近年注目される「コラボレーションワーク」とは?
ラボレーションワークとは、立場が異なる社内外の多様な人々が協力して特定のプロジェクトや課題に取り組む働き方とされる。従来型の働き方は各部門が独立して業務を遂行するため、情報共有が限定的であった。しかし、コラボレーションワークでは部門の垣根を超えた“協働”が前提となり、プロジェクトベースでチームが編成される。
コラボレーションワークには、社内の異なる部門同士が連携する社内コラボレーションと、外部企業やパートナーと協力する社外コラボレーションの2つに大別される。いずれも、異なるスキルセットや経験、視点を持つ多様な人材が集まり、アイデアを共有。革新的な施策を創出することで、圧倒的な事業成長や生産性向上を目指す。
なぜ今、コラボレーションワークが求められるのか?
働き方の多様化やビジネス環境の変化、そして顧客が抱える複雑な課題を解決するため、従来型の単一組織による独立型の業務構造ではなく、異なる知見を有する複数組織による柔軟な協働体制が求められている。コラボレーションワークが重要視される背景について解説する。
イノベーション創出とクリエイティビティ向上の必要性
ビジネス環境の変化が激しい現代において、イノベーション創出は企業の競争力を左右する重要な要素となっている。異なる専門性を持つ人材がコラボレーションすることで、従来の枠組みにとらわれない革新的なアイデアが生まれやすくなる。
組織の縦割り構造がもたらす弊害と解決策
従来の縦割り組織では、部門間の情報共有が不十分になりがちで、重複作業や意思決定の遅延が発生する。コラボレーションワークを導入することで、部門間の壁を取り払い、迅速かつ柔軟な意思決定が可能となる。
ハイブリッドワーク時代におけるオフィスの存在意義の再定義
リモートワークの普及により、多くの業務がオンラインで完結できるようになった。しかし、心理的な孤独感など、在宅勤務の弊害が顕在化したことで、オフィス出社とのハイブリッドワークを導入する企業が増加した。そのため、オフィスを単なる執務空間ではなく、あえて「出社する場」…対面でのコラボレーションやイノベーション創出の場として再定義されるようになった。
コラボレーションワーク導入で得られる5つのメリット
コラボレーションワークを導入することで、企業は多面的な価値を享受できる。生産性向上から社員エンゲージメントの強化など、具体的なメリットについて言及する。
業務効率と生産性の向上
コラボレーションワークでは各メンバーの専門知識やスキルを相互活用することができ、作業時間の大幅な短縮が可能だ。困った時にすぐにチーム内で相談できる環境が整っているため、問題に直面しても迅速に解決策を導き出せる。
イノベーションと新規アイデアの創出
異なるバックグラウンドや専門知識を持つ人々が協働することで、多様な視点から斬新なアプローチが生まれやすい。多様性を背景にした交流が広がることで、新しいアイデアの創出が促される。
コラボレーションは、イノベーションを生み出す強力なエンジンである
新商品・サービス開発の加速
複数の専門分野の知見を組み合わせることで、従来の枠組みにとらわれない革新的な商品やサービスの開発に寄与する。市場投入までのリードタイムも短縮され、競争優位性を確保できる。
コスト最適化と投資効率の向上
各部門が費用を分担することで、単独では実現が難しかった大規模プロジェクトも可能となる。また、各部門の知見を活かして費用対効果を高め、リターンの最大化にも繋がる。
社員エンゲージメントの強化
部門を超えたつながりによって帰属意識が向上し、キャリア開発やスキルアップの機会も生まれる。図らずも社員が自身の成長を実感できる環境が整う。
コラボレーションワーク導入時の3つの課題と対策
コラボレーションワークを導入するためには、いくつかの課題が存在する。これらの課題を事前に理解し、適切な対策を講じることが成功への鍵となる。
適切な人材確保の難しさ
プロジェクトに必要なスキルセットを持つ人材を確保できなければ、円滑に業務を進められない。社員の採用だけでなく、業務委託などのフレキシブルな手法を活用することで、これらの課題に対応したい。
コミュニケーションの複雑化
異なる専門性を持つメンバー間では、日常的な業務用語が通じなかったり、前提となる知識不足によって意思疎通の齟齬が発生しやすい。情報の一元管理と理解促進を意識することで、円滑なコミュニケーションを実現できる。
時間と場所の制約
メンバー間の物理的・時間的距離は協働を困難にする要因となる。しかし、オンラインツールを効果的に活用し、定期的なミーティングなどを行うことでこうした制約を乗り越えることが可能だ。
