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世界の不動産市場は一時的な市況悪化から脱し、2025年に向けて好転の気配が強まっている。しかし、依然として“喫緊の課題”が残っているのも事実である。

2024年の不動産市場を取り巻く論点がいくつか存在する。オフィス回帰に舵を切る企業の急増、不動産に影響を与える気候リスクの拡大、AIブームに対峙する不動産業界の今後、データセンター需要の今後、そしてPEファンドの台頭などが挙げられる。

本稿では、2025 年のグローバルな不動産市場を取り巻く6つの論点について紐解いた。

オフィスコミュニケーションの活性化につながらない従来のオフィスレイアウト

2. 深刻さが増す気候リスクは不動産業界にどのような影響を及ぼすか?

環境に配慮したオフィスビル

3. 不動産のバリューアップ戦略が注目を浴びるか?

2025年.グレード、立地、アメニティなどのスペックにおいてで必ずしも“高品質”といえない物件を含め、より広範な不動産セクターに対するバリューアップ投資を行うことに、多くの投資家が自信を深めるようになるだろう。用途変更をふくめた大規模改修工事は、付加価値に重点を置いた不動産投資戦略に多大な利益をもたらす可能性がある。

JLL EMEA(欧州・中東・アフリカ) キャピタルマーケット リサーチ&ストラテジーディレクターを務めるキャメロン・ラムジーは「多くの投資家にとってバリューアップするか、それとも築年相応の廉価で売却するかという決断しなくてはならない。付加価値を求める投資家と企業の事業戦略上の要件の両方を満たす優良なオフィスビルは十分とは言えず、築年が経過したオフィスビルなどをバリューアップする動きがグローバルで拡大する」と予想する。

VRを使用する女性ワーカー

世界的な AI ブームは、不動産業界でより大きな役割を果たすことになりそうだ。JLLグローバル のレポート「Get set for the 5th Industrial Revolution」(英語版)で言及しているように、需要・デザイン・機能・ビジネスモデルがAIによって影響を受けるため、企業は注意を払い続けなくてはならない。

AI やVR/AR(仮想現実/拡張現実)によって“優良な体験”を強化できるオフィス空間の需要が高まる。一方、AI はスマートビルの開発を後押しし、従業員にとってより魅力的なオフィス環境を提供することに繋がる。

また、JLLグローバルのレポート「Prepare yourself for the future of retail」(英語版)によると、VR/ARが進化するにつれてデジタルと物理が融合した“複合的現実空間”が出現すると予想している。

データセンターを管理する2人のエンジニア

2025年、グローバル投資家は投資機会を求めて調査範囲を広げることが予想される。そして、オルタナティブ資産としてデータセンターの存在感はこれまで以上に高まっていくだろう。

2027 年までにデータセンターのキャパシティは 2 倍以上増加すると予想されているが、それでも供給不足だという。JLLの調査では、世界的にデータセンターの市場規模は2020年の1,530億米ドルから2倍以上に拡大し、2026年までに3,170億ドルに達する見通しだ。

現在、データセンター投資は米国が他の追随を許さず、過去 5 年間で 58% のシェアを占めているが、アジア太平洋地域の勢いが加速。同期間における投資シェアは 24% にまで上昇している。

JLLアジア太平洋地域 キャピタルマーケット データセンター・クライアントソリューション ディレクターを務めるセリーナ・チュアは「投資家が引き続きデータセンター市場への新規参入を模索しているため、 2025年以降もデータセンターの物件取引だけでなく、M&Aがさらなる増加を予想している。特に優秀な経営陣を持ちながらリソースが限られている大規模なデータセンター・ポートフォリオがM&Aの主なターゲットになる」と予想している。
 

M&Aを検討するPEファンドのマネージャー

借入コストが増加を受けて、投資家の間で新たな資金調達先を見つけなければならないというプレッシャーが高まっている。その結果、世界のPEファンドはM&Aを通じて規模の拡大を目指しているのが現状だ。

JLL インターナショナル・ストラテジック キャピタル グローバルリードのティム・グラハムは「主に北米のPEファンドの大規模な投資資金が、アジア太平洋地域全体のM&A戦略の成長を支えてきた。今後は物流施設やデータセンターなどの産業用不動産セクターで規模を拡大し続けるだろう」と指摘する。

単一施設を取得して徐々にポートフォリオの拡大を図るには、かなりの時間を要する。大規模な投資資金を効率的に運用し、AUMの成長目標の達成を求められているPEファンドにとって、アジア太平洋地域でM&A活動を継続することが必要不可欠な選択肢になっている。

以上、JLLグローバルが考える6つの論点を提示した。2025年の不動産業界を取り巻くグローバルなトレンドがどうなるのか、今後に注目していきたい。

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