オフィスで飲むコーヒーといえば、殺風景な給湯室に置かれたコーヒーマシンで「ブラック」か「ミルク・砂糖入り」だけ。選択肢が少なく、ヒトの暖かみなんて全く感じられない…そんな光景が当たり前でした。しかし、状況は大きく変わりつつあります。その中心にあるのが「社内カフェ(オフィスカフェ)」なのです。
社内カフェとは?
「社内カフェ」とは、自社ビルやオフィスの中に開設されたカフェスペースのこと。「オフィスカフェ」とも呼ばれることが多いのですが、飲食可能エリアにコーヒーマシンなどを設置した無人のスペース活用型、キッチンやカウンターなど大手カフェチェーンと遜色のないしつらえで専任スタッフが種類豊富な飲料やパン・弁当などを提供してくれるスタッフ常駐型・社食兼用型、自社ビルのエントランスなどに開設された店舗型など、様々な形態が見られます。
なお、本稿では「オフィスカフェ」を「オフィス内にあるカフェスペース」、「社内カフェ」を「オフィスや自社ビル内に開設したカフェスペース」と定義し、主に「社内カフェ」について解説していきます。
社内カフェを開設する企業が増加
昨今のオフィス移転事例を調べてみたところ、社内カフェを開設する企業は少なくありません。例えば、先進的なオフィスを表彰する日経ニューオフィス賞において、2025年度に表彰されたオフィスには社内オフィスを開設するケースが目立ちます。
ちなみに、JLLでも世界各地の主要オフィス(東京オフィス含む)にスタッフ常駐型の本格的なカフェスペースを設置しており、手前味噌ながら、JLL東京オフィスは2023年度の日経ニューオフィス賞の「クリエイティブ・オフィス賞」を獲得しています。
本稿では、JLL東京オフィスの社内カフェの運営会社でもあるボンディッシュ株式会社(以下、ボンディッシュ)の岩渕章悟さん、大塚 史帆さん、JLL東京オフィスの運営を担うJLL日本 JLL CRE Work place Japan の杉本 あさ子に社内カフェの魅力や導入効果、導入時の注意点について伺いました。
社内カフェを導入する企業が増えた理由
コロナ以前の社内カフェといえば、簡易的なキッチンカウンターの上に自動コーヒーサーバーを設置したものや、カフェカウンターはあるものの無人で置き食品を設置しているケースが大半で、スタッフ在籍型の本格的なカフェスペースは珍しく、社員食堂がその役割を兼務していたといえるでしょう。
では、なぜ専用のカフェスペースを導入する企業が増えたのでしょうか?
ボンディッシュ ビジネスディベロップメント事業部 セールスチーム事業部長を務める岩渕 章悟さんはその理由を次のように説明します。
「もともとはコロナ禍で出社を制限するなか、出社した社員に対する福利厚生として食事や飲料を提供したいのですが、キッチン設備まで投資するのは躊躇する企業に対して、キッチンレスで食事や飲料を提供できる当社のサービスを利用するケースが増えました」
いつ収束するか見通しが立たないコロナ禍において、多額のコストを社内カフェの整備に投じるのはなかなか難しいことです。その後、コロナ収束に向けてオフィスへの出社回帰が本格化していくなか、出社を促すための動機付け・きっかけにしたいとの意向や、ハイブリッドワーク導入によって座席を減らすなど、オフィスに余剰スペースが生じたための有効活用施策として社内カフェを開設する企業が増加したそうです。
そして、コロナ収束後の現在では社内のコミュニケーション活性化のための「コミュニティスペース」と「社員エンゲージメントの向上」を目的としてサービスを導入する企業が多いといいます。
社内カフェの主な形態
前述した通り、「オフィス内のカフェスペース」といえば従前はキッチンカウンターやパントリーに全自動のコーヒーサーバーを設置した無人・セルフ型が一般的でした。しかし、近年はカフェチェーン店のようなスタッフ常駐型の存在感が増しており、これが「社内カフェ」と呼ばれる所以ともいえます。
こうしたスタッフ常駐型の社内カフェに対する企業のニーズについて、ボンディッシュ ビジネスディベロップメント事業部 シニアマネージャーの大塚 史帆さんは「業界や事業規模、社員数など、千差万別。例えば、社員数100名規模から3,000名規模まで多岐にわたります」と説明してくれました。
その理由として挙げられるのが、同社が運営する社内カフェ・サービスは企業それぞれのニーズに対応して運営形態や提供メニューを決められることにありそうです。
ボンディッシュが運営している社内カフェの形態は大きく次の2つに分けられます。
1. オフィスカフェ(社内カフェ)
パンやケーキ・クッキーなどの軽食と飲料を提供するケースと、飲料のみを提供する2タイプがあります。入居する賃貸ビルの館内規約などで電気容量や防水加工などの設備制限があるケースが多いため、ドリンクのみ提供可能な社内カフェを導入するケースが多いそうです。
提供するドリンクはボンディッシュとクライアントが協議して決定することが多く、本格的な自家焙煎コーヒーや企業オリジナルのドリンクなどを提供可能。JLLではオリジナルコーラをはじめ、抹茶オレ、レモネードソーダなど季節感を感じられる限定ドリンクを定期的に提供しています。
