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サテライトオフィスとは?テレワーク/リモートワーク、シェアオフィスとの違い

サテライトオフィスの定義と基本概念


サテライトオフィスという言葉は、「衛星(サテライト)」が地球の周りを回るように、本社を中心として離れた場所に設置されるオフィスを意味している。

サテライトオフィスには、小規模オフィスを自社保有または賃貸するケースと、共用施設を利用するケースがある。従前から存在した概念だが、近年のテクノロジーの発展で、クラウドサービスやウェブ会議システムなどを活用したより効率的な運用が可能となり、共用サテライトオフィス運営に参入する企業も増えている。

サテライトオフィス・テレワーク/リモートワーク・シェアオフィスの違い


働き方の多様化に伴い、「サテライトオフィス」、「テレワーク」、「シェアオフィス」といった言葉がよく使われるようになった。これらの言葉は似ているようで明確な違いがある。

オフィス勤務形態の比較表
項目 サテライトオフィス テレワーク シェアオフィス
定義 企業が本社や支社・支店以外の場所に設置・契約するオフィス 自宅やカフェなど、オフィス以外の場所で働く形態 複数の企業や個人が共用するオフィススペース
管理主体 自社または施設運営事業者 個人または自社 シェアオフィス運営事業者
メリット 勤務地と居住地の近接、地方拠点としての機能 場所を選ばない柔軟性、通勤コスト削減 初期コスト削減、柔軟な契約形態
デメリット 初期投資・固定費が必要、稼働率の管理 セキュリティリスク、孤独感・疎外感 プライバシー・セキュリティの懸念

サテライトオフィスの最大の特徴は、企業が執務環境を提供するという点だろう。テレワークが個人の責任で働く場所を確保するのに対し、サテライトオフィスは企業が場所を指定し、費用を負担する。


3つのサテライトオフィス活用パターン


リモートワークなど柔軟な働き方が定着した現在では、特に以下の3つのサテライトオフィス活用パターンが注目されている。

① 郊外型(通勤負担軽減)

首都圏や大都市圏の郊外に位置するタイプのサテライトオフィスで、社員の居住地に近い場所に拠点を設けることで、通勤時間や通勤ストレスの大幅な削減を実現する。

都心部の高額な賃料を避けられるコスト面でのメリットもあり、都市一極集中型から分散型へのシフトを目指す企業に適している。例えば、東京23区内の企業が多摩地域や神奈川県、埼玉県、千葉県などの郊外にあるサテライトオフィスを利用するケースが見られるようになってきた。

② 地方拠点型(地方への事業展開・人材採用)

地方都市に設置するタイプのサテライトオフィスで、現地の営業拠点や、地方出身者のUターン希望への対応、地方の優秀な人材獲得などの目的がある。

地方自治体による誘致施策や補助金を活用できるケースも多く、企業の社会的責任(CSR)の観点からも評価される。地元大学との連携による産学協力や、地域活性化への貢献など、多角的なメリットが期待できる。

③ 商業施設内型(利便性重視)

商業施設や駅直結の複合施設内に設置するタイプのサテライトオフィスである。社員の利便性を重視し、買い物や食事、各種サービスへのアクセスが容易な環境を提供する。

施設内の飲食店や商業施設の利用による社員満足度向上に加え、施設運営事業者が提供するセキュリティや各種サービスを活用できる点もメリットだ。これらのパターンは、企業の業種や規模、社員の居住分布、事業戦略などによって最適な選択が異なる。自社にとって最適なパターンを見極めることが、サテライトオフィス戦略成功の鍵となる。

企業の拠点戦略において、サテライトオフィスは単なる「分室」ではなく、ビジネス上の課題を解決する戦略的な拠点として位置づけられている

サテライトオフィス導入で実現する5つの企業メリット

サテライトオフィスの風景

サテライトオフィスの導入は、企業にとって、コスト面だけでなく、人材活用やBCP対策、地域への貢献など幅広いメリットが期待できる。

オフィスコスト最適化


立地によるオフィス賃料の差は無視できない
。例えば、東京都心部の平均オフィス賃料が月額坪当り3-4万円となるなか、郊外では坪当り1万円台、地方都市ではさらに安価な物件も多く存在する。

