オフィス緑化とは?企業が導入するメリット・設計手法・最新トレンド
オフィス緑化とは?ウェルネスオフィスとの関係性
オフィス緑化とは、職場に植物をはじめとする自然の要素を取り入れオフィス内の質を向上させる取り組みである。具体的な施策は多岐にわたる。簡単なものから大規模な改修工事が必要なものまで、さまざまなオフィス緑化の手法が存在する。
観葉植物(屋内緑化)
グリーンウォール(壁面緑化)
グリーンカーテン
フェイクグリーン(人工植物)
緑ゆたかな周辺環境
緑を身近に感じられる環境は、心理的にも物理的にも働く人々に好影響をもたらすことが農林水産省をはじめ、多くの研究で明らかになっている。オフィス緑化によって従業員の生産性や満足度の向上が期待できる。
オフィス緑化が注目される背景
健康経営を実現するためには、それに対応した心と体の健康を高められるオフィス環境…つまりウェルネスオフィスの構築が不可欠
近年、国の推進する働き方改革のなかでも重要視されている「健康経営」は、従業員の総合的な健康管理を経営視点で戦略的に取り組んでいく手法である。
健康経営を実現するためには、それに対応した心と体の健康を維持できるオフィス環境…つまりウェルネスオフィスの構築が不可欠となる。
具体的なウェルネスオフィス構築の施策には、場所や時間を選んで働けるABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の導入、軽い運動やリフレッシュできる休憩スペースの設置、従業員同士のコミュニケーションを活性化するコミュニティスペースの設置などが挙げられる。なかでも従業員のウェルネスを向上させるオフィスデザイン改善の一環である「オフィス緑化」は実行しやすい手法として注目されている。
オフィス緑化の種類
働く環境に緑や自然を取り入れるには、以下のような多様な手法が挙げられる。
観葉植物(屋内緑化):デスク上、共有スペース、会議室などに観葉植物を設置
グリーンウォール(壁面緑化):壁面を利用して植物を垂直に配する
グリーンカーテン:窓周辺につる性の植物を成長させ、夏の直射日光を遮る
フェイクグリーン(人工植物):模造の植物を配置し、視覚的に緑を感じられるようにする
緑ゆたかな周辺環境:大きな公園や森など緑が望める環境にオフィスを構える
バイオフィリックデザインとは?
バイオフィリックデザインとは、「人間は本能的に自然とのつながりを求める」という「バイオフィリア仮説」に基づいた空間設計の手法だ。単に植物を配置するだけでなく、自然光の活用、木材や石などの自然素材の利用、川のせせらぎのような環境音、アースカラーの採用など、五感を通じて自然を感じられる環境構築を指す。
無機質になりがちなオフィスにこの概念を取り入れることで、従業員のストレス軽減や安心感の醸成、幸福度(ウェルビーイング)の向上が期待できる。さらに、リラックスした状態は集中力や創造性を高め、企業の生産性向上にも寄与することから、現代のオフィス構築において欠かせないキーワードとなっている。
オフィス緑化の9つのメリット
オフィス緑化のメリットは数多い。主なものを紹介する。
ストレスや目の疲労の軽減
自然を感じられる要素をオフィスの内装やインテリアに取り入れる「バイオフィリックデザイン」が近年注目されている。
花やグリーンのある室内環境では、脳内のα波が増幅し、仕事中のストレス状態緩和やリラックス効果をもたらす。パソコン作業の後に植物を見ると視覚疲労が軽減するなど、オフィス緑化の効果についての研究報告も豊富だ。
生産性の向上
植物のあるオフィス環境では集中力や生産性が向上するなどの報告も複数見られる。
加湿・空気清浄効果
多くの観葉植物には、葉からの水分蒸散作用でオフィスの乾燥をやわらげる効果がある。また一部の化学物質を吸収し、天然の空気清浄機のような役割を果たすことも報告されている。
パーティションや家具の代用
オフィスの「島」のあいだ、あるいは来客スペースと執務スペースの間に観葉植物などを配置することで、圧迫感をあたえず自然なパーティション効果が得られる。また休憩スペースにカーペットのかわりに人工芝を敷くなど、一般的なオフィス家具とフェイクグリーンを置き換えることで視覚的なリラックス効果が期待できる。
組織文化の改善
オフィス緑化は、組織の風土改革にも好影響を与える。植物の手入れを社員同士で協力して行ったり成長を話題にしたりすることで共通の関心が生まれ、縦割り組織に横のつながりを生むきっかけとなる。
また、緑に囲まれた柔らかな雰囲気が心理的安全性を高め、自由な発想や活発な意見交換を許容するオープンな組織文化の醸成に寄与する。
ESGへの貢献
