【2026年】CRE(企業不動産)戦略で注目すべき5つのグローバルトレンド
JLLグローバル調査に回答した企業の72%がコスト削減を優先事項に掲げる一方、さらにその先を見据える先進企業は、効率化によって生み出された原資をテクノロジーや社員体験(エクスペリエンス)、そして事業の柔軟性へと投資していることがわかった。単なるコスト管理の枠を超えた競争優位性を引き出そうとしているのである。
業界全体で変化が加速する中、CRE責任者にはトレンドに対応するだけでなく、能動的に変化を管理し、適応力のある人材を育成し、事業とのより密接な統合を推進することが求められている。
2026年の変化の速さは、リーダーシップに新たな責務を突きつけている。それは「持続可能な耐久力(サステナブル・エンデュランス)」だ。テクノロジーの導入サイクルは、今や人間の学習スピードを追い越し、CREチーム全体にプレッシャーを与え、バーンアウト(燃え尽き症候群)やスキルギャップを生み出している。こうした中、正しい戦略を策定するだけでなく、絶え間ない変化に対応できる企業文化と人材基盤を築き上げた企業こそが勝ち組となるだろう。先見的なチェンジマネジメント(社員の意識改革を促す施策)、適応型の組織設計、そして事業部門とCRE部門のより強固な統合が不可欠となる。
2026年、事業優位性を獲得するために、CRE責任者が知っておくべきこと、そして実行すべきことを以下に示した。
CREチームの最優先課題
1. 効率的かつ適応力の高い「エラスティック(伸縮自在)・ポートフォリオ」への転換
定義:CRE戦略は、従来の「長期固定化された賃貸借契約」という枠組みを脱し、組織目標に合わせて拠点構成を柔軟に入れ替える、俊敏で「エラスティック(伸縮自在)」なポートフォリオへと進化している。基幹となる「本社オフィス」、機動力のある「サテライトオフィス」、必要に応じて一時利用するオンデマンド型の「フレキシブルオフィス」などを戦略的に組み合わせることで、変幻自在なワークプレイス戦略を実現できる。リアルタイムのポートフォリオ・データを指針とすることで、CREチームは事業環境の変化に即応でき、拠点の規模拡張や再編、スペースの最適化を迅速に遂行することが可能となる。
現実:現在、CREの優先事項としては「運営コストの削減」と「ポートフォリオの最適化」が筆頭に挙げられているが、その一方で「優秀な人材の獲得と雇用定着」も事業成長を支える極めて重要な要素であり続けている。オフィス利用率の世界平均はわずか54%にとどまり、目標平均値である79%とは25ポイントもの乖離があるため、運営効率の向上は依然として大きな課題となっている。この問題は北米地域でより深刻であり、利用率の乖離は29ポイントに達している。しかし、この結果が必ずしも拠点縮小に直結するわけではない。世界の経営層の43%が今後数年間で「社員数の増加」を、33%が「拠点の拡大」を予測している。CRE責任者は、社員の増加、テクノロジーの導入、そして新たな人材集積地にどのようにポートフォリオを適応させるか熟考しなければならない。このように状況が激変する中で、企業は新たなスキルセットを身に付ける社員をサポートし、オフィス内のラボ(実験室)やクリティカル・エンバイロメント(連続稼働が求められる重要拠点)といった「反復型ワークモデル」に対応できるよう、ポートフォリオを進化させる必要がある。こうした「エコシステム・アプローチ」を実現するには、創出すべきビジネス戦略を先読みし、柔軟な組織構造を構築するとともに、事業戦略との密接な連携を図ることが不可欠となる。
なぜ重要?:慢性的な低稼働オフィスと労働市場の流動化が進む中、長期契約によって固定化した拠点戦略は財務上の非効率を招く要因となっている。だが、地域ごとに背景は異なる。北米地域ではオフィス利用率の乖離に苦しみ、アジア太平洋地域は人材採用と拠点拡大に注力している。そして、欧州・中東・アフリカ地域は拠点最適化とコスト削減に重点を置く。しかし、2026年にはすべての地域でより能動的なポートフォリオ戦略の必要性が高まるだろう。AIによる職務の変化やプロジェクトライフサイクルの不安定化によって人員予測は一層困難になるだろう。そのため、長期契約に縛られない可変的な拠点が求められ、物理面・運用面の双方で適応力を備えた「エラスティック・ポートフォリオ戦略」が求められている。
