メインコンテンツにスキップ
不動産透明度を参考に世界の不動産投資市場を比較検討する不動産投資家(画像はイメージ)

不動産透明度とは?

世界99カ国・地域、163都市を対象に、不動産投資に関する210要素から算出した総合スコアを「不動産透明度」とする。今回の調査では「サステナビリティ」、「レジリエンス」、「健康とウェルネス」、「不動産テック」、「オルタナティブ不動産セクター」が新たな調査要素に追加。今や「世界の不動産投資市場に対する投資のしやすさ」を測る資料として、政府関係者や都市政策機関等に活用されている

1998年の開始以来、隔年で調査を行ってきた同レポートは今回で11版を数える。日本は2014年版で26位、2016年版で19位、そして前回2018年版で14位へと着実にランクを上げてきたが、今回は16位。シンガポール、香港に次いで透明度「中高」グループ上位に名を連ねるものの2ランクダウンとなった。

不動産透明度に関する最新レポートを見る

「透明度高」目前で足踏みする日本の課題

日本が透明度高グループ入りを果たすためには何が必要になるのか。日本と透明度高グループを比較してみた。その結果、日本は「上場不動産インデックス」、「不動産ローン規制」で透明度高グループを上回っていたが、一方で「テナントサービス」、「コーポレートガバナンス」、「物件データの欠如」、「財務情報開示」の項目で遅れが目立った。取引価格やポートフォリオ、共益費などの各種情報・データが開示されていないことが主な課題となっており、これは長らく指摘され続けてきた日本の慢性的な欠点といえるだろう。

気候変動への対応は不動産業界の喫緊の課題になっている(画像はイメージ)

サステナビリティ

CASBEEに代表される不動産の環境性能評価やエネルギー消費量ベンチマーク、エネルギー効率基準、二酸化炭素排出の報告義務制度など、日本はサステナビリティ項目では高い評価を受けているものの、透明度高グループの上位と比較すると見劣りする。サステナビリティ透明度の1位のフランスではグリーンリース条項を義務付け、環境不動産の財務パフォーマンス測定指標を整備。2位のオーストラリアは今回調査で新たに加えられた水利用効率基準や建築物のレジリエンスの枠組みなどの基準で高スコアを記録している。

「金融業界では『ESG投資』の機運が高まっており、環境配慮が投資パフォーマンスに直結し始めているが、日本でも投資リターンを客観的に示すような指数を整備する必要があるだろう」(大東)

また、気候変動リスクに対応する建築物のレジリエンス基準の策定、世界的に進展するネット・ゼロ・カーボンビル(ZEBビル)の実現、新型コロナを機に喫緊の課題となった建物利用者・管理者の健康や快適性を確保するためにウェルネス認証の普及などにも努めていく必要がある。

オルタナティブ不動産セクター

世界的な金融緩和を背景に、投資家はより高い利回りを求めるようになった。そのため、より利回りの高いニッチ分野であるオルタナティブ不動産セクターに投資対象が拡大している。

「日本では少子高齢化を背景に高齢者住宅セクターの専門上場REITが組成され、当該セクターのデータ拡充が進んでいるが、ライフサイエンス施設や冷凍・冷蔵倉庫、データセンターなどは透明度高グループと比べても市場規模・データの充実度共に低い。加えて、都市ごとに偏りが見られる不動産データの情報格差をいかに埋めるかも大きな課題となっている」(大東)