オフィス緑化は、ESG経営の具体的なアクションとしても有効だ。植物による空気浄化や省エネ効果は「Environment(環境)」への配慮となり、従業員の健康やウェルビーイング向上は「Social(社会)」における人的資本経営の実践となる。これらを通じて企業価値を高めることは、持続可能な成長を目指す企業の姿勢をステークホルダーに示すことにつながる。
企業イメージの向上
オフィス空間に美しいグリーンを取り入れている企業は、来客者や取引先に好印象を与え、SDGs達成やオフィス環境改善に積極的に取り組んでいる企業としてブランディングイメージ向上に寄与するだろう。
人材採用や定着に寄与
働きやすい環境への投資は、従業員エンゲージメントを高め、離職率の低下(リテンション)に直結する。また、バイオフィリックデザインを取り入れた快適なオフィスは、ワークライフバランスや企業の環境への姿勢を重視する若手優秀層(Z世代など)の採用において、大きな差別化要因となるだろう。
コミュニケーションの活性化
オフィス緑化によって従業員がリラックスした状態を保つことができれば、休憩時にも自然に会話を楽しみ社内のコミュニケーションが活性化することが期待できる。
オフィス緑化を成功させるポイント
グリーンを導入することがゴールになるのではなく、従業員のウェルネス向上を最終目的とし、全体像を見据えたオフィス戦略が必要
企業が自社オフィスの緑化に取り組む際は、以下の5つのポイントをおさえておきたい。
予算と期間を決めておく
社内担当者または外部委託で責任者を置く
動線を妨げないレイアウトにする
管理のしやすさを考える
従業員のウェルネス向上をゴールに設定する
予算と期間を決めておく
まずは初期費用と年間のコストを算出し、いつまでに導入を完了するのか計画立案する。
社内担当者または外部委託で責任者を置く
計画立案・発注手配・トラブル時の対応などを統括する責任者を決めておくと運用がスムーズだ。社内でリソースや知見が不足する場合は外部に委託する。
動線を妨げないレイアウトにする
オフィスグリーンにはさまざまなメリットがあるとはいえ、業務の妨げになっては本末転倒だ。移動や会話の邪魔にならないレイアウトを考えよう。オフィススペースが限られている場合、床に置くのではなく天井から鉢を吊したり、壁面にグリーンウォールを設置するといった方法もある。
管理のしやすさを考える
天然の植物は日々の手入れが必要なため、できるだけ管理しやすい種類を選びたい。葉が落ちにくく、直射日光を浴びなくても成長するもの、週末に水やりができなくても枯れないものがおすすめだ。
従業員のウェルネス向上をゴールに設定する
オフィス緑化の最大の目的は、そこで働く人々の心身の健康を高めることだ。グリーンを導入することがゴールになるのではなく、従業員のウェルネス向上を最終目的とし、全体像を見据えたオフィス戦略が必要である。
オフィス緑化導入時の注意点
オフィス緑化の手法のうち、オフィス内に本物の植物を設置する場合は、水やりや肥料、剪定、落ち葉の清掃などを怠ると、植物が枯れて景観を損なうだけでなく、虫やカビが発生し衛生環境や企業イメージを悪化させるリスクがあるため、日々のメンテナンスが不可欠となる。
そのため、導入時には誰が管理するのかを明確にしなければならない。従業員で分担する場合は通常業務の妨げや負担となるため注意が必要だ。専門業者にメンテナンスを委託(レンタル・リース)すれば管理の手間は大幅に省けるが、毎月のランニングコストが発生する。予算や人員のリソースに限度がある場合は、手入れ不要でコストを抑えられるフェイクグリーン(人工植物)の併用も現実的な選択肢として検討するとよいだろう。
オフィス緑化の手順
オフィス緑化は、以下のような手順で進める。
1. 目的と予算を定める
2. オフィスのスペースや環境・日照条件等を把握し適切な植物を選定する
3. 従業員の視線や移動経路を考慮しながら、配置を決める
4. 水やりや植物の手入れのスケジュールを策定する
5. 季節や環境の変化に応じて必要に応じて植物の入れ替えや追加も考慮する
具体的なポイントもう少し詳しく解説する。
オフィス緑化の目的例
オフィス緑化の軸となる目的が明確であれば、予算配分やデザインの方向性も定まりやすくなる。例えば「従業員のストレス軽減」ならリフレッシュエリアへの集中配置、「コミュニケーション活性化」ならマグネットスペースへの設置が効果的だ。「企業ブランディング」を目的にエントランスを緑化し、来客へ環境配慮の姿勢をアピールする選択肢もある。
具体的なオフィスグリーンの取り入れ方
