CRE戦略における定借分譲マンションのメリットとは?遊休地活用の知られざる会計メリットと開発時の注意点
定借分譲マンションとは?
CRE戦略(遊休地活用)の新たな選択肢として「定期借地権付き分譲マンション(以下、定借分譲マンション)」への注目度が高まっている。
一般的な「分譲マンション」は不動産登記上の区分所有建物として建物・土地双方の所有権を一体で取り扱うことになるが、定借分譲マンションは開発業者等が土地の所有者から期限付きで土地を借り受け、当該地に分譲マンションを開発。マンション購入者は建物の区分所有権のみを取得し、土地自体は借りる(借地権を取得する)ことになる。
そして、開発事業者は土地の賃借期間が満了するまで土地所有者に地代を支払うことになる。借地期間が満了を迎えると、原則的に建物は解体され、更地として土地所有者に返還される。
なお、借地権は大きく下記の3つに分類され、定借分譲マンションの主流は「一般定期借家権」であり、存続期間は「50年以上」とされる。
定借分譲マンションの供給状況
公益財団法人 日本住宅総合センターが公表している「定期借地権事例調査(2025年度前期)」をみると、定借分譲マンションの年度別供給量は1996年度にピーク(件数ベース)を迎えたものの、リーマンショックに端を発する世界同時不況の影響もあり供給数が減少。
その後、日本経済が本格的に回復フェーズに突入した2015年頃から増加傾向に転じている。注目すべきは2025年前期の数値だ。供給件数は32で前年度とほぼ同数(33)、戸数も887となり、前年度の1264を上回るペースで供給がなされていることがわかる(図1)。
図1:定借分譲マンションの年度別供給量 出所:公益財団法人 日本住宅総合センター「年度別収集事例数(マンション)」をもとにJLL作成
また、不動産経済研究所が発表した「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2025年のまとめ」によると、定借分譲マンションの発売戸数が1,502戸となり、過去最多だった2008年の1,281戸を上回ったという。
都内湾岸エリアでも定借分譲マンションの開発事例が増えている 画像提供:PIXTA
遊休地活用策として定借分譲マンションが注目される3つの理由
自社保有地に賃貸物件を建設し賃料収益を得るのが企業の遊休地活用の一般的なスキームであり、賃貸マンション、オフィス、商業施設などが想定される。
一方、定借分譲マンションは賃料収益ではなく地代を得ることになり、これまでの遊休地活用策とは一線を画す。なぜ、注目されるようになってきたのか?
その主な要因として考えられるのが、遊休地活用策として様々なメリットがあることが広く知られるようになってきたためだろう。
定借分譲マンションの主なメリットは下記3点が考えられる。
理由1:土地を手放すことなく長期安定収益(地代)が得られるため
定借分譲マンションの場合、土地所有者は開発事業者に土地を賃貸し、建物竣工後に借地権をマンション購入者へ譲渡する(場合によっては、開発事業者が賃貸した土地をマンション購入者に転貸するケースもある)など、建物へ投資をせず地代を得ることになる。土地を手放すことなく、長期安定的な地代収入が得られることが最大の利点となる。
理由2:土地保有者が開発リスクを負わないため
土地を賃借した大手デベロッパー等の開発事業者が投資し開発・分譲はもとより、開発後の建物管理、さらに定借満了後の解体工事まで行うため、土地保有者自身は多額の投資を行う必要がなく、マンション販売活動の不調等による開発リスクを軽減できる。建築費が高止まりする中、定借分譲マンションは土地保有者にとってリスクの少ない魅力的な選択肢となりえる。
理由3:悪条件の遊休地でも収益化の可能性があるため
定借分譲マンションで得られる地代の相場観は立地条件等によって様々だが、一般的に固定資産税の2-3倍程度であるケースが多い。そのため、収益性だけで評価すると賃貸物件を自ら開発するケースに比べて事業規模的に妙味が少ないのが実情だ。
そうした中、収益性の面で見劣りする定借分譲マンションが注目されるのは、これまで有効活用が難しかった遊休地を収益化できる可能性があるためだ。
遊休地の有効活用策など、CRE戦略の総合コンサルティングサービスを提供しているJLL日本 ストラテジックコンサルティング事業部長 相川 正敏は「新規開発でも十分なリターンが見込める好立地ならいざ知らず、駅から離れた郊外かつ比較的広大な土地の場合、新たに賃貸物件を建設すると投資回収期間が長くなるか、低利回りとなり、土地保有者が期待するリターンが得られない。こうした収益化が難しい低利用地でも定借分譲マンションなら事業性が見込めることがある」と指摘する。