2026年の行動指針:ポートフォリオの最適化を単発のプロジェクトとしてではなく技術基盤として捉え直すべきだろう。利用データ、予約パターン、そして事業の推進要因を統合し、ポートフォリオ運用の弾力性を高めるための「月次シナリオプランニング」を導入すべきだ。CFO(最高財務責任者)は、不動産が事業サイクルに連動した「変動費」となる場合、コストを最優先に考える必要がある。現在、フレキシブルオフィスの運営事業者やオーナーは大企業向けの高度なITソリューションを提供しており、固定型・変動型のオフィスを組み合わせた「ミックス型ポートフォリオ」の構築は十分に実現可能だ。柔軟な賃貸借契約条項やモジュール式の内装設計を取り入れることも効果が高い。そして最も重要なことは、「適正化(ライトサイジング)」を成長促進の手段として再定義することだ。ポートフォリオの継続的な最適化を学び、伸縮自在な運用体制を構築した企業は、新たな市場参入や人材獲得、あるいは資本の再配分の機会が訪れた際に、競合よりも迅速に方向転換を図ることができるだろう。
利用率の乖離がポートフォリオ戦略の焦点に
2. 出社の義務感から解放された「体験」中心のオフィスへ進化
定義:柔軟な出勤体制、オフィスにおけるエクスペリエンス(体験価値)向上戦略、立地条件などを有機的に結び付け、社員のパフォーマンス向上とウェルビーイング(心身の健康、快適性)の最適化を実現する、成熟したデータ駆動型のワークプレイス戦略。
現実:社員は現在の出勤体制を概ね理解している。JLLの調査では66%が「会社の方針は明確である」と回答し、72%がそれを肯定的に捉えている。しかし、理解しているからといって実際に行動(出勤)するとは限らない。オフィスが「通勤する価値がある」と感じられる場所であれば、社員の支持と順守率は高まる。一方で、快適性の低さ、自主性の制限、ウェルビーイング支援不足は、出勤への抵抗感に直結する。端的に言えば、社員はオフィスへの出勤そのものを拒絶しているのではなく、不便な立地条件や質の低いオフィス体験を拒絶しているのである。
勤務場所や勤務時間における柔軟性はもはや“特権”ではなく、人間としての「基本的な欲求」へと変化している。「ワークライフバランス」は、人材定着を左右する要因として「給与」を抜き、第1位(65%)にランクインしている。さらに、57%が「柔軟な勤務時間は生活の質を向上させる」と回答している。これは、オフィスが「仕事と生活の新たな調和(オーケストレーション)」をより高度にサポートする場へと適応しなければならないことを意味している。
同時に、「体験(エクスペリエンス)」そのものがパフォーマンスを向上させるスイッチとしてその重要性を増しており、人材の獲得と定着戦略の中核となっている。世界中の労働者の40%がバーンアウトの影響を受け、「常に仕事と繋がっている(always on)」状態による心理的負荷が深刻化する中で、経営陣は効果的なオフィス体験が生産性とメンタルヘルスに直接的な影響を与えることを認識し始めている。雇用主には、柔軟性を支援すると同時に、ハイブリッドワークの隠れた負担である「物理的・デジタル双方での絶え間ない対応圧力」を解消するという、難しい舵取りが求められている。
オフィスへの出社日数が増加し、「ワークライフバランス」が最優先事項となる中で、ワークプレイスの「立地」は社員体験(エクスペリエンス)にとって、より不可欠な要素となっている。世界的に見ると、回答者の67%が「活気ある立地」にあるオフィスに価値を感じており、この傾向はインド(84%)、中東(サウジアラビア78%、UAE76%)、中国(77%)などの地域で特に顕著だ。都市が急速に拡大し、通勤時間が長期化している地域では、社員は日々の労働時間から得られる価値を最大限に高めたいと強く望んでいることが窺える。
中東とアジアの社員は活気のある地域で働くことを高く評価している