「顧客によって提供するドリンクの種類は異なりますが、15種類程度まで提供可能」(大塚さん)
また、同社の「キッチンレス社食」サービスと組み合わせることで、ランチの提供も可能になります。
2. 厨房設置型社食
厨房設備を備えた従来型(現地調理)の社員食堂。日替わり定食や丼もの、麺類などバラエティ豊かなメニューを日替わりで提供できる他、カフェやレストランなどの実店舗の営業ノウハウを生かしたオシャレな空間演出や、自然と人が集まるためのイベントなどの企画提案・実行支援なども行っています。
簡易パントリーを設けて運営するキッチンレス社食と組み合わせることで、換気ダクトなどの調理環境の導入コストを最低限に抑えることも可能とのこと。
社内カフェの導入メリットと効果
ボンディッシュの社内カフェ・サービスを導入する顧客は「コミュニティスペース」と「社員エンゲージメントの向上」を目的とするケースが多いとのことですが、それら以外にも企業・従業員双方に多様なメリットをもたらします。JLLのコラム記事「オフィスカフェで職場を改善する方法と導入メリット」で説明していますが、具体的には下記6つのメリットを挙げています。
①生産性向上
②エンゲージメント向上
③コミュニケーション活性化
④健康経営の推進
⑤企業イメージやブランディング向上
⑥多目的スペースとして利用できる
社内カフェを利用しているJLL社員の感想
実際に社内カフェを日常的に利用しているJLL社員の意見をどうでしょう。
JLL日本 マーケティング&コミュニケーション事業部で外部セミナーや社内イベントなどの運営に携わる鳥居 巧が出社すると、必ず利用するのが社内カフェだといいます。「スタッフによる淹れ立てコーヒーのほうが味わい深く、スタッフとの何気ない会話を通じてヒトの暖かみを感じられることが社内カフェ最大の魅力」と語り、社内でセミナーやイベントを開催する際のケータリングサービスが利用できる点も大きなメリットだといいます。
一方、杉本によると「『ドリンク代を一切使わなくなった』、『青汁などヘルシーな飲料健康管理になる』、『カフェスタッフの方とコミュニケーションを取ってリフレッシュしている』といった意見が多く、社員エンゲージメントの向上に寄与している他、『より丁寧な呈茶でおもてなしできる』、『会議までの待機時間にカフェを利用してもらえる』といった来客対応の品質向上を評価する声も少なくありません」といいます。
「コーヒー1杯」の体験が、いつしか企業やオフィスへの愛着・帰属感の土台になっているのです。
JLL東京オフィスの社内カフェスペースを活用してボンディッシュのケータリングを提供
社内カフェを導入する際の注意点
実際に社内カフェを開設する際に、どのようなことに注意すべきでしょうか?
営業許可が取れないケース
岩渕さんは「先にカフェスペースを設計・施工が完了してからカフェの運営を依頼されることが多いのですが、給排水設備に不備があるなど、営業許可が取れないケースが少なくありません。その場合はカウンターだけの無人カフェスペースとなり、有効活用が難しく、次第に使われなくなっていく可能性があります」と説明します。
難易度が高い「居ながら工事」
また、既存オフィスに本格的なカフェスペースを追設する場合も注意が必要。「かなりハードルが高い」(岩渕さん)といいます。前述の通り、そもそも給排水設備がない、もしくは追設できないなどの課題をクリアできない可能性がある上、オーナーへの許可取りも必要です。加えて、オフィスが稼働した状態での“居ながら工事”になるので、通常工事に比べて難易度が高く、工事実施中の騒音対策や執務スペースの調整が必要になることもあります。
そのため、カフェスペースを設ける最適なタイミングはオフィス移転・リニューアル時が最適といいます。ボンディッシュとデザイナー、クライアント、厨房業者で協議しながらカフェスペースを設計するのが一般的な流れとなるそうで、カフェスペース(厨房区画)内の設計・デザインはボンディッシュが提案し、厨房業者や電気・水道工事会社、B工事会社などの施工関係者との協議も行ってくれるとのこと。
設備導入・運用コスト
カフェスペースを導入する際の初期費用は規模や運営スタイルなどによって大きく異なりますが、ボンディッシュによると一般的なフルキッチン型社食の場合は3,000万円-1億円超、管理厨房型だと約1,000万円-3,000万円が目安になるといいます。また、初期費用だけでなくランニングコストも無視できません。コーヒー豆や茶葉などの消耗品費、機器のメンテナンス費用、水道光熱費など、毎月継続的に発生する費用も把握しておくべきでしょう。
初期費用を抑えるためには既存の家具を再利用する他、DIYを取り入れるなど、建築コストを抑える施策を考える必要があります。そうしたなか、ボンディッシュが提供している「キッチンレス社食」は厨房・調理設備が不要になり、内装・工事費の抑制効果が期待できます。
社内カフェ運営時の注意点
一方、社内カフェを導入した後の運営面においても様々な注意点があります。JLL東京オフィスの社内カフェを例に、杉本は次のような点について説明します。