オフィスグリーンは、ポピュラーな鉢植えを置く形のほかにも、さまざまな形で取り入れることができる。
ハンギングポットなどを使い、上から吊るす
壁にグリーンウォールを設置する
パーティションに取り付ける
棚の上や中に置く
床に人工芝を敷く
季節や環境の変化に合わせた変更例
生きた植物を置く場合、夏にはエアコンの風が直接当たる場所や、冬場の外気が当たる位置からは移動させるなどの季節に応じた対処が求められる。また成長してバランスが悪くなった植物の剪定や植え替えも必要だ。春には明るい色の花、冬には針葉樹など、季節感のある植物に入れ替えることで、オフィスの雰囲気を一新し、従業員の気分転換やブランディングを図ることもできる。
これらを自社で行うのが難しい場合は、管理の一部あるいは全てを外部の専門業者に委託する方法もある。
オフィス緑化とあわせて検討したいオフィスデザイン
オフィスの緑化は、それ単体ではなく、従業員の健康に寄与するオフィス・ワークプレイス改革の一部としてとらえる必要がある
オフィス緑化は、それ単体ではなく、従業員の健康に寄与するオフィス・ワークプレイス改革の一部としてとらえる必要がある。
例えば以下のような施策を並行して実施することで快適なオフィスが実現し、従業員のパフォーマンスはより強く発揮されるだろう。
眺望と採光性…明るく採光性の高い大きな窓と、直接日光がデスクに当たらないような配置やパーティションの設置、スマートガラスの採用など
身体を動かせる設備…小型のフィットネスマシン、スタンディングデスク、卓球台など
休憩エリア…リフレッシュできるソファやコーヒーマシン、1人になれるスペースなど
色彩効果…コラボレーションの必要なエリアは鮮やかで明るいピンクやイエローなど、集中が必要なスペースでは落ち着いた青やグリーンなどを使った内装
フレキシブルスペース…その日の業務や体調に合わせて、執務環境が選べるシステム
オフィス緑化と従業員のウェルビーイングを意識した企業の取り組み事例
従業員の心身の健康を高める「健康経営」を意識し、オフィス緑化を含めたワークプレイス改革に成功した企業を紹介する。
オフィス移転でウェルネスオフィスの実現へ「京都電子計算」
2022年に本社オフィスを移転し、テレワークとオフィスワークを組み合わせたハイブリッドな働き方を開始した京都電子計算。
フロアごとにテーマを設け、たとえば4階はゆとりある執務スペースで開発に集中、5階は本格的なカフェを備えたオープンスペースと社内用ミーティングルーム、屋外キャンプをイメージした打ち合わせスペースなどを設置。いずれもオフィスグリーンを取り入れ、より快適なオフィスを構築することで、移転前の課題であった「労働環境の改善」を実現した。
オフィスの木質化がもたらす快適空間「エヌ・シー・エヌ(NCN)」
木造建築の耐震化促進事業を展開するNCNは2022年12月、東京・品川から赤坂見附へ本社オフィスを移転した。新オフィスの最大の特徴の1つが、「木質化」による環境配慮と居住快適性を両立した点だ。「ヤグラ」と名付けた同社の木質空間創造ツールには、吊り下げタイプのグリーンを設置し、あたたかみのある空間を作った。
木質素材でゆるやかにゾーニングされたオフィスは、梁に植物を吊るすことでヒトの視線が変わり、空間全体が広く感じられるようになったという。
ウェルネスオフィスを体現したJLLの東京・大阪新オフィス
2022年に移転したJLLの東京および大阪の新オフィスは、5つのコンセプトをベースに、サステナビリティやウェルビーイングに配慮したワークプレイスを体現し、2023年グッドデザイン賞や第36回日経ニューオフィス賞のクリエイティブ・オフィス賞(東京)、および奨励賞(大阪)を受賞している。
東京オフィスのエントランスには、ひときわ印象的な天井から垂れ下がるようなグリーンを配置、大阪オフィスのカフェスペースでは目の高さに広がる観葉植物のパーティションがリラックス効果や目の疲れを癒す効果を高めている。
オフィスの緑化は、それ単体ではなく、従業員の健康に寄与するオフィス・ワークプレイス改革の一部としてとらえる必要がある
JLLのオフィス緑化・ウェルビーイング向上戦略サポート
オフィス緑化は、近年各企業が重視している健康経営の一環としてさまざまな効果が期待できる。
しかし、オフィス緑化はあくまでも1つの手段であり、緑化以外の施策も組み合わせて総合的に従業員の心身の健康に寄与するオフィスデザイン戦略が必要だ。
最適なワークプレイス戦略を立てるには、数多くのオフィス構築のサポートを手がけてきた専門家やコンサルのサポートを受けることも一考に値する。オフィス緑化をはじめとしたウェルネスオフィスが最短距離で実現するだろう。