都心のオフィスを縮小し、一部を郊外のサテライトオフィス活用に振り替えることで、大きくコストを削減できる可能性がある。

優秀な人材確保と採用エリア拡大の効果


サテライトオフィスの設置は、人材採用・確保の面で大きなアドバンテージをもたらす。通勤可能エリアの拡大により、採用候補者の母集団を大幅に増やすことができるからだ。

従来、企業が採用活動を行う際の大きな制約の一つが「通勤圏」だった。多くの人は1時間以内の通勤を希望するため、オフィスが都心部のみにある場合、実質的な採用エリアは限定される。しかし、郊外や地方にサテライトオフィスを設置することで、そのエリアに住む優秀な人材も採用できるようになる。

また、地方拠点型のサテライトオフィスは、Uターン・Iターン希望者の採用にも効果的だ。地元で働きたいと考える地方出身者や、都会の喧騒を離れて自然豊かな環境で働きたいと考える人材を惹きつけることができる。地方大学の新卒採用においても、地元企業と差別化できる要素となる。

人材採用市場での競争が激化する中、サテライトオフィス戦略は企業の採用力強化につながる重要な差別化要因となりうる。

BCP対策としてのリスク分散効果


災害大国である日本において、事業継続計画(BCP)は企業経営の重要課題だ。サテライトオフィスの導入は、自然災害やパンデミックなどの緊急事態におけるリスク分散策として極めて有効である。

東日本大震災やコロナ禍の経験から、オフィス機能の一極集中がビジネス継続性に大きなリスクをもたらすことが明らかになった。例えば、本社が被災した場合や感染症の流行によって特定のオフィスが使用できなくなった場合でも、地理的に分散したサテライトオフィスがあれば、事業継続が可能になる。

具体的には、重要業務の分散配置、データのバックアップ体制の強化、本社機能の代替拠点の確保などが実現する。災害時には社員の安全確保と事業継続の両立が求められるが、サテライトオフィスがあれば社員の移動負担を軽減しながら業務を継続できる。また、感染症対策としても効果を発揮する。大規模オフィスでの密集を避け、小規模な拠点に分散することで、感染リスクの低減と事業継続の両立が可能になる。コロナ禍においては、この分散型オフィス戦略を取り入れていた企業が、比較的スムーズに事業継続を実現できた。

BCP対策としてのサテライトオフィス戦略は、単なるコスト削減策ではなく、企業の持続可能性を高めるための投資として捉えるべきだろう。

生産性向上とイノベーション創出への貢献


サテライトオフィスは、社員の生産性向上とイノベーション創出に寄与する。環境の変化がもたらす創造性の刺激と、業務特性に適した場所選択が可能になることがその理由だ。

人間の脳は、異なる環境に身を置くことで刺激を受け、新たな発想が生まれやすくなる。本社とサテライトオフィスを行き来することで環境が変化し、思考のパターンが柔軟になることが心理学研究でも示されている。また、通勤時間の短縮により、社員の疲労が軽減され、集中力や創造性が高まるという効果も期待できる。

さらに、業務特性に合わせた場所選択が可能になることも、生産性向上につながる。例えば、集中作業が必要な際は静かな環境のサテライトオフィスを、チームでのディスカッションが必要な際は本社の協働スペースを活用するなど、タスクに合わせた最適な環境を選ぶことができる。これはActivity Based Working(ABW)の考え方とも一致しており、働く「場所」と「内容」の最適な組み合わせを実現する。

生産性向上とイノベーション創出は、長期的な企業競争力を左右する重要な要素だ。サテライトオフィス戦略は、ただ働く場所を分散するだけでなく、知的創造の基盤を強化する取り組みとして位置づけるべきである。

経営戦略としての地方創生・SDGs貢献


現代の企業経営においては、収益性だけでなく社会的責任(CSR)や環境・社会・ガバナンス(ESG)への取り組みが重視されている。サテライトオフィスの導入は、これらの観点からも大きな価値を持つ。

地方創生への貢献は、サテライトオフィスがもたらす社会的価値の一つだ。地方に拠点を設けることで、雇用創出や地域経済の活性化に貢献する。さらに、地元大学との産学連携や地域コミュニティとの協働により、地域の持続可能な発展を支援することができる。これは「誰一人取り残さない」というSDGsの理念にも合致している。