なぜ重要?:現在、企業の52%が週3-4日の出勤を義務付けており、構造的な出勤体制が定着しつつある。しかし、その施策が真に機能するかどうかは、オフィスを「通勤する価値がある場所」に変えられるかどうかにかかっている。
「体験」を重視するワークプレイス戦略は、今やオフィス空間そのものの枠を超えて広がっている。CRE責任者は、自社の占有部内にすべての機能を詰め込むのではなく、周辺環境に充実したアメニティ(カフェやジム、リラクゼーション施設など)が存在する「活気あるエリア」を求めている。これはポートフォリオ最適化における重要な検討事項といえる。世界中の人々の3分の2以上が、自身の「住まい・仕事・遊び」のあらゆる場において、適切な「体験」が組み込まれることを期待しているためだ。
リテール(小売)やホスピタリティ(接客・宿泊)の分野で支持される要素は、オフィスにおいても有効打となる。具体的には、「ウェルネスと自然(73%が職場の近くに緑が増えればウェルビーイングが向上すると回答)」、「パーソナライゼーション(74%が自分に合わせて最適化された空間を好む)」、そして「マルチアメニティへのアクセスによる利便性」が、社員の関心を惹きつける鍵となっている。
2026年の行動指針:人材獲得と生産性向上を重視する組織は、2026年に向けて「柔軟な働き方」や「執務環境」、「立地」といった各要素を統合し、包括的かつ競争力のある「社員への価値提案(EVP)」施策を構築するべきだろう。
健康的で活気のあるエリアを重視した立地戦略に加え、近隣施設の割引サービスや地域イベントとの連携といったプログラムを導入することで、社員の通勤価値を高め、全体的な体験を向上させることが可能になる。
ホスピタリティやリテール業界の手法に学び、体験中心のワークプレイスにおいては、業務スケジュールの調整、ワークスペースの選択、アメニティの活用といったあらゆる接点(タッチポイント)において、パーソナライゼーションと利便性を提供することに注力するべきだろう。
また、体験中心のワークプレイスを支えるデータ駆動型の枠組みとして、CRE部門と人事部門(HR)のデータを統合したオフィス環境への投資を優先したい。これにより、社員の満足度向上とCREの最適化を両立させる、柔軟なワークプレイス戦略を策定するための知見が得られる。明確にROI(投資利益率)が判明する前であっても、先見的なチェンジマネジメントと将来の進化を支える「不可欠な基盤」として、高品質なデータ収集・活用に投資するべきだ。スケジュール管理、スペースの利用状況、パフォーマンスデータを統合できる「HRテック」の恩恵を享受できる時代が到来している。これらを活用することで、組織の規律と個人のニーズのバランスが取れた、エビデンスに基づくハイブリッドワーク方針の策定が可能になる。
3. AIを事業成長のためのインフラへと進化させる
定義:高度なAIをビル管理システムや職場のプラットフォームに統合し、リアルタイムのデータや利用者のニーズに合わせて柔軟に反応する環境を構築する。このネットワーク化された手法により、建物運用の自動化や予測保全、エネルギー管理の最適化が可能になる。その結果、ストレスのないシームレスな体験を組織全体に提供できる他、効率性が向上し、これまで以上にスマートな意思決定を支援する。
現実: CRE業界におけるAI導入の動きは激動の真っ只中にある。2023年にはAIの試験運用を計画していたCREチームはわずか5%未満だったが、2025年には92%に達すると予測されていた。しかし、その多くはいまだ試行錯誤の段階に留まっている。導入を阻んでいるのは「意欲の欠如」ではなく、より根本的な「基盤」の問題である。回答者の54%が老朽化した既存システム(レガシーインフラ)との互換性の低さを最大の障壁として挙げている。一方、すでに普及率が80%を超えるテクノロジーも存在する。予測管理・保守ツール、不動産データの統合基盤(データウェアハウス)、エネルギー・CO2排出量の管理プラットフォームなどが挙げられる。AI投資において「運用効率」が最も即効性があり、インパクトの大きい領域として急速に確立されつつあることを示している。
