【2025年】日本のホテル投資市場はさらなる飛躍を遂げる
ホテル投資額が過去最高を記録した2024年
JLL日本では2024年の国内ホテル投資市場の大躍進を予想するコラムを発表していたが、それを上回るような結果となった。
JLL日本 リサーチ事業部の調査によると、2024年における日本のホテル投資額は1兆613億円。国内投資額の19%を占め、調査を開始した2008年以降初の1兆円を突破するなど、急成長を遂げることになった。
北は北海道、南は沖縄まで全国各地でホテルの取引がみられたが、好調さの要因は大きく2点。1つは「グランドニッコー東京台場」、「ヒルトン福岡シーホーク」、「セントレジス大阪」などの大型取引が増加したこと。もう1つが宿泊特化型ホテルの取引件数の増加である。
国内ホテル投資市場は政府主導のインバウンド政策を軸とし、東京五輪に向けて宿泊需要の拡大を見込み、2019年に当時過去最高を記録。その後、新型コロナ感染症による行動制限に伴い、2020年、2021年には投資額が激減したものの、コロナ収束の兆しが見え始めた2022年から投資額は回復に転じた。2024年はアジア太平洋地域の主要市場において日本の投資額がトップとなり、2025年は前年を上回る取引額になると予測している。
2025年第1四半期にJLLが支援したホテル取引事例
中国人観光客の完全回復がホテル投資市場を下支えする
2024年のホテル投資市場が大躍進を遂げた大きな要因として挙げられるのが「訪日外国人観光客の回復」だ。2024年の訪日客数は3,690万人にのぼり、2019年に記録した3,190万人を上回った。
この勢いは2025年にも引き継がれており、2025年1-4月の訪日客数は前年同期比で24.5%増、コロナ前の2019年比で31.6%増となった。これは第1四半期ベースでの過去最高である。
訪日客の拡大を支える要因として、国内外投資家のホテル投資を数多く支援しているJLL日本 ホテルズ&ホスピタリティ事業部 マネージングディレクター ヘッド オブ インベストメントセールズ 阿部 有希夫 ジェームズは「中国人観光客の完全回復」と指摘する。
JLL日本 ホテルズ&ホスピタリティ事業部の調査では、2025年1-4月期の訪日中国人観光客数は2019年比では8%増だが、前年同期比で68%増となった。
2024年は景気低迷に加え、日中間の航空便再開の遅れや原発処理水の渡航自粛ムードも手伝い、中国人観光客の回復は大幅に遅れたものの、2025年に入り、中国人観光客の回復が目を見張るものがある。2025年の旧正月期の訪日中国人客が前年同期比で35.5%増となったことがそれを物語る(旧正月:2025年は1月29日、2024年は2月10日)。
「中国人観光客の回復を待たず、2024年の訪日客数は過去最高を記録した。訪日客数が多い上位10カ国を調査すると全体的に増加しており、これに中国の回復が加わることで、2025年は通年で4,000万人超えも期待できる」(阿部)
限定的な新規供給量
国内ホテル投資市場に追い風になるもう1つの要因は限定的な新規供給量にある。JLL日本 ホテルズ&ホスピタリティ事業部の調査では2025年4月末時点での日本のホテル新規供給量は既存ストックに対して1.5%程度。これはアジア太平洋地域の平均値である6.6%を大幅に下回っており、「目安が2%とされるなか、日本は健全なマーケット」(阿部)といえる。
新規供給が少ない最大の理由は「建築費の高騰」だ。
「過去には50-100室規模の宿泊特化型ホテルを開発すれば一定程度の収益が見込めたが、現状、建築費が高騰しており、採算が合わなくなっている。そのため、現在計画されている新規開発案件は、ADR(平均客室単価)が高く、料飲・宴会などでも収益が見込めるフルサービスホテルが中心。複合大規模施設での開業となるため、おのずと供給量が抑制される」(阿部)
建築費が高騰しているため、新規開発ではなく、既存ホテルへの投資を志向する投資家が増えており、ホテル投資市場の追い風になっている。
ホテルパフォーマンスも好調
堅調に推移するホテルパフォーマンスも投資家を惹きつける要因となっている。
日本市場における2025年1-6月期と2019年同期を比較すると、OCC(客室稼働率)はラグジュアリー、アップスケール、宿泊特化型のいずれも回復途上にあるものの、ADR(平均客室単価)はいずれも2019年比を超えている。その結果、ホテルのパフォーマンスを示す重要指標であるRevPAR(1日当り販売可能客室数当り宿泊売上)は、ラグジュアリーホテルが2019年比で15%増、宿泊特化型ホテルでは40%増となった。
画像提供:PIXTA
投資家が注目するホテルカテゴリー「アパートメントホテル」
投資対象となるホテルカテゴリーも多様化が進んでおり、ラグジュアリーやアップスケール、ミッドスケールにわかれるフルサービスホテルをはじめ、宿泊特化型ホテルもエコノミーホテルやライフスタイルホテル、サービスアパートメントなどに細分化されている。
そうしたなか、近年投資家が注目しているのが「アパートメントホテル」だという。
客室面積はおおよそ30-40㎡、キッチンや洗濯機、食事スペースなどが備えられ、ファミリーでの長期滞在に対応するレイアウトが特徴。二世帯旅行が多いとされるアジア圏の訪日客の宿泊需要に対応できる。また、ビジネスホテルに比べて客室単価が高く、平均宿泊日数が長いので清掃やリネン交換などの頻度を減らせることができる“高利益率体質”であるため、オーナー(投資家)やオペレーターにとってもメリットが大きい。
また、内装をある程度作り込む必要があるが、客室数は30-40室程度で施設規模が小ぶりなため比較的リーズナブルに開発でき、築古の中小規模ビルの建替えの選択肢にもなりえる。上場リートや私募リート、外資系ファンドなども投資し始めた。
「MIMARUやセクションLなどの有力なアパートメントホテルオペレーターが登場し、拠点数を拡大している。賃貸借契約もあるが、HMC(ホテルマネジメント契約)が主流でオーナー・オペレーター双方がアップサイドを取れるのも魅力といえる」(阿部)
今後の展望
日本のホテル投資市場の今後の行方はどうか?
大規模な紛争や大災害などの突発的なリスクがないことを前提としつつ、阿部は「ホテル投資に対してマイナス要因を探すほうが難しい状況」と指摘する。
低金利、円安傾向が当分の間継続する見通しであり、不動産投資に対して世界屈指の良好な環境が続くことが大きい。
コロナ以前にホテル投資熱が沸騰した2018年当時、売主と買主の間で価格目線に乖離があり、取引が成立しにくい時期もあったが、阿部によると「アスキング(売主の提示価格)とビッド(買主の希望価格)のバランスが取れている状況」だ。売主のほうが若干強気姿勢だが、物件取得後にバリューアップなどに競争力を高めることが可能と判断し、強気の取得金額で交渉する買主が増えているという。
「ベストプライスを引き出せる環境であるため、入札を行うと買主が10社以上集まり、アスキングよりも10%以上上回るビッドとなることも珍しくない」(阿部)
2025年は買主・売主共にメリットがある市場環境となりそうだ。
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