アジア発のローカルブランドがテナント需要を再定義する - ファッション・飲食店が牽引
アジアのリテール市場が静かに進化しつつある。大規模商業施設や主要商業エリアを席捲するのは、もはやグローバルブランドだけではない。日本、中国、韓国などで生まれた機動力の高いローカルブランドが“販売”のための店舗ではなく「発見・滞在・つながる場づくり」に注力しているのである。
アパレルを含むファッション業界。アジア太平洋地域の主要リテール市場において、その存在感は依然として衰えていない。専有面積の上位を占めているためだ。特にタイ・バンコクやインドでこの傾向が顕著だ。2024-2025年の新規賃借床の3分の1以上をファッション業界が占めた。
旗艦店でありながらコンパクト、体験を重視したレイアウトが新規店舗の大きな特徴といえる。価格志向かつ高回転の業態、eコマースなどのオムニチャネルに対応した業務プロセスを踏まえた施設コンセプトとしている。新たな顧客接点の場として、こうした最先端店舗が新規出店を牽引する他、大型商業施設の核テナントとして注目されている。
地域ごとの特性に柔軟に対応するユニクロの海外戦略、韓国発のアイウェアブランドのジェントルモンスターが手掛けるギャラリータイプのフラッグシップショップが代表例といえる。
一方、飲食店舗が補完的な役割を果たしている。来街者数そのものを増やすだけでなく、滞在時間を延ばし、ソーシャル(社交的)な利用シーンを生み出している。コロナ収束による海外旅行の本格回復や底堅い国内消費を背景に、ローカル発の有力飲食チェーン・専門店が急速に拡大している。
2017年に誕生した中国最大手のコーヒーチェーン「Luckin coffee」、2021年に創業した中国・深圳発のジャスミンティー専門店「Molly Tea」、同じく中国発のティーブランド「CHAGEE」の事例が示すように、カフェのような店舗コンセプトで集客を高めるだけでなく、偶然訪れた来店者に魅力的な“体験”を提供することでリピート行動へと昇華させる。そして、デザイン性が高く「SNS映え」する店内は「デスティネーション(旅の目的地)」と認知され、さらに来店頻度を高めることに繋がっている。
商業施設:テナント同士のシナジーがさらに深化
商業施設の鮮度を維持するためには「柔軟性」がますます重要になっている。特徴的かつユニークなポップアップショップやテーマ型イベントプログラムはもとより、可変性の高い店舗区画を意識し、デベロッパー・オーナーは新しいコンセプトを迅速に試していくことで、ファッション・飲食・ライフスタイルが相互に補完し合う絶妙な店舗構成を実現することができるだろう。
こうしたテナント同士のシナジーはさらに深化している。例えば、バンコクや香港ではラグジュアリーブランドのフラッグシップショップから日常使いのローカルブランド店に至るまで、飲食店を併設・融合する動きが広がっている。カフェ(Cafe & Meal MUJI)を併設する日本の無印良品が手掛けるライフスタイル型の店舗は買物と飲食を組み合わせることで滞在時間を延ばし、自社の世界観を満喫してもらう好事例といえる。こうした柔軟性は、一部事業への依存度を減らし、安定した来訪頻度の維持に寄与する。
この変化の原動力となっているのは、主に日本、中国、韓国発のローカルブランドだが、アジア太平洋地域全体で注目すべき輸出型ブランドも台頭してきている。彼らはデジタル主体のマーケティング(顧客獲得)戦略と地域特性に根差した店舗形態を融合させている。「店舗規模」「文化的適合性」双方の観点で、不動産オーナーは魅力的な核テナント候補として認識し始めている。
図1:2025年のリーシング動向 - インド・バンコク・上海におけるカテゴリー別構成
出所:JLLリサーチ
顧客からの評価を獲得し続ける要因
JLLのグローバルレポート「Experience Matters 2025」(英語版のみ)によれば、消費者の74%が「自分を理解し、パーソナライズしてくれるブランド」を求め、69%が利便性や価格よりも「自身の価値観と合致する場所」を選好していることが明らかになっている。
商品・テナントに対するキュレーション、店舗構成における柔軟性、能動的なプログラミングを重視するオーナー、店舗を体験や業務プロセスの拠点として考えられるテナント…彼らこそが持続的に顧客からの評価を獲得し続け、競合施設を上回る成果を上げることができるのではないだろうか。
※本稿は、JLLアジア太平洋地域が発表した「Asian brands reshaping demand—with fashion and F&B leading」を元に作成しました。一部AIを活用のうえ翻訳しています。公式な情報が必要な場合、英語の原文をご確認ください。