特にファシリティマネジメント(FM)分野では、すでに28%がAIソリューションの実装を完了しています。投資の優先順位としては、「ワークオーダー(作業依頼)管理」が57%、「アセットのライフサイクルに関するインサイト獲得」が54%と上位となっている。これらは決して夢のような壮大なプロジェクトではない。パフォーマンスの自動追跡や予測保全、施設運用の最適化を通じてROI(投資収益率)の測定を行う、極めて実用性の高いアプリケーションである。
なぜ重要?:現在、センサーネットワーク、入退室管理、Wi-Fiアナリティクス、予約システムなどから、AIが解析可能な膨大なデータが生成されている。しかし、これら断片化された情報を整理・構造化することは依然として大きな課題であり、CRE戦略におけるAI活用の「最優先事項」と広く認識されている。
エネルギー消費とメンテナンス費用は、管理可能な運営費(OPEX)の中で大きな割合を占めます。AIによる予測制御を行えば、これらのコストを10-30%削減することが可能だ。また、不動産・設備管理の現場で深刻化する労働力不足に対し、AIは業務のレジリエンス(復元力)を高める切り札となりえる。ただし、その実現には基盤となるデータ構造の整備と、既存スタッフのスキルアップ(リスキリング)が不可欠となる。
そうした中、社員はオフィス出勤を後押しする要素として「オンサイト・コンシェルジュ(AIアシスタント)」を望ましい選択肢に挙げている。AIアシスタントは、社員のエクスペリエンス(同僚の出勤状況を検索、会議室などの適切な予約、会議時間の代替案の提示など)を向上させ、出社時のストレスを軽減することで、限られた予算内でも社員満足度を向上させることが可能だ。
2026年の行動指針:人材のスキルと組織のデータインフラストラクチャの両方に焦点を当て、CREにおけるAIの価値を最大限に引き出すための基盤を構築します。CREがIT、人事、財務、コアビジネス機能とどのように連携するかを再考し、共同の専門知識と共有データを活用して、影響の大きい問題を解決し、組織全体の価値を最大化するだろう。
AIの価値を最大限に引き出すため、まずは「人材のスキルアップ」と「データインフラの整備」という、ビジネスの根幹(ファンダメンタルズ)に注力する必要がある。CRE部門は、IT、人事、財務の他、主要事業部門との連携のあり方を再考すべきだろう。部門を超えた専門知識とデータを共有し、重要課題の解決に取り組むことで、組織全体の価値を最大化することができる。
AI関連のプロジェクトを拡大する前に、まずはデータ・アーキテクチャの強化を最優先するべきだ。特に「データの相互運用性(システム間の連携)」、「品質」、「ガバナンス」の確保が不可欠となる。そして、将来の成功を描くためには意味のある評価指標(KPI)を定義し、必要なデータを特定した上で、部門横断的にデータを捕捉・共有できる仕組みを構築するべきだろう。
すでに61%の企業が多大な成果を上げている「ワークオーダー(作業依頼)の最適化」や「エネルギー管理」、「スペースアナリティクス(稼働データの収集・分析)」など、実証済みのユースケースから試験運用を開始する。それと同時に、チェンジマネジメント(組織変革の管理)とスキル開発に投資し、組織全体への定着とイノベーションを促進する。こうした取り組みによってCREとその関連部門は組織の未来を担う「共創型のパートナー」へ進化させることができるだろう。
2022-2025年:主要なワークプレイスでテクノロジー導入率80%を超える
4. 将来を見据えた施設管理で変革を促進
定義:ファシリティマネジメント(FM)は今、新たな時代に突入しています。この変革期には、従業員のスキルの事前強化(積極的なリスキリング)、部門機能の変革、そして効果的なチェンジマネジメント(組織変革の推進)が求められている。AIや自動化技術の導入の他、ビジネスの優先順位の変化に伴い、FM部門の役割や業務フローは進化し続ける。将来を見据えた組織を構築するには「人間中心のスキル」への投資、テクノロジーの積極的な採用、そしてチームが変化に柔軟に対応できる「アジャイルな組織体制」への移行が必要である。