また、環境面での貢献も見逃せない。社員の通勤距離短縮によるCO2排出量の削減は、企業の環境負荷低減に直接つながる。

これらの取り組みは、ESG投資の評価指標としても注目されている。投資家が企業評価を行う際、将来的なリスク低減や持続可能性の観点から、分散型オフィス戦略を含む先進的な働き方改革を高く評価する傾向がある。実際に、ESG評価の高い企業は資金調達においても有利になることが多く、経営戦略としての重要性が高まっている。

サテライトオフィス戦略を通じた社会・環境への貢献は、企業価値向上と社会課題解決の両立を実現する優れたアプローチと言えるだろう。

社員の満足度向上につながるサテライトオフィスの4つの効果

サテライトオフィスで働く社員

一方、社員の立場からも、サテライトオフィスの導入で得るメリットは数多い。


通勤時間・通勤ストレスの大幅削減


サテライトオフィス導入による最も直接的かつ大きな効果の一つが、社員の通勤時間とそれに伴うストレスの削減だ。特に大都市圏では、長時間の通勤が社員の身体的・精神的健康に大きな負担となっている。

日本の大都市圏における平均通勤時間は片道約50分と言われており、往復で1日100分、年間で約416時間もの時間が通勤に費やされていると試算できる※1。

サテライトオフィスの導入により、この時間を大幅に削減できる可能性がある。例えば、通勤時間が半分になれば、年間208時間もの自由時間が生まれることになる。

通勤時間の削減は、単に時間的なメリットだけでなく、多面的な効果をもたらす。まず、経済的負担の軽減が挙げられる。通勤費の削減は社員の実質的な収入増加につながる。また、長時間通勤によるストレスや疲労の軽減は、心身の健康維持に貢献する。実際、長時間通勤と心臓疾患や睡眠障害、うつ症状などの健康リスクとの関連性を示す研究結果も多く報告されている。

さらに、満員電車でのストレスから解放されることで、朝から活力を持って仕事に取り組めるようになる。これは生産性向上にも直結する重要な要素だ。通勤時間の削減により生まれた時間を睡眠や家族との時間、自己研鑽などに充てることで、ワークライフバランスの大幅な改善が期待できる。

通勤負担の軽減は、社員満足度向上の即効性のある施策として、多くの企業がサテライトオフィス導入を検討する主要な理由となっている。

ワークライフバランスの実現と生活満足度向上


サテライトオフィスがもたらす通勤時間の削減は、社員のワークライフバランスを大きく改善する。

通勤時間の削減で生まれた自由時間は、多様な形で活用される。例えば、朝の余裕時間を使って家族と一緒に朝食を取る、子どもの送り迎えをする、軽い運動をするなど、一日のスタートを充実させることができる。帰宅後も、家族との団らん、趣味活動、自己啓発など、より充実した時間の使い方が可能になる。

また、職住近接によって得られる「時間的なゆとり」は、精神的なゆとりをもたらす。急いで出勤する必要がなくなり、天候や交通機関の乱れに対する不安も軽減される。これにより、仕事へのストレスが軽減され、メンタルヘルスの改善にもつながる。

さらに、ワークとライフの好循環も期待できる。プライベートの充実が心の余裕を生み、それが仕事のパフォーマンス向上につながる。また、仕事で培ったスキルや経験がプライベートライフを豊かにするという相乗効果も生まれる。

実際に、サテライトオフィスを導入した企業の社員調査では、「生活全般の満足度が向上した」という回答が多く、離職率の低下にもつながっているケースが報告されている。ワークライフバランスの改善は、社員満足度や企業への帰属意識を高める重要な要素と言えるだろう。

多様な働き方を支援する環境整備


サテライトオフィスの導入は、多様な働き方を必要とする社員をサポートする重要な環境整備となる。特に、ライフステージの変化に合わせた柔軟な働き方を求める層にとって、大きなメリットをもたらす。

育児や介護との両立を図りたい社員にとって、自宅近くのサテライトオフィスは理想的な選択肢となる。保育施設の送迎や急な呼び出しにも対応しやすく、また介護が必要な家族の近くで働くことも可能になる。これにより、キャリアを中断することなく、仕事と家庭の責任を両立させることができる

また、女性の活躍推進の観点からも重要な施策だ。出産や育児を理由にキャリアを断念せざるを得なかった女性人材が、サテライトオフィスの活用により継続的に働ける環境が整う。これは企業にとっても、貴重な人材流出を防ぐ効果的な手段となる。さらに、多様な価値観やライフスタイルを持つ社員のニーズにも応える。例えば、都会の喧騒を離れて自然豊かな環境で暮らしたい、趣味や副業と両立しやすい働き方をしたいなど、個々人の希望に合わせた働き方を可能にする。

