メインコンテンツにスキップ

現基準と新基準におけるSLB会計の概要比較

※以降、リース会計基準(現行のもの)を「現基準」、リース会計基準(2024年9月公表のもの)を「新基準」と記載します。

まず、現基準と新基準におけるSLB会計の概要を比較します。

新基準のSLBについては、当社見解です。

現基準・新基準比較(概略)

現基準 新基準
(1)リースの種類

ファイナンスリース(※1)とオペレーティングリース(※2)

(※1)解約不能でフルペイアウトのリース

(※2)ファイナンスリース以外のリース

借手側には区分なし(貸手には現基準と同様の区分あり)

これ以降はセールアンドリースバックで利益生じるケースを想定

(2)オペレーティングリースの場合 売買実施時に損益を一括認識し、事後のリース料は各年度の費用として処理(※2)ファイナンスリース以外のリース (借手にオペレーティングリース・ファイナンスリースの区分はない)

これ以降は現基準のファイナンスリースを想定

(3)ファイナンスリースの場合
  • 新基準においても、土地分利益は実施時に一括認識

  • 建物分利益を長期前受収益に計上する

  • 土地分のリース料を算出し、残額を建物分とする。建物分に該当するリース料総額の現在価値をリース資産/リース債務に計上する

「収益基準に関する会計基準」に従い、契約の義務が、①一定の期間にわたり充足されるものか又は➁一時点で充足されるものかを判定する
(以下、①のケース、➁のケースに分けて記載します)

① 土地相当のリースにつき、新基準に従い、使用権資産、リース負債を計上する。建物について、一定期間にわたり充足される場合は、売買が成立せず、金融取引とみなす。また、フルペイアウトの場合も同様とする

② 建物につき、一時点で充足する場合は、その時点で売買を認識し、リースについては新基準に従い、使用権資産、リース負債を計上する

(4)リースバック期間中
  • 長期前受収益をLB期間で均等償却する

  • 土地分のリース料は各年度の費用処理する

  • 建物分のリース資産をLB期間で均等償却する。リース資産はリース料総額の現在価値の減少分を減額し、当該減少額と建物分リース料の差額を利息として処理する

  • 建物分の現在価値の年度減少分と建物分リース料実額との差額を支払利息として処理する

① 土地相当のリースにつき、使用権資産、リース負債を新基準に従って償却し、金利計算も行う

② 建物につき、使用権資産、リース負債を新基準に従って償却し、金利計算も行う

(5)リースバック終了時
  • 賃貸借契約が終了し、再契約しない限り退出する

土地の賃貸借契約が終了すると共に、建物の売買契約が会計上履行される。借入金を売買代金に振替え、建物相当の損益を計上する

上記につき、解りにくい部分を以下で説明します(売買で利益が出ることを前提としています)

1. 現基準では、土地の経済的耐用年数が無限であるため、SLBの場合も土地はオペレーティングリース扱いとします。そのため、売買価格を土地分/建物分に分けて、土地分の利益は一括認識し、建物分利益は長期前受収益に計上することになります。

2. 新基準でフルペイアウトに該当する場合、法的に売買契約であって所有権が移転したとしても、会計上は建物の売買は成立したとみなさず、金銭消費貸借契約と認識します(土地は会計上も売買成立したとみなします)。したがってリースバック期間中の賃借料を、土地分、建物分に適切に振り分けて、土地分はリース料、建物分は支払利息処理をします。また、リースバック期間終了時に建物につき「契約の義務が終了した」とみなされるため、借入金返済の代わりに建物が引き渡されたと認識します。

財務シミュレーション

対象不動産等の設定は次の通りとします(前回と同じです)。下記の通り「利益が出るケース」で説明します。

①築30年のRCオフィスビルと土地(自社使用中)

②土地簿価:100億円、建物簿価:22億円

③売買価格:250億円

④リースバック条件:期間 5年/20年、年間賃料10億円(リースバック期間5年のケースでは、当該期間終了後1年間の賃借を継続し、合計20年間賃借し続けるという設定にしています)

⑥借入金利2.0%、割引率2.0%、インフレ率0%

【シミュレーション結果(概略)】

 

