都市の「住みやすさ」が不動産需要を動かす時代へ
著者
Kate Pilgrim
グローバル10都市のQOLと不動産市場の関係性を調査
JLLがグローバルで実施した調査では、オースティン、バルセロナ、ベルリン、クアラルンプールなどのグローバル主要都市を対象に各都市の生活の質と経済・不動産市場のパフォーマンスとの関係性を分析した。
その中で、2025-2026年版エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)の「世界で最も住みやすい都市ランキング」で4位に選ばれたメルボルンが、グローバル都市の中でどのようなポジションに立つのかを検証するべく、事業用不動産の観点からメルボルンを含めた世界各都市のポテンシャルを比較し、「Benchmarking Melbourne 2026 – A Global Context」と銘打ったレポートにまとめた。政策、人材、インフラが不動産市場にどのように影響しているかを明らかにしている。
JLLオーストラリア ビクトリア州テナント・レプレゼンテーション 共同責任者兼マネージングディレクターのケイト・ピルグリムはレポート結果を受けて次のように説明する。
「メルボルンは、医療や教育分野で高い評価を受けているだけでなく、投資マネーや企業需要を着実に引き寄せていることが判明した」
レポートで分析した10都市のうち、2025年の不動産取引額でメルボルンは第2位となった。特に物流施設を含む産業セクターとリテールセクターが全体の67%を占める。また、2035年時点でも人口の約3分の1が20-39歳という“働き盛り”が占めることが予測されており、経済成長に必要な人材供給面で優位な立ち位置だ。不動産市場に短期的な逆風が予測される中でも投資マネーを惹きつけている理由がここにある」(ピルグリム)
オースティン:空室率だけでは測れない実態
同レポートは、2025年12月に「Committee for Melbourne」が公表したベンチマーク調査を発展させたもので、メルボルンの競争力や将来性を多面的に捉えるため、特徴の異なる都市を比較対象としている。
その代表例が米テキサス州のオースティンだ。オフィス空室率が歴史的な高水準にある一方、2025年に同都市で締結されたオフィス賃貸借契約の30%をテクノロジー企業が占めるという“異常事態”が起こった。さらに、現在募集中のオフィス床に対する引き合いの44%がテクノロジー企業とされ、2025年第4四半期には3件あった最大規模の賃貸借契約のすべてがテクノロジー関連企業によるものだった。
「オースティンの事例は、もはや市場の好不調を判断する指標が空室率だけに頼れないことを意味している。重要なのは、誰が需要を生み出しているかだ。メルボルンでも、デジタルサービスやデータインフラ関連を中心としたテクノロジー企業による需要拡大の兆しが見られる」(ピルグリム)
メルボルンは、教育環境や人材供給力という点でオースティンと共通点を持つ。ただし、違いは“規模”にある。オースティンではテック産業がすでに都市経済の中核を担うまでに成長しており、市場全体の逆風にも耐性を持つ。一方、メルボルンも同様のポテンシャルを備えているものの、その強みを十分に活かし切れているとは言い難い。
バルセロナ:住みやすさがオフィス需要を生む
2026年にスペインで最も住みやすい都市と評価されたバルセロナは、2025年版「Global Startup Ecosystem Index」で世界33位となった。同時期にはオフィス空室率が171ベーシスポイント改善した。
この傾向から伺えるのは、「住みやすさ」が経済成長を後押しする構図といえる。優秀な人材が集まることで投資マネーが流入し、スタートアップが次々と立ち上がる。その結果、新たなオフィス需要が生まれるという好循環だ。
ピルグリムは「ライフスタイルの問題として語られがちな『住みやすさ』だが、実際には優秀な人材がどこで働き、暮らしたいと考えているか、彼らの嗜好に大きな影響を及ぼしている」と指摘。メルボルンも優秀な人材を惹きつけ、定着させる力によって、テクノロジー、専門サービスなどの知識集約型産業を支え続けている。
クアラルンプール:制度変更による不動産市況への影響
一方、クアラルンプールでは税制変更が不動産市場に与える影響の大きさを示している。売上・サービス税(SST)の適用範囲が不動産賃貸や建設分野に拡大された結果、事業用不動産の取引額は2024-2025年にかけて68%減少した。建設コストも3%上昇、内装工事費や賃料にまで影響が及んでいる。
投資家は需要や供給、長期的な成長ポテンシャルといった市場の基礎的条件だけでなく、政策動向も含めて投資判断を行う。ピルグリムによると「メルボルンは依然として市場の基礎体力が強く、投資家は今後の市場動向や規制環境の変化を注視している」という。
メルボルン:広がる成長機会
様々な外部要因がある中でも、メルボルンは依然として「世界屈指の有望都市」だと、JLLは考えている。オフィス賃料は世界の主要都市と比べて値頃な水準にあり、2025年の投資市場は産業・リテールセクターを中心に堅調に推移した。
しかし、課題がないわけではない。ピルグリムは「その優位性をどこまで実際の経済成長につなげられるかにある」と指摘する。
「メルボルンは、住みやすさと人口構成の両面で、グローバル都市として十分に競争できる条件を備えている。実際に、中心業務地区では専門サービス業が牽引し、2025年通年でオフィス需要の回復が顕著だった。2026年には市場縮小が予測されているが、今後の鍵となるのは“QOL(Quality of life:生活の質)”を都市競争力の源泉として“経済的成果”へと転換し続けられるかどうかにかかっている」(ピルグリム)
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※本稿は、JLLオーストラリアが発表した「How city liveability is leading to real estate demand」を元に作成しました。一部AIを活用のうえ翻訳・加筆しています。公式な情報が必要な場合、英語の原文をご確認ください。