オフィスICTとは?テクノロジーで変わる次世代ワークプレイス構築
テクノロジーで働き方とオフィス環境を最適化する「オフィスICT」
オフィスICTとは何か。まずは基本的な定義や類似用語との違い、そして現代の企業経営においてなぜオフィスICTが重要戦略となっているのかを解説する。
オフィスICTの基本的な定義
オフィスICTとは、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用し、働き方とオフィス環境を継続的に最適化していく考え方、またはその状態を指す。単に便利なITツールを導入するだけでなく、センサーなどで収集した利用状況データを分析し、レイアウト変更や制度改定に活かすといった、データに基づいた改善サイクルを回す点が重要となる。
スマートオフィス・デジタルワークプレイス・オフィスDXとの違い
オフィスICTと関連して、「スマートオフィス」「デジタルワークプレイス」「オフィスDX」といった言葉も用いられる。
スマートオフィスはIoT技術で物理空間を最適化し、デジタルワークプレイスはクラウドツールで仮想空間を最適化する概念である。オフィスDXはこれらの技術を用いて働き方やビジネスプロセス自体を変革する「経営戦略」を指す。
オフィスICTは、上記すべてを実現するための基盤となる個別の情報通信技術やツール群を活用し、オフィス環境改善を進めていく概念といえる。
経営戦略としてオフィスICTが必要な理由
現代のオフィスICTは単なるコスト削減や業務効率化の手段ではない。ハイブリッドワークが定着し、優秀な人材の獲得競争が激化する中、優れた従業員体験(EX)の提供は企業の持続的成長に不可欠である。ICT活用による快適で生産性の高いオフィスは、社員のエンゲージメントを高め、企業全体の競争力を左右する重要な経営戦略なのである。
オフィスICTとは、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用し、働き方とオフィス環境を継続的に最適化していく考え方
オフィスICTの具体的な活用例
オフィスICTと聞いても、実際のオフィスでどのような技術がどんな形で活用されるのか、イメージが湧きにくいかもしれない。ここでは主な活用シーンと代表的なツールを「コミュニケーション」「オフィス運用」「セキュリティ」の3つのカテゴリーに分けて解説する。
ハイブリッドワーク時の連携とコミュニケーションを支援
ハイブリッドワークを円滑に進めるには、場所の制約を超えた連携が不可欠である。高性能なウェブ会議システムは、オフィスにいる社員とリモート参加者との一体感を高めコミュニケーションの質を向上させる。会議室予約システムは、会議室の空予約や予約の集中などの非効率をなくし、必要な時に必要な場所を確保できる。また、フリーアドレス導入時に課題となる「誰がどこにいるか分からない」問題も、座席予約システムや在席確認ツールによって解決できる。
オフィスの利用状況を可視化し、運用を効率化
データに基づいたオフィス運用は、コスト削減と生産性向上に直結する。人感センサーを設置すれば、どのエリアがいつ、どれだけ利用されているかを客観的なデータで把握でき、レイアウト変更などのファシリティマネジメントに活用できる。無人受付システムは来客対応を自動化し、社員がコア業務に集中できる環境を整える。これらのデータを統合ワークプレイス管理システム(IWMS)で一元管理すれば、より高度なオフィス戦略の立案が可能となる。
セキュリティ強化
働き方の多様化は、セキュリティリスクの増大と表裏一体である。ICカードや生体認証によるスマートロック(入退室管理システム)は、物理的なセキュリティを高め、誰がいつ入退室したかを正確に記録する。また、社内外のどこからでも安全に情報資産へアクセスできるよう、「侵入されること」を前提としたネットワークセキュリティ(ゼロトラスト)を構築することも、現代のオフィスに不可欠なICT活用である。
オフィスICTが企業にもたらす4つのメリット
オフィスICTの導入は、単なる業務効率化に留まらず、生産性向上からコスト削減、社員の満足度向上まで、企業経営に多角的なメリットをもたらす。
生産性の向上とコラボレーションの促進
会議室や座席の予約ツールを活用することで、日々の細かな業務上の障壁やストレスを解消し、社員は本来のコア業務に集中できる。ウェブ会議システムなどのオンラインコミュニケーションを円滑にするツールは、スムーズな情報共有と迅速な意思決定に寄与し、チーム全体のパフォーマンスや組織の生産性向上が期待できる。
ファシリティマネジメントの最適化とコスト削減
人感センサーなどで収集したオフィス利用状況の客観的データは、ファシリティマネジメントを高度化する。どのエリアが有効活用されているかを正確に把握できるため、「勘」に頼らない最適なレイアウト変更やオフィス面積の見直しが可能となる。また、人のいないエリアの照明や空調を自動制御することで、無駄なエネルギー消費を抑制し、光熱費といったランニングコストの削減にも直接的に貢献する。