※C/FとP/Lは20年間の推移を示し、BSは実施時と20年経過時の数値比較とします(0年度期末日に売買実施としています)。

年度C/F(Cash Flow)

0年度 1年度 5年度 10年度 15年度 20年度 累計
5年LB 現基準 11,082 -4,282 -919 -1,150 -1,270 -394 -13,763
新基準 11,082 -4,282 -919 -1,150 -1,270 -394 -13,763
0年度 1年度 5年度 10年度 15年度 20年度 累計
20年LB 現基準 11,082 -4,282 -919 -1,150 -1,270 -394 -13,763
新基準 11,082 -4,282 -919 -1,150 -1,270 -394 -13,763

(単位:百万円)

年度P/L(Profit and Loss Statement)

0年度 1年度 5年度 10年度 15年度 20年度 累計
5年LB 現基準 12,090 -580 -919 -1,150 -1,270 -1,402 -10,061
新基準 12,090 -619 -880 -1,150 -1,270 -1,402 -10,061
0年度 1年度 5年度 10年度 15年度 20年度 累計
20年LB 現基準 4,715 -362 -648 -800 -826 -845 -10,061
新基準 -750 -688 -1,027 -1,258 -1,377 -13,491 -10,061

(単位:百万円)

実施時BS(Balance Sheet)

0年度期末BS 土地 建物 差入敷金 リース資産 合計
5年LB 現基準 0 0 1,008 0 1,008
新基準 0 0 1,008 4,842 5,850
0年度期末BS 土地 建物 差入敷金 リース資産 合計
20年LB 現基準 0 0 1,008 9,830 10,838
新基準 10,000 2,160 1,008 0 13,168

(単位:百万円)

LB終了時BS(貸借対照表)

20年度期末BS 土地 建物 差入敷金 リース資産 合計
5年LB 現基準 0 0 0 0 0
新基準 0 0 0 0 0
20年度期末BS 土地 建物 差入敷金 リース資産 合計
20年LB 現基準 0 0 0 0 0
新基準 0 0 0 0 0

【結果のみかた】

 

(1)キャッシュフローは当然のことながら、全ケースで同じとなります。

(2)損益について、累計数値は同じとなります。リースバック期間5年の場合、現基準/新基準の差異は大きくありませんが、20年の場合は現基準では当初に利益が発生するのに対し、新基準ではリースバック期間終了時に利益が発生するという大きな違いがあります。

(3)貸借対照表については、現基準では20年の場合、新基準では5年の場合にリース資産(新基準では使用権資産)が計上されます。

【シミュレーション結果】

 

リースバック期間が短期(現行のオペレーティングリースに該当)の場合、現行基準、新基準ともに「単純売却+単純リース」となり、実施時の損益は同じとなりますが、新基準では年間の使用権資産/リース債務を計上するという差異が生じます。

リースバック期間が長期(現行のファイナンスリースに該当)の場合は、前段での説明の繰り返しになりますが、現行基準では建物分利益が長期前受収益に計上されてリースバック期間中で償却されることになり、新基準では会計上は売買が成立しないこととなって大きな違いが生じます。特に新基準になると、法律上、税務上は売却したにも拘わらず、会計上はアセットライト効果が出ないことになります(実態としてはアセットライトになっています)。

SLBを検討する際のポイントの一つに「利益の一部繰り延べができる」ということがありますが、新基準になるとその「効果」がなくなってしまいます。

新基準適用前に実行したSLB取引の会計が、適用後に修正されることがない(使用権資産/リース負債の計上については適用される)ことから、タイミングを考慮に入れた選択肢を検討することを提案します。

今後SLBを検討する際にはこのようなことを認識して実施時期、リースバック期間の長短も含めた詳細な検証を行うことが重要となります。

JLLでは不動産に関する広範にわたる豊富な知識・経験はもちろん、上記のような会計的サポートも行っています。

今回のシリーズでは説明しきれなかった事項を含め、何なりとお問い合せ下さい。

※本稿で言及しているシミュレーションは一定の条件のもと行っています。また、その正確性を保証するものではありません。