①自社に最適なカフェ運営マニュアルの策定
②専門機材や水回りなどの日常的なメンテナンス
③利用者増に伴うコスト最適化
④イベントや他用途との連携
「自社の状況やゾーニングなどに最適なカフェ運営スキームやお客様のおもてなし方法などのマニュアルをボンディッシュと協働で作り上げた点は苦労がありつつも、快適なオフィス環境を提供することが求められるオフィス運用担当者にとっては楽しみでもありました。ただ、設備はJLLが保有している関係上、グリストラップなどの専門的な機材が多く、常日頃から不具合が生じないようにメンテナンスするための知識や技術を学ぶことが重要。また、利用者が増えるほどコーヒー豆などの原材料費や消耗品費などが膨らむ点も注意するべき点といえますが、JLLではスペシャルドリンクの提供を季節限定にして利用量を調整する他、コストパフォーマンスが良いコーヒーサーバーを併用して予算内に収めています」(杉本)
また、単に飲料を提供するだけでなく、様々な用途への転用や、セミナーなどの社内イベントとの連携が取れるなど、汎用性の高い活用ができるような仕組みを構築することも重要です。杉本さんは「例えば、ボンディッシュの場合は社内の小規模イベントに提供するためのスペシャルドリンクなどを少量から提供してくれるなど、運営会社の対応力次第で社内カフェのポテンシャルを最大限引き出すことができるのではないでしょうか」と指摘します。
JLL東京オフィスの社内カフェ導入事例
JLL日本の東京本社オフィスのゲストエリア「ワークカフェ」。採光性に優れ、屋内緑化やオフィスアート作品に彩られた空間にボンディッシュが運営する社内カフェを開設しています。
「公園」をコンセプトとする「ワークカフェ」は自然と人が集まり、新しい発見やコミュニケーションを生む場所を目指しており、人が自然と集まるための装置として社内カフェが位置付けられています。杉本は「海外のJLLオフィスの社内カフェはお客様が自らカフェを利用するのが定着しており、街なかのカフェのように多様な人々が訪れ、偶発的な交流によってアイデアが生まれる場として機能しています。国民性の違いがあるもののお客様にはご自身で気軽にカフェを利用していただきたいです」と述べています。
提供しているドリンクは季節限定商品を含めて7-10種類。コーヒーやカフェオレ、紅茶、デトックスウォーターなど、健康を意識した高品質のドリンクを提供しており、お客様のみならず、社員にも無料で提供しています。抜群の眺望を楽しみながら、快適なソファーでカジュアルなミーティングが行える他、バリスタとの会話を楽しめます。
なお、環境に配慮し、JLL社員はマイカップ・ボトルを使用し、お客様には専用マグカップとグラスでドリンクを提供しています。提供する健康的なドリンクと環境配慮の取り組みが世界的なグリーンビルディング認証であるLEED認証と、ウェルビーイングの取り組みを評価するWELL認証において最高ランクであるプラチナを取得しています。
JLL東京本社オフィスではオフィスツアー※を開催しており、社内カフェの美味しい飲み物でおもてなししています。ご興味ありましたら下記よりお気軽にお申し込みください。
社内カフェには“福利厚生”以上の価値がある
今や社内カフェは、単なる福利厚生の一要素に留まりません。ブランディングや人材採用力をふくめ、社員の出社意欲を高め、雇用の長期定着に大きな影響を及ぼすオフィスの価値を一段高めてくれる存在といえるでしょう。
多くの企業がこの新しい“場”を作る理由は、これから必要とされる「Future of Work(未来の働き方)の中心に「社員同士のつながり」と「自社らしさ」が求められているからに他ならないためです。
オフィスの価値を見直したい、あるいはオフィス回帰を促す施策を考えているのならば「全自動コーヒーマシン」を卒業し、スタッフ常駐型の社内カフェという選択肢をぜひ検討してみてください。
社内カフェの導入支援はJLLへ
多くの企業が出社回帰の方向へ舵を切るなか、社員をオフィスに呼び戻すためには「出社するための意義」や「自宅よりも働きやすい環境」であることを認識してもらう必要があります。いわゆる「出社したくなるオフィス」とは何か?その答えの1つとして社内カフェが挙げられそうです。
一方、本格的な社内カフェを導入するためには入居ビルの館内規約や給排水設備の有無、火気の制限があり、建築費が高止まりする現況下において初期導入費用の負担増も大きな課題になっています。
社内カフェを開設可能な入居可能物件の探索やオーナーとの意見調整、そして魅力的なカフェ運営に実績のある運営会社の協力が必要不可欠だといえそうです。
JLLは自社オフィスへ社内カフェを開設した他、国内外問わず数多くの企業のオフィス移転プロジェクトで社内カフェの開設を支援してきました。また、オフィスコンセプトの策定から移転先の選定、プログラミング(要件整理)、設計デザイン、プロジェクトマネジメント、移転後のオフィス運営までワンストップで支援しており、短工期でのコストパフォーマンス最大化を実現した移転プロジェクトの支援実績を有しています。
社内カフェの導入を検討している方々はお気軽にご相談ください。