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グローバル企業が重視するメンタリングとは?

グローバル企業がアフターコロナ以降に注力しているのが「メンタリング」だという。

メンタリングとは、指導する側と指導を受ける側が基本的に1対1での対話によって人材育成を行う制度であり、1900年初頭に米国で開発されたとされる。

メンタリングの関係性を端的に表現するとすれば「プラトンにおけるソクラテス」、「オプラ・ウィンフリーにおけるマヤ・アンジェロウ」、「ルーク・スカイウォーカーにおけるヨーダ」といったところだろうか。

指導する側を「メンター」、指導を受ける側を「メンティー(新入社員や若手社員が主)」と呼ぶ。メンター自身が仕事やキャリアの手本となり、メンティーと繰り返し対話を重ねることで“気づき”を与え、メンティーの自発的な成長を促す他、人間関係や心理的不安の解消といった精神的なサポートをすることを主な目的としている。

日本では「メンター制度」とも呼ばれ、その認知度も高まっているが、グローバル企業ではもはや当たり前の制度となっている。米国のメンタリング支援企業であるMentorcliQの調査によると、JLLも選出されている「フォーチュン500企業」の92%がメンタリングリング制度を導入し、2022年の84%から増加しているという。ちなみに、JLLも然りである。

最近では、自社のみならず他企業同士でメンター・メンティーを組み合わせた企業横断型の「クロスメンタリング」を実施するケースも見られるようになり、日本では出光興産と東京海上日動火災保険が導入している。

また、グローバル企業では目的別に複数の特化型メンタリング・プログラムを整備しているケースもある。例えばキャリア形成に特化したキャリア・メンタリング、リーダーシップ育成に主眼を置いたリーダーシップ・メンタリング、複数組のメンター・メンティーが参加するグループ・メンタリング等が挙げられ、冒頭で触れた「1対1の対話」とは異なる、メンタリング制度の発展型もみられるようになっている。

OJT制度、コーチング、ティーチングは会社への理解・慣れ、業務の習熟に主眼を置いた教育制度といえるが、メンタリングは日ごろの悩みやキャリア形成におけるサポートなど、メンタル面のケアを視野に入れた教育制度といえる。

そのため、コーチングやティーチングでは、同じ部署・チームの先輩社員が指導役を務めることが多く、一方でメンタリングでは業務以外の悩みや不安を相談しやすいように他部署等、比較的距離のある上司・先輩社員がメンターとなるのが一般的だ。

OJT制度、コーチング、ティーチングといった人材育成手法とメンタリングとの違いについて下記にまとめた。
 

ティーチングとは?

ティーチングは業務に関する知識やスキルを習得することを主な目的とし、その知識・スキルを有する上司・先輩社員が教師役として、新入社員・若手社員(生徒)を指導する。メンタリングやコーチングは対話という双方向の関係性だったが、ティーチングでは教師役から生徒役へ一方通行のコミュニケーションスタイルとなり、1人の教師が複数の生徒に講義形式で指導するケースもある。

 

 

企業がメンタリングを重要視するようになったのは、育児や介護等の課題に直面しやすい女性ワーカーを取り巻く労働環境を改善することに加え、給与の多寡だけでは従業員のモチベーションを維持することができなくなったためだ。米国発のニュートレンドである「静かな退職」に代表されるように、特に若手従業員が仕事に対するモチベーションの希薄化が顕著になっており、人材採用や長期雇用の維持に支障をきたす可能性があるためだ。

企業を悩ませる「静かな退職」解説記事はこちら

特に慢性的な人手不足に悩まされている日本にとっては従業員エンゲージメントの低下は深刻な問題となっている。従業員のモチベーションをいかに向上させるかが、経営層に課せられた重要課題となりつつある。

JLL欧州・中東・アフリカ地域(EMEA) ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI) 責任者 アン-リス・ラウルは「企業は従業員同士が互いに学び合い、スキルや知識を“伝授”するための方法としてメンタリングの有用性に気づき、実践的なサポートや指導を提供している」と指摘する。

メンタリングでは知識や技術を伝えるのみならず、メンティーが抱える悩みに対して「道しるべ」を示し、仕事に対する意義や面白さ等を伝達することで、メンティーが自ら考えて解決策を導き出すことを目的としている。そのため、メンティーは自己成長を実感でき、仕事に対するモチベーションを維持しながら、さらなる自己成長を目指すという人材育成における好循環が生まれるこれがメンタリングの大きな利点だ。

メンタリングのもう1つの利点は、大規模で複雑な組織を運営する方法を学べることにある。右も左もわからない新入社員が自社のビジネスを早期理解することに役立ち、従業員同士が常時顔を合わせないハイブリッドワーク環境下においても効果的な人材育成手法といえる。

また、直属のチーム以外の同僚にも門戸を開いており、異なるチームの相互理解を深めることにも寄与する。部署や役職の垣根を越えて社内コミュニケーションを深めることができ、情報やノウハウの共有が頻繁に行われることが期待されている。

メンタリングによるメンター、メンティー、企業が得られるメリットを下記にまとめた。
 

組織のメリット

メンタリングを通じて社員同士のコミュニケーションを改善することに繋がる他、社員に対して人材育成に対する熱意を感じてもらうことで「働きがいのある会社」としてのブランディングを行いながら、帰属意識の醸成、業務満足度の向上、ひいては生産性向上が期待できる。

メンタリング制度を導入しているフォーチュン500企業の利益(中央値)は、非導入企業の約3倍

社内コミュニケーション活性化に貢献