先進国第2位の市場規模を誇る日本
日本は先進国*1で米国に次ぐ世界第2位のデータセンター市場規模を有する。背景には、北米とアジア太平洋地域を結ぶ接続拠点としての地理的優位性、高い政治的安定性(世界銀行)、停電時間の少なさ(電力広域的運営推進機関)が挙げられる。データセンターを長期安定的に運営できる多くの条件が揃っているのである。
一方で、課題として、データセンターの電力容量の90%が東京圏と大阪圏に集中している(JLL)ことによる自然災害発生時等における脆弱性懸念が挙げられる。政府は2021年度よりデータセンター等の地方分散によるレジリエンス強化を推進し、企業が地方にデータセンター等を整備する場合に初期投資支援を行い、二圏域を補完・代替する第三・第四の中核拠点を北海道と九州のようなエリアで整備促進する方針を示した。
以下、国内の主要データセンター市場の現況について解説する。
東京圏:供給制約懸念はあるものの、既存エリアと新たなエリアで開発が進む
東京圏は、既存のエリアと新たなエリアの双方で開発が進んでおり、2025年以降に市場規模は2024年末比160%以上拡大する見通しである(JLL)。印西・白井では、変電所の新設計画はあるものの、2030年に向けて電力需給逼迫による新規供給の制約が懸念される一方で、埼玉や北関東では、大規模開発計画が複数発表されている。
開発用地の単価は、立地優位性のほか電力供給等のインフラ環境に影響を受けている。多摩・三鷹エリアでは、地価公示対比最大770%のプレミアムを記録した事例もあり(国土交通省、JLL)、電力確保済み用地への旺盛な需要を反映している。また、電力申し込みから供給まで8-10年程度を要する東京圏においては、長期のリードタイムを許容する投資家が優位性を有する。
図表1:東京圏の供給予定
注釈:供給予定は2025年以降竣工予定・建設中・計画中のデータセンターを示す。推計値であり、変更の可能性がある。
出所:JLL日本 リサーチ事業部(2025年11月)
大阪圏:既存の電力供給を利用した大規模AIデータセンターへの用途変更
大阪圏では、東京圏同様既存のエリアと新たなエリアの双方で開発が進んでおり、2025年以降に市場規模は2024年末比380%以上拡大する見通しである(JLL)。この拡大の一部は高まるAIデータセンター需要への対応を含む。
ベイエリアでは、ソフトバンクおよびKDDIがそれぞれ製造工場跡地を取得し、大規模AIデータセンターに用途変更すると発表した。大阪圏では、電力の申し込みから供給までに要する期間は3~5年程度と東京圏より短期であるが、既存の電力供給を活用したデータセンター開発により、開発期間短縮と用地不足への対応を実現した事例となる。
図表2:大阪圏の供給予定
注釈:供給予定は2025年以降竣工予定・建設中・計画中のデータセンターを示す。推計値であり、変更の可能性がある。
出所:JLL日本 リサーチ事業部(2025年11月)
北海道と九州:戦略的中核拠点
上述の通り、2021年度より、政府は企業が地方にデータセンター等を整備する場合に、初期投資支援を行い、二圏域を補完・代替する第三・第四の中核拠点を、北海道と九州のようなエリアにおいて整備促進する方針を示した。
北海道は、冷涼な気候や豊富な再生可能エネルギー資源により、データセンターの省エネ化や脱炭素化に優位性を有する。また、北米や欧州と地理的に近接していることから、国際海底ケーブルの多ルート化支援の対象として想定される。開発動向として、石狩再エネデータセンター第 1 号(総電力容量15MW、2026年第1四半期竣工予定)が挙げられる。
九州は、比較的廉価な電力単価や高い脱炭素電源比率から、データセンター事業者に魅力的な立地条件を提供している。アジア諸地域に近接した地理的優位性を有することから、北海道と並び、国際海底ケーブルの多ルート化支援の対象として想定される。開発動向として、北九州学術研究都市における大規模データセンター計画(総電力容量120MW、初期フェーズ60MW)が挙げられるほか、糸島市の大規模データセンター計画(同300MW)は、地域未来投資促進法に基づく支援措置の適用対象となっている。
市場展望:成長を生み出す要因
2025年6月の金融庁によるデータセンター設備のJ-REIT適格性の明確化は、投資阻害要因を解消し、データセンターのJ-REIT組み入れを促進し、投資拡大と不動産透明度の向上の好循環が期待される。また、経済産業省は新規制度で2029年度以降の新設データセンター(一定規模以上)にPUE≦1.3の遵守義務(稼働後2年経過以降)を課すことにより、水・空冷から液冷への変遷が進み、電力効率の向上が進む技術革新と併せて脱炭素化を加速するとみられる。
データセンターは、デジタルトランスフォーメーションとグリーントランスフォーメーションを同時に実現するプラットフォームとして、ステークホルダーの強靭性と持続的成長を支える基盤となる。不動産ライフサイクル全体でこの価値を最大化するには、事業の質とスピードを向上させる外部の専門知見による最適な意思決定支援が重要である。
*1 MSCI World Index先進国23か国のうち、Statistaが調査対象とする22カ国。