スマートビルとは?
まずは、スマートビルへのオフィス移転や新規開設を検討するにあたり必要な基本的な知識と定義、知っておきたい用語について解説する。
スマートビルの定義
スマートビル(スマートビルディング)とは、「建物IoT」と呼ばれることからも分かるように、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)の技術を活用し、ビルの設備やデータを一元的に管理、最適化する先進的な建築物である。
具体的には、電力設備・空調設備・照明システムなどビル内の各種設備にIoTセンサーを取り付け、それらがネットワークを介して相互に連携し、情報を共有することで、エネルギー消費の効率化・セキュリティの強化・快適な室内環境の維持を実現する。
これにより、ビルの保守管理コストの削減・利用者の利便性の向上・建物全体の運用効率の向上を図ることが可能となる。現在日本では民間企業によるスマートビルの開発に加え、政府機関や自治体も事例研究を進め、スマートビルの普及に努めている。
スマートビルの市場規模
近年、スマートビル市場は世界的に急速な成長をみせている。
具体的な数字については複数の見方があるが、Fortune Business Insightsの予測によると、世界のスマートビル市場規模は、2024年の1,174億2,000万米ドルから、2032年には5,680億2,000万米ドルまで拡大すると考えられ、予測年平均成長率(CAGR)は21.8%と高い水準にある。
また、日本のスマートビル市場も、REPORT OCEANによる分析結果によれば2023年から2032年まで75億4,310万米ドルから170億7,170万米ドルまでの収益増加を予測しており、CAGRは9.50%と予測している。
スマートビル市場は、世界的に見ても日本国内においても、今後大きな成長が見込まれる有望な市場だといえる
スマートビルが注目される理由
スマートビルの導入を検討する企業や不動産所有者には、おもに次のような目的や動機が存在する。
- セキュリティニーズの高まり
- CO2排出量削減の取り組み
- 国際的なエネルギー規制の強化
- 建物管理の合理化
以下、それぞれの背景について解説する。
セキュリティニーズの高まり
近年、企業におけるセキュリティ対策の重要性は高まる一方 だ。2017年の改正個人情報保護法施行やマイナンバー制度導入により、企業規模を問わず情報管理の徹底が求められている。
情報漏洩は損害賠償請求や業務停止・行政指導などのリスクを招き、企業の信用失墜や社員のモチベーション低下にもつながるうえ、対策費用や営業機会損失は企業利益を大幅に圧迫する。
こうした状況下、社員と資産を守り情報漏洩を防ぐ強固なセキュリティ対策が不可欠だ。特に人の出入りが多いオフィスでは物理的セキュリティの強化が急務となるが、スマートビルは、生体認証やAIカメラ、各種センサー等の先端技術を活用し、従来より高度なセキュリティを実現する。
CO2排出量削減の取り組み
2050年のカーボンニュートラル実現に向け、企業活動における建物のCO2排出量削減も喫緊の課題となっている。
スマートビルは、センサーやIoTデバイスにより照明・空調・換気などの設備を効率的に制御することでエネルギー使用量の最適化に大きく貢献する。
具体的には、人感センサーによる照明の自動制御や室温や外気温に応じた空調の自動調整などが挙げられる。またエネルギー使用状況をリアルタイムでモニタリングしデータ分析を行うことで、さらなるエネルギー効率化のための改善策を導き出すことも可能だ。
建物管理の合理化
スマートビル化によって、センサーやIoTデバイスから収集されるデータから設備の状態をリアルタイムで把握し、故障の予兆検知や予防保全が可能になる。またアンビエントIoT(環境IoT)の普及によりバッテリー不要のデバイスが登場し、コスト削減やメンテナンスフリー化も進み、建物管理の合理化や運用コストの削減にも期待が集まっている。
スマートビルの機能
スマートビルは単なる設備の自動化や省エネ化だけではなく、次のような機能も備えているのが大きな特徴だ。
データの収集/可視化/分析
スマートビルは、建物内に設置されたセンサーやカメラを通じ、人流データやエネルギー使用量など多種多様なデータを収集し、可視化・分析できるのが特徴である。
たとえばオフィスや商業施設の各エリアやトイレなどの利用状況をセンサーで感知し、そのデータをIoT技術でシステムに集約・分析することで、セキュリティ強化や空調・照明の最適化が図れる。さらにAIによるデータ分析を行うことで利用者にさらなる快適性と安全・安心を提供することも可能だ。
設備の遠隔操作
スマートビルでは、収集・可視化・分析されたデータに基づいて、各種設備を遠隔で操作できる。
エネルギー管理システムBEMS(Building and Energy Management System)により建物外から設備の遠隔操作を行えるほか、センサーで感知した人流データの分析結果を電気や空調などの機器と連動させ、利便性向上やエネルギー最適化のための調整を自動で行うことも可能である。また、複数のビルを一元的に監視・管理することも可能となり、管理業務の効率化やコスト削減にも寄与する。
スマートビルを支える技術