働きやすさとウェルビーイングの向上
快適で質の高いオフィス体験は、社員の満足度、すなわち従業員体験(EX)を高める。このことは企業が社員の心身の健康(ウェルビーイング)を重視しているというメッセージとなり、社員エンゲージメントの向上にも繋がる。
BCP(事業継続計画)とレジリエンスの強化
オフィスICTは、社員が特定の場所に縛られずに働ける環境を構築するため、自然災害が発生しメインオフィスが機能不全に陥った場合でも事業継続が可能となる。クラウド活用やセキュアなリモートアクセス環境の整備は、これからの時代、企業の危機対応能力すなわちレジリエンス(回復力)を強化する上で不可欠といえる。
オフィスICTは日々の業務の妨げとなるストレスを軽減し、社員のエンゲージメントと生産性を最大化する
オフィスのICT化・導入を成功させるための5ステップと注意点
オフィスICTは単にツールを導入すれば良いのではなく、以下のような手順で段階的に導入するのが失敗しないコツだ。
ステップ1:現状課題の洗い出しと目的の明確化
まずは自社が抱える課題の洗い出しと「何のためにICT化するのか」という目的を明確化する。ツール選定・導入が目的とならないよう注意し、「ハイブリッドワーク下の連携不足を解消する」といった具体的なゴールを設定しよう。
ステップ2:ICT戦略の策定とツールの選定
設定した目的を達成するための具体的なICT戦略を策定し、最適なツールを選定する。複数のソリューションを比較検討し、自社の課題解決に最も合ったものを見極める。将来の拡張性やセキュリティポリシーについてもこの段階で十分検討しておく必要がある。
ステップ3:導入計画の策定と社内への周知
具体的な導入スケジュール・体制・予算を盛り込んだ計画を策定する。同時に全社員を対象に「なぜ導入するのか」「働き方がどう変わるのか」を十分に説明し、理解と協力を得ておく。スムーズな活用に向けた操作研修などのトレーニングも欠かせない。
ステップ4:スモールスタートと効果測定
本格導入前に課題を洗い出し、リスクを最小限に抑えるためには、いきなり全社展開するのではなく特定の部署やエリアで試験的に導入する「スモールスタート」が有効だ。この段階で利用率や満足度といったデータを収集し、投資対効果を検証する。
ステップ5:評価と改善(PDCA)
オフィスICTはツール導入がゴールではない。運用開始後に収集したデータを基に、定期的に運用方法を評価し、改善を続けるPDCAサイクルを回すことが欠かせない。変化の大きい時代であるからこそ、新たな課題や社会情勢に対応しながらオフィス環境を継続的にアップデートしていくことで、ICT投資の効果を最大化できる。
ICTを活用したオフィス改革の成功事例
AVI-SPL
AVおよびユニファイドコミュニケーション技術のグローバルリーダーとして事業を展開するAVI-SPLは、アメリカ・イリノイ州Schaumburgのオフィス移転にあたり、最新のテクノロジーを取り入れ、「社員が働きたくなるような明るい空間」「オフィスがクライアントへのショールームになるような先進的なデザイン」を目指した。
新オフィスでは空間全体に導入された最新鋭の会議テクノロジーとAVI-SPL独自のソリューションを活用したワークスペースが実現し、新標準として各拠点への展開計画も進んでいる。
リンクアンドモチベーション
経営学や行動経済学などを取り入れた基幹技術「モチベーションエンジニアリング」で組織課題の解決や社員の成長支援など各種コンサルティングサービスを提供するリンクアンドモチベーションは、2021年に東京本社機能をオフィス面積1,900坪弱から530坪程へと大幅な縮小移転を行った。
ICT化を進めた新オフィスでは、リモートワークと出社のハイブリッドワークを前提したフリーアドレス制を採用。それぞれのメリットを活かせる業務設計やルールをマニュアル化し、「労働生産性の向上」と「従業員エンゲージメントの向上」の同時実現を目指している。
オフィスのICT活用はJLLへ
ハイブリッドワークが一般化した現代において、オフィスICTは、生産性やコスト効率、社員のエンゲージメントまでも左右する重要な経営戦略の1つとなった。しかし導入にあたっては自社の課題を正確に把握し数多くの選択肢から最適なソリューションを選び出す戦略的な視点と、ツール選定や費用対効果の見極めといった知見が必要だ。
JLLは、ワークプレイス戦略とテクノロジーに関するグローバルな知見を融合させ、企業のオフィスICT活用を包括的に支援する。現状の課題分析からデータに基づいた戦略策定、実行、そして効果測定に至るまでをワンストップで提供し、ICT投資の効果を最大化する。
「何から着手すべきかわからない」、「自社に最適なICT戦略を知りたい」といった課題をお持ちの企業は、ぜひ一度JLLにご相談いただきたい。