郊外にある広大な土地を有効活用する場合、その候補となりそうなのが物流施設や商業施設、近年ではデータセンター等が挙げられる。しかし、都市計画で定められた用途地域には建物用途・容積・形態などに関する制限があり、物流施設やデータセンターを開発できない地域が多い。また、商業施設の場合は集客が見込める幹線道路沿いなどの好立地が求められ、その条件に見合った開発適地となればその数は更に少なくなる。
CRE戦略として多くのメリットが見込める定借分譲マンション開発(画像はイメージ) 画像提供:PIXTA
JLLが支援した定借分譲マンション開発によるCRE戦略の成功事例
JLL日本 ストラテジックコンサルティング事業部が支援した定借分譲マンションによる企業の遊休地活用プロジェクトは次のようなものだ。
クライアントは某遊休地を保有する一般事業会社であり、自ら建物を開発せず、マンションデベロッパーと70年間の定期借地契約を締結。マンションデベロッパーが分譲マンションを建設し、エンドユーザーに販売していく。定借期限が切れる70年後に一般事業会社(土地保有者である企業)に更地の状態で土地が返還される。
定借期間を70年に設定したことで退去リスクを解消
1992年の借地借家法の改正により定期借地権が設定され、その当時から定借分譲マンションは存在していたが、マンションや住宅といった居住用不動産に適用される一般定期借家権の存続期間は「50年」とされることが多く、入居者のライフプランを考えると定借期間満了後に退去を迫られる可能性がある。そのため、JLLが支援した本プロジェクトでは定借期間を「70年」に設定したことで居住者の退去リスクを解消。加えて、所有権よりも割安な販売価格に設定することが可能となり、市場競争力のある商品性を実現することに成功した。
定借分譲マンションの会計上のメリット
他方、土地保有者は会計上のメリットも享受できる。相川は「条件次第」と前置きしつつも次のように説明する。
「土地保有者は交渉次第で定借期間70年分の地代のうち何割かを『前払い地代』として受け取ることができる場合もある。マンションデベロッパーは前払い地代の負担分も織り込んだ分譲価格とすることで成立するスキームだ」(相川)
土地保有者は土地を売却した場合と比較しても、ほぼ同等のキャッシュを一括で得ることができ、自ら投資しないので不良債権化のリスクもない。また、売却による税金を加味した場合、投資対象の将来的なキャッシュフローを現在の資産価値に置き換える投資判断の指標「NPV(Net Present Value:正味資産価値)」が売却よりも高くなる可能性がある。
そして、前払い地代は「前受収益」扱いとなり、会計処理上は定借期間で案分した地代が年度毎計上されるため、売却するよりも税務的なメリットも大きい。
収益化が難しい遊休地の有効活用策として定借分譲マンションは一考の価値がある(画像はイメージ) 画像提供:PIXTA
万人受けしないが遊休地活用の起死回生の策に
近年、一般事業会社に対して不動産売却を促すようアクティビストの圧力が強まっており、さらに主要事業への「集中投資」を行うためにアセットライト戦略に舵を切る企業も現れている。しかし、元来土地(不動産)の売却を躊躇する日本企業はまだまだ多いのが実情だ。
そうした中、保有する土地の有効活用を多角的に検討する企業が増え、その結果、安定収益・低リスクの選択肢として定借分譲マンションの存在感が高まっているといえそうだ。
ただし、このスキームは定借期間が長期に及び、その間の流動性は低下する。土地の売却は可能だが、底地扱いで売却価格も大幅に目減りしてしまう。また、定借期間の長さと地代の前払いに対応できる開発事業者はいわゆる資本的体力のある一部の大手デベロッパーに限られることを忘れてはいけない。
「定借分譲マンションが最有効活用策となる遊休地は決して多くはなく、CRE戦略として定借分譲マンションの開発を選択するケースが爆発的に増えることは考えにくいが、今まで手がつけられなかった遊休地を収益化するための起死回生の策ともなりえる」(相川)
「万人受け」はしないが、CRE戦略として一考に値するのではないだろうか。
CRE戦略として有望な選択肢となる定借分譲マンション(画像はイメージ)画像提供:PIXTA
難易度の高い遊休地の有効活用のご相談はJLLへ
JLL日本 ストラテジックコンサルティング事業部では、国内外問わず数多くの企業のCRE戦略について戦略立案やアドバイスだけでなく、行政との折衝やリーシング活動等の「実行フェーズ」まで一気通貫で支援しています。特に行政の規制など、複雑な課題を抱える遊休地における収益化施策について多くの実績を積み重ねてきました。JLLが支援してきたCRE戦略プロジェクトの一部を下記にてご紹介します。
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