多様な人材が活躍できる環境を整えることは、企業の持続的成長のためにも重要だ。サテライトオフィスは「多様な働き方」を掛け声だけでなく実態として支援する具体的な施策として、ダイバーシティ&インクルージョン推進の要となる。

職場環境の選択肢拡大によるエンゲージメント向上


サテライトオフィスの導入がもたらす重要な効果の一つに、社員が「働く場所を選べる」という選択肢の拡大がある。この自律性の向上は、社員エンゲージメントの向上に大きく貢献する。

心理学の研究によれば、人は自分自身で選択し決定する機会が多いほど、モチベーションや満足度が高まることが知られている。これは「自己決定理論」と呼ばれ、働き方においても同様のことが言えるだろう。本社、サテライトオフィス、自宅など、その日の業務内容や体調、スケジュールに合わせて働く場所を選択できるということは、社員に主体性と責任感をもたらす。

また、職場環境の選択肢拡大は「心理的安全性」の向上にもつながる。例えば、静かな環境で集中したい時、チームでディスカッションしたい時、通勤時間を短縮したい時など、その時々のニーズに最適な環境を選べることで、ストレスを軽減し、心理的な安心感を得られる。

さらに、場所の選択が可能になることで、結果重視の働き方が促進される。「どこで働くか」ではなく、「どれだけ成果を出すか」に評価の重点が移ることで、パフォーマンス志向の企業文化が醸成される。これは特に成果志向の高い人材のエンゲージメント向上に効果的だ。

実際、サテライトオフィスを含む柔軟な働き方を導入した企業では、社員エンゲージメントスコアの向上や、「会社のために頑張りたい」と答える社員の割合の増加が報告されている。社員が自律的に働き方を選択できる環境を整えることは、長期的な人材獲得・維持戦略の重要な要素となるだろう。

サテライトオフィスの導入は社員のワークライフバランスに大きなプラスの影響を与え、勤務先に対するエンゲージメントの向上にもつながる

サテライトオフィス導入前に確認すべき注意点

サテライトオフィスの課題について考える社員

サテライトオフィスの導入にあたっては、本社オフィスへの出勤と異なる点について把握し対策を取っておこう。


情報セキュリティ対策の重要性と具体的方法


サテライトオフィスを導入する際、最も重要な検討事項の一つが情報セキュリティ対策だ。本社から離れた場所での業務環境においても、機密情報や個人情報を適切に保護することは企業の責務である。

サテライトオフィスのセキュリティ対策は、物理的セキュリティとデジタルセキュリティの両面から考える必要がある。物理的セキュリティとしては、入退室管理システムの導入、監視カメラの設置、シュレッダーや鍵付きキャビネットの配備などが基本となる。特に不特定多数の人が出入りする商業施設内にオフィスを構える場合は、オフィススペースへの入室制限を厳格に行うことが重要だ。

デジタルセキュリティについては、VPN(仮想プライベートネットワーク)を活用した通信の暗号化、多要素認証の導入、エンドポイントセキュリティの強化が基本となる。また、クラウドサービスを利用する際には、情報の保存場所や共有設定に関するルールを明確化することも大切だ。

さらに、セキュリティポリシーの策定と社員教育も欠かせない。サテライトオフィスでの情報取り扱いルールを文書化し、定期的な研修や訓練を通じて社員の意識向上を図ることが重要だ。特に注意すべきは「シャドーIT」と呼ばれる、IT部門の管理外でアプリケーションやサービスを利用してしまうリスクだ。便利さを優先するあまり、個人的に導入したツールやサービスが情報漏洩の原因となる可能性がある。

セキュリティ対策は、ユーザーの利便性とのバランスが重要だ。過度に厳格な対策は業務効率の低下を招き、かえってルール違反を誘発する可能性がある。業務内容やデータの機密性レベルに応じた適切なセキュリティレベルを設定し、定期的に見直すことが望ましいだろう。

コミュニケーション分断を防ぐ組織マネジメント


サテライトオフィスの導入に伴う大きな課題の一つに、コミュニケーションの分断やチームの一体感の希薄化がある。物理的な距離が生じることで、情報共有の遅延や組織のサイロ化(縦割り化)が進むリスクに対応するための施策が必要だ。

