【腰痛・肩こり対策】オフィス運用のプロが教える!オフィスチェアの正しい使い方・調整のための8つの手順
著者
杉本 あさ子
高価なオフィスチェアを導入したのに、なぜか体の不調が改善しない…そんな経験はありませんか?
その原因は、椅子の性能ではなく「正しい使い方」を知らないだけかもしれません。
今回は、JLLのオフィス運用専門チーム「JLL CRE Work place Japan」の責任者であり、オフィス運用のプロフェッショナルである杉本 あさ子に、オフィスチェアの効果を最大限引き出すための具体的な調整方法を徹底的に解説してもらいました。
なお、JLLオフィスでは人間工学に基づいて設計された「エルゴノミクスチェア」を主に使用しており、本稿で言及する「オフィスチェア」は基本的に「エルゴノミクスチェア」を指しています。
本稿を読めば、あなたの体にフィットした最高の執務環境を整えることができるのではないでしょうか。
JLL東京オフィスで使用しているエルゴノミクスチェアのひとつ
エルゴノミクスチェアとは?
JLLは2022年11月・12月に東京本社オフィスと関西オフィスを移転しました。執務スペースには全体的に「エルゴノミクスチェア」を採用しています。
エルゴノミクスチェアとは、人間工学(エルゴノミクス)に基づき、「座る人の不快な要素を徹底的に排除する」という思想でデザインされた高機能ワークチェアのことです。主要なオフィス家具メーカーはほぼすべてエルゴノミクスチェアを開発・販売していますが、JLLが導入したものは、体熱を逃がすメッシュ素材や背筋を自然に支える構造など、長時間快適にデスクワークするための工夫が随所に施されているのが特長です。
そんな高機能なオフィスチェアなら「何時間でも快適に座っていられる」と思いきや、実はそうでもないようで、腰痛や肩こりに悩まされるJLLの社員も一定数存在するのが現状です。
高機能なオフィスチェアでも腰痛・肩こりが改善しない3つの理由
なぜ、高機能なオフィスチェア(エルゴノミクスチェア)を使っていても腰痛や肩こりに悩まされてしまうのでしょうか?
JLL日本のオフィス運用を担当する専門チーム「JLL CRE Work place Japan」の杉本は「高機能で快適なオフィスチェアであることは間違いないのですが、正しく使っていないことが最大の原因」と指摘します。
エルゴノミクスチェアは一般的なオフィスチェアに比べてかなり高額。せっかくの投資を無駄にしないためにも、次の3つの課題をいかに解消するかが重要です。
背になるのは悪い姿勢で座る代表例。前傾姿勢は頭部の重さが体全体への負担になる
課題1:自己流の「間違った座り方」
まずは、普段どのような姿勢でオフィスチェアに座っているかを確認することから始めましょう。特に以下の5つの姿勢のうち1つでも当てはまると要注意。それらの間違った座り方が腰や肩に静かにダメージを与え続けることになります。
1. 浅く座って背もたれを使っていない
2. 気づくと猫背になっている
3. 無意識に足を組んでいる
4. モニターを見上げる姿勢になっている
5. アームレストがただの「飾り」になっている
課題2:自分の体格やデスク環境に合わせていない
エルゴノミクスチェアは非常に多機能ですが、つまり「調整しなければただの椅子に過ぎない」ということでもあります。自分に体格や目線、姿勢などに最適な状態に調整することで、初めてその真価が発揮されます。
課題3:各機能の「正しい調整位置」を知らない
エルゴノミクスチェアを見回すと様々なレバーやダイヤルを備えていることがわかります。しかし、どれが何のための機能しているのか分からない、そんな方も多いのではないでしょうか。各機能の意味と使い方を理解し、正しく調整することが重要です。
特に、移転当初は新しいオフィス環境に早期適応してもらうために、オフィスチェアの使い方講座といったイベントを実施する企業も存在しますが、月日が経ち、人材採用が進むと、オフィスチェアの使い方を知らない社員も増えてきます。
【8つのステップで完璧!】オフィスチェアの正しい調整方法と座り方
それでは、いよいよ調整の実践段階に入りましょう。ここでは杉本が推奨する7つの調整手順を紹介します。この順番通りに調整を行うことで、誰でも簡単に最適なポジションを見つけることができます。
背もたれに体を預けるように深く座るのが基本。一見姿勢が悪いように見えるが、リラックスした状態で、体への負担も少ない
ステップ1:深く座る(基本かつ最重要ポイント)
杉本は「背もたれに背中がぴったりくっつくように、お尻を座面の奥までしっかり入れて深く座ることが全ての基本」と説明します。
人間の体重の約6割が上半身に集中しています。浅く座るとその重みがすべて股関節にかかり、骨盤が歪む原因に。
「特に、人間の頭部はボウリングボール程度の重さがあり、前傾姿勢になると体への負担が非常に大きいので、背もたれを使うことが必須。深く座ると、背骨の真上に頭部が位置するようになるので負担軽減につながります」(杉本)
また、浅く座ると猫背・前傾姿勢になりやすく、肺などの内臓を圧迫するため呼吸にがしにくくなります。そのため、深く座り、背もたれに体を預けることで、身体へ余計な負担をかけず、酸素を取り込みやすい状態をキープすることが重要です。
右側の中央にあるレバー(つまみ)で高さを調整できる。深く座った状態で膝が90度に曲がり、足裏全体がしっかり床につく高さが理想形
ステップ2:椅子の高さ調整(足裏を床に、膝は90度)