コラボレーションワークを成功に導く5つのポイント
コラボレーションワークを組織に定着させ、その効果を最大化するには、以下の5つのポイントを押さえることが重要である。
目標と方向性の共有
プロジェクトのメンバー同士で共通の目標や目的を明確に共有することが重要である。全員が同じゴールを目指すことで、見解の相違などの課題が生じても乗り越えられる。
役割と責任範囲の明確化
メンバーごとの役割分担と期待値を設定し、二重対応や作業漏れを防止する。各自が自身の役割を認識し合うことで効率的な協働が実現する。
明確な役割分担が、チームの力を最大化する
効果的なコミュニケーション環境づくり
適切なITツールとプラットフォームを選定し、情報共有のルールとプロトコルを策定する。ビジネスチャットや社内SNSなど、場所を問わず気軽にコミュニケーションを交わせるツールを導入することも効果的だ。
心理的安全性の確保
オープンな意見交換を肯定する企業文化を醸成することが不可欠である。ブレインストーミングを実施するのも効果的だ。相手の意見を批判しないように配慮するルールを設定し、思いつく限り自由に意見を述べられるようにしたい。
継続的なフィードバックと改善
定期的な振り返りとプロセスの改善を行い、成功事例を社内に共有して横展開する。PDCAサイクルを回すことで、コラボレーションワークの質を高め続けることも重要だ。
コラボレーションワークを支えるオフィス環境とは?
コラボレーションワークを効果的に実践するには、それを支える物理的・デジタル的な環境整備が不可欠である。
フレキシブルなワークスペース
ABW(Activity Based Working)のような、業務内容や目的に応じて自由に働く場所を選択できる環境が求められる。集中して作業ができる場、アイデア出しに適した場など、多様な活動に対応したスペース設計が重要である。
コラボレーション/コミュニケーションを促進するレイアウト
直接顔を合わせて相談や雑談を気軽にできるスペースや、チームでのアイデア出しに適した環境を用意することで、情報共有や意思疎通がスムーズになり、協力体制が生まれやすくなる。つながりを感じられる空間づくりにはコラボレーションワークへの理解が不可欠となる。
ハイブリッドワークに対応したオフィス設計
リアルなオフィスだけではなく、仮想的な空間も「オフィス」ととらえるべきだろう。DXや仮想オフィスツールを活用することで、オンラインとオフラインをシームレスに接続し、どこからでもコラボレーションできる執務環境を整備したい。
オフィスは物理空間だけでなく、デジタル空間も含めて設計する時代である
コラボレーションワーク導入のステップ
コラボレーションワークを組織に根付かせるには、現状把握から段階的に実施するなど、計画的なアプローチが求められる。
自社の現状評価とギャップ分析の方法
まず、現在の組織における協働体制と、その実態を把握し、理想像とのギャップを明確にする必要がある。社員へのアンケートやインタビューを通じて、現場の声を収集することが重要だ。
小規模プロジェクトでのパイロット導入
いきなり全社展開するのではなく、小規模なプロジェクトでパイロット導入を行う。成功事例を積み重ねることで、組織全体への展開がスムーズになる。
効果測定と拡大展開の進め方
導入後は、生産性の向上度やイノベーション創出への貢献度、社員満足度など、各社に見合った指標を設定し効果測定を行う。データに基づいて改善を重ね、段階的に展開範囲を拡大していく。
専門家への相談タイミングと選定基準
オフィス環境やワークプレイス戦略の設計、テクノロジーの活用など、実務的な疑問点や課題が生じた場合は専門家のサポートを受けることも一考に値する。不動産戦略やオフィス・ワークプレイス戦略の専門知識を持つパートナーを選定・起用することで、より確実にコラボレーションワークを導入でき、効果的に運用することも可能だ。
コラボレーションワーク導入のご相談はJLLへ
コラボレーションワークは、組織変革をもたらし、企業の競争力を大きく向上させる可能性を秘めている。本稿で紹介した基本的な知識やメリットを踏まえ、自社に最適な戦略を導き出すことが求められる。
コラボレーションワークを成功に導くためのオフィス環境・ワークプレイス戦略の策定から設計、実際のオフィスづくりのプロジェクト管理、さらに完成後のオフィス運用に至るまで、JLLでは包括的な支援を提供している。コラボレーションワークの導入を検討される企業は、ぜひJLLまでご相談いただきたい。