まず重要なのは、意図的かつ定期的なコミュニケーション機会の創出 である。例えば、週次の全体ミーティングや部門横断のワークショップなど、対面やオンラインで顔を合わせる機会を計画的に設けることが効果的だ。特に「雑談」や「インフォーマルな会話」の機会が減少しがちなため、オンライン上の雑談スペースやバーチャルコーヒーブレイクなどカジュアルなコミュニケーションの場を意識的に作ることも大切だ。

また、情報共有のプラットフォームを整備し、誰もが必要な情報にアクセスできる環境を整えることも重要だ。社内SNSやナレッジマネジメントシステムの活用、プロジェクト管理ツールの導入などにより、情報の透明性と可視性を高めることができる。特に「暗黙知」の共有が難しくなるため、情報やノウハウを形式知化して共有する文化を醸成することが望ましいだろう。

さらに、マネジメントスタイルの適応も必要だ。分散型の働き方に適した「結果型マネジメント」への移行や、1on1ミーティングの充実によるきめ細かなコミュニケーションが効果的だ。マネージャーはチームメンバーの状況や課題を把握するために、より意識的かつ積極的にコミュニケーションを取る必要がある。

また、企業文化や帰属意識の醸成も重要な課題だ。定期的な全社イベントやチームビルディング活動、企業理念やビジョンの共有などを通じて、物理的に離れていても心理的な距離を縮める工夫が必要だ。メンバー間の信頼関係と心理的安全性が確保されていれば、物理的な距離があっても効果的な協働が可能になる。

サテライトオフィスの最適な立地と規模の選定方法

自由なスタイルで働く社員

社員の居住分布分析による最適立地の選定法 



サテライトオフィスの成否を大きく左右する要素の一つが、立地選定だ。特に通勤負担軽減を目的とする場合、社員の居住分布を詳細に分析し、最適な立地を選定することが重要になる。

まず、社員の居住地データを収集・分析することから始めよう。人事データベースの住所情報を活用し、GISツール(地理情報システム)などを用いて視覚化することで、社員の集住エリアを把握できる。その際、単純な人数だけでなく、役職や職種、勤務形態なども考慮に入れると、より精緻な分析が可能になる。

次に、分析すべき重要な指標として、「通勤時間短縮効果」が挙げられる。現在の通勤時間と候補地からの通勤時間を比較し、最も多くの社員の通勤時間を短縮できる場所を特定する。一般的には、社員の居住地の重心(中心点)付近にオフィスを設置することで、全体の通勤時間を最小化できる。

また、「アクセス性」も重要な選定基準だ。公共交通機関の利便性、特に駅からの距離や路線数、運行頻度などを考慮する。近年は、駅直結や駅徒歩5分以内の物件が特に人気が高くなっている。加えて、周辺環境として飲食店の充実度や商業施設の有無なども、社員の利便性に大きく影響する。

さらに、業務特性に応じた立地条件も考慮する必要がある。例えば、顧客訪問が頻繁に発生する業務であれば、顧客拠点との近接性や交通の利便性を重視する。一方、集中作業が主体の業務であれば、静かな環境や自然が豊かな場所も選択肢となるだろう。

選定プロセスとしては、まず複数の候補地をリストアップし、上記の指標に基づいて比較評価することが効果的だ。可能であれば、社員へのアンケートや希望調査を実施し、実際のニーズを反映させることも重要だ。最終的には、通勤時間短縮効果、アクセス性、賃料などを総合的に評価し、最適な立地を決定する。

判断に迷った時は、オフィスの立地戦略に詳しい専門家の支援を受けることも有効だ。JLLでは豊富な実績と知見に基づき、最適な立地の選定をサポートしている。

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業務特性に合わせたオフィス選択のポイント 


サテライトオフィスの選択においては、業務特性や利用目的に合わせることが重要だ。まず考慮すべきは、サテライトオフィスの主な利用目的だ。集中作業重視型、協働重視型、バランス型など、どのような働き方を支援するかによって最適なレイアウトは異なる。例えば、集中作業重視型であれば、個人ブースや静かな環境の確保を優先し、他業種との交流やイノベーションを重視するのであれば、オープンなミーティングスペースやカフェテリア的な空間を備えたサテライトオフィスが最適だ。