エルゴノミクスチェアには様々なレバー・ダイヤルを備えており、シートの高さや角度などを調整することができます。まずはシートの高さを調整してみましょう。
JLLのエルゴノミクスチェアは右側中央にあるレバー(つまみ)でシートの高さを調整します。シートを上げる時は腰を浮かせ、下げる時は体重をかけて操作します。深く座った状態で膝が90度に曲がり、足裏全体がしっかりと床につく高さが理想形です。 かかとが浮いたり、太ももの裏が圧迫されたりしないように注意しましょう。
深く座りながらも、膝裏に指1~2本分の隙間が空くように座面の奥行きを調整する
ステップ3:座面の奥行き調整(膝裏に指1〜2本分の隙間を空ける)
座面の奥行きも重要です。膝の裏側には太い血管が通っているため、ここが圧迫されると足のむくみや血行不良の原因になります。 座面の前端と膝の裏の間に、指が1〜2本入るくらいの隙間を確保してください。
右側のレバーを回してリクライニングの反発力を調整することで、自分に最適なバランスポイントがみつかる
ステップ4:リクライニングの硬さ調整(体と椅子のバランスポイントを探す)
右側のレバーを回して、リクライニングの反発力を調整します。 「+」で硬く、「-」で柔らかくなり、15回転の無段階調整が可能で、体重50㎏~120㎏まで対応できます。硬すぎず、柔らかすぎず、自分の体重に反発しないことを意識します。
「軽く体重をかけただけで背もたれが自然についてくるのがベストな状態です。背もたれに体重をかけるとシーソーのように行ったり来たりするポイントを見つけることが重要」(杉本)
左側のレバー(内側)でリクライニングの稼働範囲を設定する。傾斜があるほうが立位状態に近づき、体の負担を軽減する
ステップ5:リクライニングの傾斜調整(行儀が悪く見えても負担軽減)
左側のレバー(内側)はリクライニングの稼働範囲を設定するもの。一段後ろ側に回すと半段階倒れるようになり、二段後ろ側に回すとさらに半段階倒れるようになります。傾斜があるほうが立位状態に近づくため、着席時には行儀が悪そうに見えますが、むしろ体の負担を軽減してくれます。
「リクライニングの傾斜がとれないと、ステップ4で解説したシーソーポイントを見つけることができません。利用者が一番心地よく感じる位置を見つけ出すことが何より重要です」(杉本)
アームパッドの上に腕を乗せることで負担が軽減され、肩こり防止に効果がある
ステップ6:アームレストの高さと位置(肩こり解消の鍵)
アームレストはアームの高さ・位置(前後左右)を調整し、肩こりを防ぐための重要な機能です。デスクに向かった際、肘が自然に90度(デスクと腕が平行)になるように高さに設定してください。アームレストを使用せず、直接キーボードやデスクに腕が届く状態にするよりも、アームパッドに肘を置いた状態にすると腕を支えるポイントが増えるため、デスクワーク時に肩にかかる負担を大幅に軽減できます。
「小柄な方はアームパッドを内側に寄せると、より自然な体勢で腕を置くことができます」(杉本)
大型モニターを見上げてデスクワークする方が多いが、目線を少し下げるか、同じぐらいの高さに調整するのが理想的
ステップ7:モニターの高さと距離(疲れ目の原因は目線にあり)
意外と見落としがちなのがモニターの位置の調整です。モニターを見上げるような姿勢は目の筋肉を使い、眼精疲労や首への負担につながります。目線を少し下げた位置か、目線と同じぐらいの高さにモニターの上端が来るように調整するのが理想的です。モニターアームを使い、自分にとって最も楽な位置を探してみましょう。
ステップ8:上級者向けの前傾レバー(集中モードのスイッチ)
左側レバー(先端のダイヤル式)を操作すると、座面が4度ほど前傾になる機能です。傍から見ていても座る姿勢に大きな変化は感じられませんが、文章作成や作図など、特に集中したい時に適しており、「集中姿勢用」とも呼ばれています。
「不特定多数が1つのチェアを使用するフリーアドレス席やABW型オフィスでは意図せずリクライニングを前傾にしてしまい、そのままの状態で使われ続けているケースも多いので、普段は使わなくても問題ないです。まずは基本の姿勢をマスターすることを最優先にしましょう」(杉本)
エルゴノミクスチェアを正しく使用することで心身の負担が軽減され、パフォーマンス向上に寄与する
まとめ:正しい調整で身体の負担を減らし、最高のパフォーマンスを
普段何気なく座っていたオフィスチェアですが、その機能は多彩かつ非常に有用だったことがお分かりになったかと思います。人材採用やブランディング効果を目的に新たにオフィス移転を行ったテナント企業を中心に高機能なオフィスチェア(エルゴノミクスチェア)を導入するケースは少なくありませんが、正しく使用していなければ「宝の持ち腐れ」に過ぎません。
また、オフィス移転(新規開設)時には、オフィスチェアの正しい使い方を全社的に説明する社内イベントを行う企業も存在しますが、時を経て社員数が増加していく中で、新たに入社した社員にはオフィスチェアの正しい使い方が伝わってない可能性がありますので、折を見て社内の啓蒙活動を行うことも重要です。
「エルゴノミクスチェアは、正しく使うことで初めてご自身の健康と生産性を守ってくれるパートナーになります。ぜひ今日からこの調整方法を実践して、肩こりや腰痛のない快適なワークライフを手に入れてください。それが結果的に、ご自身のパフォーマンスを最大限に高めることにつながります」(杉本)