社内コミュニケーションを活性化させるオフィス空間デザインと施策アイデア
社内コミュニケーションが低下する原因
社内のコミュニケーション低下にはいくつかの要因があり、複数が組み合わさったケースではよりコミュニケーション不足が深刻になり、生産性や業績の悪化、離職などの弊害が起きやすくなるおそれがある。以下に主な原因を解説する。
リモートワークの拡大
リモートワークやハイブリッドワークが普及したことで オフィスでの偶発的な雑談や立ち話といったインフォーマルなコミュニケーションの機会が減少した。
オンラインのコミュケーションでは業務連絡中心のやり取りに偏りがちで、いわゆる世間話から生まれるアイデアや、他部署の状況を把握する機会などが失われる。表情や身振りといった視覚的な情報が伝わりにくいことも、意思疎通の齟齬を生む一因といえる。
部署間の分断・縦割り
組織体制が事業・機能ごとに縦割りになっていると、部署間の情報共有が不足し、連携が阻害される「サイロ化」が起こりやすい。このような状況下では、各社員は他部署がどのような業務を行っているのか関心が薄れ、組織としての一体感が失われやすくなる。結果として、部署間で重複した作業が発生するなどの業務効率が悪化し、部門を超えた協業やイノベーションが生まれにくくなりかねない
心理的安全性の欠如
「反対意見を言うと人間関係が悪化する」、「こんな質問をしたら能力が低いと思われる」といった不安を感じる職場では、社員は発言をためらうようになる。このような「心理的安全性」が欠如した職場では建設的な議論が生まれず、問題の報告も遅れがちになる。
コミュニケーションツール過多
情報共有を促すために導入したはずのビジネスチャットや社内SNSが乱立し、かえってコミュニケーションを阻害するケースがある。どのツールで何の情報を確認すればよいか分からなくなり、重要な連絡が大量の通知に埋もれてしまったり、内容確認が追いつかず返信が滞ったりと、逆効果になる可能性がある。
社内コミュニケーション活性化が企業にもたらすメリット
社内のコミュニケーションが活発な職場では、以下のようなさまざまなプラス効果が期待できる。
業務効率化とヒューマンエラー防止
部署内外での情報共有が円滑に行われることで、業務の目的や背景への理解が深まり、手戻りや重複作業が減少する。相談しやすい雰囲気は疑問点や問題点の早期発見・解決につながり、大きなヒューマンエラーを未然に防ぐ効果もある。結果として、組織全体の生産性向上が期待できるだろう。
エンゲージメント向上と離職率の低下
社員同士の良好な関係性は、職場への帰属意識や仕事への熱意(エンゲージメント)を高める重要な要素である。自身の意見が尊重され、チームに貢献できているという実感は、働く上での満足感を醸成する。このような環境が人材の定着や離職率の低下に大きく貢献する。
ナレッジ共有が生むイノベーション促進
部署や役職の垣根を越えた対話は、社員それぞれが持つ知識や経験・アイデアの交換を促し、多様な知見が組み合わさることで、既存のやり方にとらわれない新しい発想が生まれやすくなる。
部門を横断した知見やデータなどのナレッジ共有は、新たな商品やサービスの開発・業務改善のイノベーションの土壌となる。
心理的安全性の確立によるチームの成長
活発なコミュニケーションは「安心して自分の意見を言える」という心理的安全性を組織にもたらし、社員は失敗を恐れずに意見を述べるなど、常に挑戦できる環境を維持できる。
顧客満足度や業績の向上
社内の情報連携がスムーズになることで、部署間で協力して顧客対応にあたるなど、サービスの質やスピードが向上する。社員のエンゲージメントが高まれば、一人ひとりのパフォーマンスも向上し、組織全体の生産性が高まる。こうした好循環は、最終的に顧客満足度の向上や企業業績の向上に大きく貢献する。
社内コミュニケーションの活性化は、業務効率やエンゲージメント、イノベーション創出など多方面に好影響を及ぼす
オフィス空間デザインによる社内コミュニケーション活性化のアイデア
社内コミュニケーションを自然に活性化させるためには、オフィス空間設計の工夫が非常に効果的だ。
部署間の接点を増やすオフィスレイアウト
従来の固定席を廃止し、社員がその日の気分や業務内容に応じて自由に席を選ぶフリーアドレス制は、部署の垣根を越えた偶発的なコミュニケーションを誘発する。
さらに業務内容に合わせて最適な場所を選んで働くABW(Activity Based Working)を導入し、協業のためのプロジェクトルームやアイデア出しに使えるスペースを設けることで、部門を横断した自然な交流とコラボレーションが生まれやすくなる。
適切なゾーニング
オフィス内を機能ごとに明確にゾーニングすることも重要である。
活発な議論やブレインストーミングを歓迎するオープンな「コラボレーションエリア」と、静かに集中して作業するための「執務エリア」を分けることで、社員は周囲に気兼ねなく対話できるようになる。この「動」と「静」のメリハリがコミュニケーションと個々の業務の質を両立させ、生産性の向上にもつながるだろう。