現実: FMリーダーの最大の懸念事項は、運営コストの上昇と予算の制約(84%)となった。また、テナントや利用者のウェルビーイング(心身の健康・快適性)と職場の安全性は同率で2番目に重要な課題として認識されている。こうした中、デジタルツールやAIの導入が加速することで、FMチームに求められるスキルや意識、そして組織構造が根本的に変わりつつある。既存社員のリスキリング、変化への効果的な対応、そしてデジタルに精通した人材の新規獲得は、コスト効率や業務プロセスの改善と同レベルで重要課題となっている。そのため、企業はCRE部門全体の人材変革を計画・推進していく必要があるだろう。テクノロジーの価値を最大限に引き出しつつ、「人間中心の職場」をサポートするためには、社員トレーニングへの投資、部門横断型のアジャイルチームの構築、そして新しいリーダーシップのアプローチが不可欠といえる。
なぜ重要?:先進的な組織は、ファシリティマネジメント(FM)を単なる管理業務ではなく、自社の「競争優位性」として再定義している。FMが、従業員のウェルビーイングと生産性を支える環境作りに不可欠な役割を果たし、財務面と人材面の両方で測定可能なROI(投資収益)を生み出していることを認識しているためだ。また、サプライチェーンの最適化や戦略的パートナーシップがコスト削減の重要な鍵となる一方、データとテクノロジーの活用によって「人間中心の体験」を損なうことなく、自動化と業務フローの効率化が加速している。
2026年の行動指針:施設管理に訪れる大規模な変革に備え、チームと組織体制を整備するべきだろう。将来を見据えたFM機能を構築するには、デジタル活用能力やイノベーション創出能力、そして絶え間ない変化を乗り越えていくための「適応型リーダーシップ」が不可欠となる。そして、「業務の卓越性(オペレーショナル・エクセレンス)」と「従業員体験」のバランスを保ち、コスト効率の追求とエンゲージメントの向上がお互いを高め合うような組織文化を醸成したい。膨大な量のタスクはテクノロジーの力を借り、安全第一の環境を維持しつつ、問題解決能力、共感力、協調性といった「対人スキル」を養う人材戦略とチェンジマネジメントが求められている。
従来の「面積あたりのコスト(Cost per square foot)」といったKPIだけでなく、施設利用者の満足度やエンゲージメントに関する指標を組み込む必要がある。これにより、安全性、満足度、そして真のパフォーマンスを多角的に評価することが可能になる。これらの指標を優先することで、FMリーダーは絶え間ない技術革新やオフィスニーズの絶え間ない変化に直面しても、強靭で「人間中心」の運営体制を構築できるだろう。
コスト効率、回復力、ウェルビーイングが施設運営の成功の鍵となる
5. サステナビリティ戦略:エネルギーの継続的な管理とコスト削減を優先
定義:継続的なエネルギー監視、リアルタイム監視、高度なデータ分析を統合。使用状況の最適化やコスト抑制、そして厳格化が進む環境規制などへ対応するために、成熟した「データ駆動型」のサステナビリティ戦略が必要不可欠だ。スマートメーターやIoTセンサー、AIを駆使したインサイトを活用することで、企業はコスト削減効果を最大化し、脱炭素化目標の達成とポートフォリオ全体のレジリエンスを強化することができる。
現実:既存不動産の多くが、機能面・立地面・規制面における「陳腐化」という課題に直面しており、順法性だけでなく資産価値そのものを脅かす要因となっている。CRE責任者にとって、こうしたリスクはエネルギーコストの上昇が続く中で極めて深刻になっている。この4年間でエネルギー価格の高騰は加速しており、インドで20%、英国では50%超も値上がりしている。また、JLLの調査では「エネルギー性能」がサステナビリティ戦略を推進する最大の要因として挙げている(回答者の62%)。コスト増、規制の強化、そして絶え間ない施設運営への社会的圧力という三重苦により、盤石なエネルギー管理体制の構築は今や経営上の最優先事項となっている。しかし、多くの組織では、継続的にエネルギー消費を監視・測定し、最適化するための包括的な仕組みがいまだに整っていない。データの断片化やシステムの老朽化、リアルタイムでのインサイトの欠如が、大規模な省エネの実現を妨げる壁となっている。エネルギーデータの統合に向けたプラットフォームの構築は、もはや不可欠といえる。
