるレジリエンス強化に貢献する。
サービスオフィスのデメリットや注意点
サービスオフィスは多くのメリットを持つ一方、注意点も存在する。導入後に後悔しないためにも、以下のような点を事前に理解し、自社の状況に適しているかどうかを判断する必要がある。
坪単価で比較すると割高になるケースも
サービスオフィスは、付帯サービスや共益費が月額料金に含まれるため、単純な坪単価では一般的な賃貸オフィスと比較して割高になる場合がある。
特に大人数で長期間利用する場合は、自社で内装工事を行い、契約期間が長い賃貸オフィスの方が投資を抑えられる可能性が高い。初期費用や人件費・光熱費など、目に見えにくいコストも含めたトータルコストと、事業の将来性を考慮して、どちらが自社にとって最適かを判断する必要がある。
内装やレイアウトの自由度が低い
サービスオフィスは家具や内装があらかじめ設えられているため、デザインやレイアウトの自由度は低い。企業のブランドイメージを反映した独自の空間デザインや、特殊な業務に対応するための特別なレイアウトを実現することは困難である。企業の理念や独自の文化をオフィス空間に色濃く反映させたいと考える企業にとってこの点は制約となり得る。
共用部ではセキュリティ面に配慮が必要
会議室やラウンジなどの共用部を複数の企業と共有するため、セキュリティには細心の注意が求められる。特に機密情報や個人情報を取り扱う会話は、周囲に情報が漏れないよう配慮が必要だ。また、個室の防音性や施錠システムのセキュリティレベルも、運営会社によって異なるため、契約前に必ず確認すべき重要事項である。
サービスオフィスの選び方と契約時のチェックリスト
サービスオフィス選びで失敗しないためには、自社の導入目的を明確にした上で、チェックリストを作成し、複数の物件を項目ごとに比較することをお勧めしたい。具体的なチェックポイントをリストアップしたので検討時の参考にしてほしい。
立地とアクセス
企業の顔となるオフィスの立地は、取引先からの信頼や採用競争力に影響する。主要駅からの距離、交通の便、顧客へのアクセス性を確認する。また、周辺の飲食店や銀行、郵便局などの環境も業務効率を左右する重要な要素となる。
個室・共用部の設備
執務スペースの広さや什器の質はもちろん、会議室の数や予約のしやすさ、ラウンジの快適性なども内覧時に確認すべきである。特に、ウェブ会議用のブースの有無は、現代のビジネスにおいて重要なチェックポイントとなる。
初期費用
サービスオフィスは初期費用を抑えられることがメリットだが、保証金や入会金などの名目で一定の費用が必要な場合がある。契約前に初期費用の総額と内訳を正確に把握し、資金計画を立てておくことが肝要である。
月額費用と料金に含まれるサービス
月額の固定費を正確に把握するため、基本料金にどこまでのサービスが含まれているかを確認する必要がある。特に、光熱費、インターネット利用料、清掃費、ドリンクサービスなどが料金体系に含まれている(オールインクルーシブ)かどうかは、運営会社によって異なるため、確認が不可欠だ。
付帯サービスの内容と追加料金
受付や電話代行、郵便物管理といった標準的な付帯サービスに加え、どのようなオプションサービスが利用可能かを確認する。特に、会議室の利用は、月間の無料時間や超過した場合の料金体系が運営会社ごとに大きく異なるため、自社の利用頻度を想定した上で比較検討することが重要である。
候補のサービスオフィスが自社にとって必要な付帯サービスをどこまで提供しているかを比較検討する
ITインフラのセキュリティと速度
安定した高速インターネット回線は、現代のビジネスに不可欠なインフラである。回線速度や安定性はもちろん、VLAN(仮想LAN)による他社とのネットワーク分離など、セキュリティ対策がどのレベルで講じられているか、事前に必ず確認すべきだ。
契約期間と更新条件
最低契約期間がどのくらいか、短期利用が可能か、自社の事業計画と照らし合わせて確認する。また、契約更新時の手続きや、料金が改定される可能性の有無、解約時の通知期間なども、契約書で詳細に確認しておくべき重要事項である。
拡張・縮小の柔軟性
将来の事業拡大や人員増減に備え、同じ施設内でより広い部屋へ移動したり、逆に縮小したりといったプラン変更が柔軟に行えるかを確認する。その際の具体的な手続きや費用、空室状況なども事前にヒアリングしておくことが望ましい。
コミュニティの質
どのような企業が入居しているか、利用者同士の交流を促すイベントは開催されているかなど、コミュニティの質や雰囲気も重要な選定基準となる。特に、協業やネットワーキングを期待する場合は、コミュニティマネージャーの存在やサポート体制も確認するとよいだろう。自社の事業フェーズやカルチャーに合った環境かを見極めることが重要だ。
以下のチェックリストも活用し、もっとも自社に適した物件を探してみてほしい。
判断に迷う場合は、オフィス戦略のプロに現状の課題や希望の条件を伝えて選定のサポートを受けるのも有効だ。JLLではグローバルな知見と実績をもとに最適なオフィス戦略を提案している。
サービスオフィス導入のご相談はJLLへ
事業環境の不確実性が高まる現代において、オフィス戦略に柔軟性とスピードをもたらすサービスオフィスは、あらゆる企業にとって有力な選択肢となっている。サービスオフィスの選定は単なる「場所探し」ではなく、コスト・ブランディング・人材戦略にも関わる重要な経営判断である。
多様な選択肢の中から、自社の事業フェーズや目的に真に合致した物件を自社だけで見極めるのが難しいときは、JLLに相談してみてほしい。JLLではクライアントの課題解決を見据え、一般の賃貸オフィスなど他の選択肢も含めた総合的なオフィス戦略の策定から契約条件の交渉までをワンストップで支援している。