Activity Based Working(ABW)の考え方を取り入れ、集中ブース、少人数ミーティングスペース、電話ブース、リラックススペースなど、業務内容に応じて選択できる多様な空間があるサテライトオフィスも、社員満足度の向上に寄与する。

また、本社とのシームレスな連携を実現するためのITインフラの整備やテクノロジー導入は最優先事項と言えるだろう。高速かつ安定したインターネット接続、ビデオ会議に対応したミーティングルーム、ワイヤレス環境など、デジタルツールを活用した業務を快適に行える環境を整えることが欠かせない。

効果的なサテライトオフィス選択のためには、まずは社員の声を聞き、実際のニーズを把握することから始めよう。使う人の視点に立ったオフィス環境構築が、最終的に高い利用率と満足度をもたらす。

サテライトオフィスの導入のステップ

サテライトオフィス導入計画を立てる

サテライトオフィス導入までの一般的なロードマップを紹介する。


1. 企画・検討(2-3カ月)

2. 物件選定・契約(1-3カ月)

3. 準備・移行(1カ月)

4. 運用開始・モニタリング(継続的)

1. 企画・検討(2-3カ月)


まず、サテライトオフィス導入の目的と期待する効果を明確化する。コスト削減、社員満足度向上、BCPなど、複数の目的が考えられるが、優先順位を明確にすることが重要だ。次に、社員の居住分布分析や通勤実態調査、業務内容の分析などを通じて、自社に最適なサテライトオフィスの形態や立地を検討する。このフェーズでは、導入の目的と期待する効果を示すKPIの設定や、対象となる社員層と想定利用者数の特定、予算の立案なども行う。実施体制として、人事、総務、IT、経営企画など部門横断的なチームを構築することも成功の鍵となるだろう。

2. 物件選定・契約(1-3カ月)


要件に基づき、具体的な物件の選定と契約交渉を行う。不動産仲介会社やコンサルタントと連携し、候補物件のリストアップから内見、比較検討、契約条件の交渉までを進める。社員居住地との関係や交通アクセスなどの立地条件、セキュリティや設備、契約期間、中途解約条件などの契約条件を細かく確認することが重要だ。また周辺の飲食店や商業施設などの環境も評価のポイントとなる。

3. 準備・移行(1カ月)


サテライトオフィス決定後は、実際の運用に向けた準備を行う。運用ルールの周知、利用予約システムの構築、社員へのオリエンテーションなどを実施する。具体的には、利用ルールとガイドラインの作成・周知や、運用管理体制の確立、社員向け説明会・見学会の開催などを行う。可能であれば、本格的に移行する前にトライアル利用を実施し、問題点の洗い出しと改善を図ることが望ましいだろう。

4. 運用開始・モニタリング(継続的)


運用開始後は、利用状況のモニタリングや満足度調査などを定期的に実施し、継続的な改善を図る。設定したKPIに対する効果測定も行い、投資対効果を検証する。利用状況の定期的なモニタリングや社員満足度調査、KPIに基づく効果測定などを行い、その結果に基づいて運用ルールの見直しや設備の改善を進める。また、成功事例や効果的な活用方法を社内で共有し、さらなる活用促進を図ることも重要だ。

サテライトオフィス導入は、完了形ではなく継続的な進化を遂げるプロジェクトとして捉えることが重要だ。定期的な見直しと改善を通じて、変化するビジネス環境や社員ニーズに合わせた最適な形に発展させていくことが成功の鍵となる。

サテライトオフィス導入で実現するワークスタイル変革

サテライトオフィスは、通勤負担の軽減や優秀な人材確保、BCP対策など多面的な企業メリットと、ワークライフバランスの向上や働く場所の選択肢拡大などの社員メリットを実現する有効な戦略である。導入にあたっては、セキュリティ対策やコミュニケーション分断の防止などの課題に適切に対応することが重要だ。

JLLでは、企業のサテライトオフィスを成功に導くための包括的なコンサルティングサービスを提供している。サテライトオフィスについて検討をしている場合は、是非JLLへご相談いただきたい。

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※1:総務省:令和3年社会生活基本調査(表番号68-1)首都圏の人口集中地区/平日の通勤時間(東京:男性55分・女性36分/千葉:男性58分・女性36分/神奈川:男性57分・女性33分)と正社員比率に基づき男性2:女性1の係数を掛け、約50分(49分44秒)と試算した。