効果的にエネルギー管理を継続することで、直接的なコスト削減を実現するだけでなく、順法性への対応やリスク低減、さらには将来の投資判断に不可欠な「信頼性の高いデータ」をもたらすだろう。質の高いエネルギーデータを活用することで、脱炭素化に向けた投資妥当性の論拠となり、「サステナビリティ戦略の推進」と「コスト削減」が両立することに繋がる。
なぜ重要?:建物の性能基準や情報開示の義務化、エンボディド・カーボン(建築資材の製造などに伴う炭素排出)の制限など、世界的に規制が強化されている。対応が遅れている企業は、罰則や資産価値の下落というリスクに直面している。地域別にみると、アジア太平洋地域と欧州・中東・アフリカ地域が先行しており、JLLの最新調査によると、ネットゼロを公表している企業の割合は、南北アメリカ地域の33%に対し、アジア太平洋地域では44%、欧州・中東・アフリカ地域では49%だった。一方、南北アメリカ地域の回答者の62%が「エネルギー性能」をサステナビリティ目標達成に向けた最大の原動力と捉えていることがわかった。スマートビル技術やAIの進化は、今や数値化可能なコスト削減と検証可能なレポート作成を担うまでになっている。エネルギー効率の向上と無駄の削減を通じて、サステナビリティを単なる「コストセンター」から「ROIを生むエンジン」へと変貌させている。実際にテナント企業の59%が、改修プロジェクトによる大幅なコスト削減を実現しており、55%が資産価値の向上を、43%が社員の生産性向上という付加価値を実感している。
2026年の行動指針:最先端のエネルギー監視、スマートメーター、分析プラットフォームへの投資は、単なる法規制に対する義務ではなく、経営戦略上の最優先事項と位置付けるべきだろう。エネルギーデータが、組織内のあらゆる階層における運用ダッシュボードや意思決定の枠組みに統合されている状態を確実に構築する必要がある。また、コスト削減に関する明確で透明性の高い目標を設定し、それを資本配分や改修計画の中に組み込む。コスト削減の追求と広範な財務・環境目標を一体化させ、継続的な改善を尊重する組織文化を醸成したい。
統合の枠組み:組織をまとめるデータの重要性
これら5つのトレンドは、それぞれが独立しているわけではない。互いに密接に関わり合い、戦略的な変革を実現する構成要素である。その中心にあるのは、質の高い統合されたデータであり、それこそがCREにおける効果的な変革の基盤となり、各要素を結びつける「結合体」の要となる。
CRE責任者は、データインフラへの投資を「コスト」としてではなく、迅速な環境適応と人材変革を可能にする「不可欠なプラットフォーム」に格上げするべきである。AIの活用、エネルギー管理、そしてアジャイルなポートフォリオ戦略から得られるビジネス価値がどうなるかは、すべてデータへの取り組みにかかっている。
質の高い統合データという共通基盤があって初めて、CREは経営層の真のパートナーへと昇格するだろう。コストの最適化と社員の優良な体験、AIの能力と人間中心のデザイン、そして戦略的パートナーシップと卓越したオペレーション…これらを巧みに統合した企業は、単に不動産コストを管理するだけにとどまらない。自社の物理的な拠点(オフィスや工場、研究開発拠点など)が競争優位性の源泉として、人材を惹きつける磁力として、そして事業のレジリエンスを支えるプラットフォームとして進化するのである。
※本稿は、JLLグローバルが発表した「Corporate Real Estate Trends to Watch」を元に作成しました。一部AIを活用のうえ翻訳しています。公式な情報が必要な場合、英語の原文をご確認ください。フォーム入力後に英語版資料の無料ダウンロードも可能です。



