訪日外国人観光客が本格的に回復
コロナ禍での行動制限によって宿泊需要は激減したため、ホテル投資は冷え込んだ。しかし、2022年10月に水際対策が大幅に緩和されて以降、訪日外国人観光客数は右肩上がりで回復している。
阿部は「2023年の訪日外国人観光客数は2019年比で28%減と回復途上だが、あくまで平均値。同年12月は2019年平均をやや上回っている。航空便の回復の遅れ、訪日中国人観光客が戻らないといった“逆風”が続く中、コロナ前の水準まで回復しているのは非常にポジティブだ」と力を込める。
観光客数の増加に伴いホテルパフォーマンスも回復傾向だ。JLLが把握しているデータ※1によると、2023年の各月OCC(客室稼働率)はすべて2019年を下回っているものの、各月のADR(客室平均単価)はすべて2019年を上回った。
その結果、ホテルのパフォーマンスを測る重要指標であるRevPAR(1日当り販売可能客室数当り宿泊売上)は一部エリアを除き、2019年の水準を超えている。
ADRが2019年比を上回る
安定的な需給バランスもホテル投資市場の追い風に
JLL日本のコラム「【外資系ホテルの日本進出が加速】ホテル誘致に失敗しない『オペレーターセレクション』とは?」で触れたように、2023年以降、外資系ホテルの新規供給が目立つ。コロナ前、新規供給増となった大阪・京都ではホテルパフォーマンスが低下したが、今後の影響はどうなるのだろうか。
結論からいうと、過剰供給の心配はない。
観光庁のデータによると、2012-2023年の10年間で日本における宿泊施設の数は年平均1.3%増にとどまっており、新規供給は東京、大阪、京都、沖縄の4都市に集中している。
さらに、2023-2026年における日本のホテル新規供給は既存ストックと比較しても低水準。阿部は「良好な市場環境とホテルパフォーマンスの回復を見ると、新規プレイヤーの参入が増えることが予想されるため、今後ホテルの開発が増える可能性はあるものの非常に健全な供給環境」と評価する。
加えて、開発コストが高騰していることも、供給量の抑制に繋がり、既存ホテルのパフォーマンスへの影響は小さいと予想している。
世界的にみても数少ない低金利政策を維持する日本では、キャッシュ・オン・キャッシュ・リターン(自己資本配当率)が他国よりも圧倒的に優位な状況にあり、投資家にとっては引き続き魅力的な不動産投資市場として評価されている。阿部によると「日本を含めたアジア太平洋地域の主要投資市場を比較すると、他市場のイールドギャップはマイナスになっているが、日本は3%程度見込める。レンダーの融資姿勢も積極的であることから、投資環境は世界的にみても非常に良好」という。
日本のホテル投資市場はコロナ禍に突入した2020年以降、投資額は減少していたが、アフターコロナを迎えつつあった2022年後半頃から投資額が回復に向かう。2022年は事業会社によるホテル・ポートフォリオの大型取引があり、投資額が伸びた。2023年は300億円超の大型取引が複数あったことに加え、中型・小型の取引も活性化したバランスの取れた状況だったといえる。
「2023年6月頃からホテルのパフォーマンスが劇的に改善したため、投資家も本格的にホテル投資の再開を検討し始めた」(阿部)
JLLの2023年取引支援事例(一部)
JLLの調査では、2023年第4四半期末時点の日本の不動産投資額は6,464億円、セクター別投資割合を見るとホテルは14%となり、2022年通年の9%から大幅に拡大していることがわかる。
2024年のホテル投資市場はさらなる飛躍を遂げる
JLLが提供するホテルサービス
JLLでは、ホテルの開発検討段階から運営、売却・買収サポートまでホテル資産運用における一連のサービスをワンストップで提供しています。