多目的スペースの設置
執務エリアとは別に、カフェやリフレッシュルーム、休憩スペースといった多目的なスペースを設けることは、社員の交流を促す強力な施策となる。
コーヒーを淹れる、ランチをとるといった業務外の行動の中では、リラックスした雰囲気でこそ雑談が生まれ、部署を超えた人間関係を育む。こういった人を惹きつける「マグネットスペース」は、新たなアイデアや協力関係が生まれる土壌となる。
個性的な内装デザイン
オフィス空間にアート作品を取り入れたり、自然を感じながら働くことができるアウトドアオフィスを設置したりすることも有効だ。
オフィスアートは社員の創造性を刺激するだけでなく、作品をきっかけとした自然な会話を生み出す。また、植物の緑や自然光を感じられる開放的な空間は、心身のリフレッシュを促し、リラックスした雰囲気での円滑なコミュニケーションを後押しする。
声がけによってコミュニケーションを促すには大きな労力が伴うが、コミュニケーションを生む仕掛けのオフィス空間なら、いつでも自然に交流が生まれやすい
ツール導入やイベント実施による社内コミュニケーション活性化のアイデア
オフィス空間設計によるコミュニケーション活性化はどんな時も効果を発揮するため、もっとも勧められる方法だが、以下のような施策をスポットで組み合わせることでさらなる効果が期待できる。
社内SNS・ビジネスチャットの最適化
社内のコミュニケーションツールがない、あるいは複数導入したものの運用がうまくできていない…といったケースでは、適切なツールを選定・導入した上で、情報共有のルールを明確化することが重要だ。
業務連絡用と雑談用などチャンネルを目的別に分け、誰もが気軽に発信できる雰囲気を作ることで、ツールの形骸化を防ぐ。各社員のプロフィールを充実させ、互いの担当業務や得意分野・人となりが分かるようにするのも有効な手法である。
社内イベントの実施
ランチ会や部活動支援、社内表彰式といったイベントは、部署や役職を超えた交流の機会を創出する。オンラインでのテーマを決めた交流会や趣味のサークル活動なども有効だ。普段の業務では接点のない社員同士が顔を合わせることで、一体感が醸成され、業務上の連携もスムーズになることが期待できる。
1on1ミーティングやエンゲージメント向上研修の実施
上司と部下が定期的に行う1on1ミーティングは、縦のコミュニケーションを強化し、個々の社員の悩みやキャリアプランを共有する良い機会となる。また管理職向けのコミュニケーション研修を実施し、傾聴力やフィードバックのスキルを向上させることも、心理的安全性の高いチーム作りには不可欠だ。
社内コミュニケーションを活性化させた企業の成功事例
エイコー
IT機器の導入支援はじめ、オフィス環境に関する多様なソリューションを提供しているエイコーは、2022年に東京本社オフィスを移転。「Fo-me」と命名された新オフィスでは、コミュニケーション活性化に重きを置いたフリーアドレスを採用し、理想とする8つのワークスタイルの実践を目指した。
8つのワークスタイル目標の中でも「コミュニケーション」には特に重点を置き、広大なカフェスペースや事務機器を集めたコミュニケーションエリアなどを配置。
移転後、社員対象のアンケートには「気軽にコミュニケーションが取れている」「会話によって仕事以外のつながりができ、社員同士の距離が縮まっている」などの好意的な声が多く寄せられた。
資生堂ジャパン
資生堂グループは、地方営業所のリニューアルに続いて資生堂ジャパンのオフィス移転プロジェクトを実施。
複数の営業拠点が点在していることでコミュニケーションがタイムリーに取りにくい、自社ブランドへの理解不足などの課題を解決し、新オフィスは2020年度日経ニューオフィス賞 ニューオフィス推進賞を受賞した。
執務フロアは、ブランドビジネスを意識しつつコミュニケーションが活性化されるレイアウトとし、各フロアにフレキシブルに利用できるオープンエリアやミーティングスペースを多く開設。それらを通路で結び、周辺に多種多様な執務席を配した。これにより必要な時に簡単にコミュニケーションが取れ、集中したい時に集団から離れられる「離合集散」を体現した。
社内コミュニケーションが活性化するオフィスプランニングはJLLへ
社内コミュニケーションの低下・希薄化は、企業の生産性やイノベーションを阻害する深刻な経営課題の1つである。この課題を解決する方法として、人が自然と集い偶発的な交流が生まれるオフィス環境を構築することは、コミュニケーションを根本から活性化させる持続的な施策として極めて有効だ。
JLLは、オフィス戦略のプロフェッショナルとして、豊富な知見とデータに基づき、企業の課題やビジョンに合わせた空間デザインを提案する。ABWや効果的なゾーニング・社員の交流を促すコラボレーションスペースの設計など、自社に最適なオフィス戦略についてぜひ相談してほしい。
社内コミュニケーションを活性化させるオフィスについてJLLに相談する