スマートビルの実現の中核をなす「ビルオートメーションシステム(BAS)」と、エネルギー特化型ともいえる「ビルエネルギー管理システム(BEMS)」等の技術をはじめ、スマートビルの運用を支えるテクノロジーを紹介する。
AI
現在、あらゆる分野で発達しているAI(人工知能)は、スマートビルにおいても重要な役割を担っている。
スマートビルでは、温湿度センサーや人感センサーなどの情報をもとにAIが最適な空調設定を自動で行い、ビル管理の効率化や設備の故障予測精度の向上に貢献する。
また、従来は人間が行ってきた「データ分析」「学習」をAIが代替し、エネルギー消費やセキュリティ設備などの最適化が24時間体制で行える。さらに空調や設備の制御を迅速かつ効率的に管理するなど、AIは大量の収集データの分析や異常検知を行うのに不可欠な技術である。
5G
5G(第5世代移動通信システム)は、「超高速」、「超低遅延」、「多数同時接続」を可能にする移動通信システムだ。スマートビルの実現には、IoT化された多様なセンサーを活用してデータを収集することが欠かせないが、そのためにはセンサーからリアルタイムで情報を取得しクラウドやAIに送信する「アンビエントIoT」が必要となる。
5Gは大容量の通信回線や低遅延のネットワークを提供するため、大量のデータのやりとりが発生するアンビエントIoTの実現とスマートビルの効率化において欠かせない通信システムだといえる。
BAS(Building Automation System)
BASは、施設内の設備機器を一元管理し自動化を促進するシステムである。これにより、照明や空調・セキュリティなどの機器を統合的に制御し、効率化することが可能である。
BEMS(Building Energy Management System)
BEMSはエネルギー使用量の見える化に特化したもので、エネルギーの消費を最適化する目的で設計されている。IoT技術を駆使してビル内のエネルギー消費データを収集・分析し、電気使用量や空調などの運用を最適化することができる。IoTの進化により、設備機器同士の高度な連携や遠隔管理も実現している。これらのシステムはビルを単なる作業空間から、生産性向上に寄与する事業インフラへと進化させる原動力となっている。
デジタルツイン技術
デジタルツイン技術は、現実空間から得たデータに基づき、仮想空間に現実空間を再現する技術である。
スマートビルにおいては、デジタルツイン技術を活用し災害の想定実験や設備の故障予測などが行える。現実のビルで収集したデータをもとに仮想空間で様々なシミュレーションを行うことで、災害発生時のリスクを事前に把握したり、設備の故障を未然に防ぐための対策を講じたりでき、スマートビルの安全性や信頼性を高める上で重要な技術の1つだといえる。
その他の技術
他にも、スマートビルでは以下のようなさまざまなテクノロジーが導入され、利便性やエネルギー効率を高めている。
これらの技術をどこまでどのように取り入れるべきかについては、適切な現状把握と導入費用対効果の見極めが不可欠となる。自社の知見やリソースのみによる判断が難しい場合は、専門家のサポートを受けるのも有効だ。
スマートビルが企業と社員にもたらすメリット
スマートビルがビルオーナーやテナント企業、そこで働く人びとや社会にもたらすメリットは以下のように多岐にわたる。
エネルギー効率の最適化
スマートビルは、エネルギー消費を効率的に管理し、コスト削減と環境負荷の軽減を実現する。IoT技術を駆使して、室内の使用状況に適応し照明や空調を自動で調整することで、無用なエネルギー消費を削減できる。
快適な環境づくり
温度、湿度、酸素濃度を管理し、混雑を緩和することで、利用者にとって快適な環境が提供される。データの可視化と分析により、空調や換気の最適化が実現し、居住性の向上が期待できる。
セキュリティの強化
IoT機器によるリアルタイムの監視によって、人の動きや入退室の状況を把握し、セキュリティリスクに迅速に対応できるようになる。これにより、ビルの安全性は大きく向上する。
建物管理の効率化
スマートビルは、ビル管理に関連するあらゆる業務の効率化や省人化を実現する。
具体的には清掃ロボットや警備ロボットの導入による省人化、エレベーターやエスカレーターの効率運用、会議室やトイレの空き状況確認、利用者や来店者のデータ収集・分析などが挙げられ、これらの機能はビル管理業務の負担軽減とコスト削減を促進する。
経済性とエコロジーの両立
スマートビルは省エネルギー効果と経済性を両立させる。運用コストの削減は、ビルの経済的価値を高めるとともに、環境に優しい建物としての付加価値も創出する。
業務効率化
スマートビルでは、出退勤の自動化やフロア内の警備などAI技術を活用した管理システムによって業務プロセスが効率化される。社員はより快適な環境で作業に集中でき、生産性の向上が期待できるだろう。
スマートビルはコスト削減や管理効率化、快適な執務環境と生産性向上まであらゆる方面にメリットが多い
スマートビルの課題とデメリット
スマートビルは現在も進化を続けており、施設内の快適性や利便性を向上させるというメリットに対し、場合によっては以下のようなデメリットも予想される。その対策もあわせて紹介する。
導入コスト/メンテンナンスコスト
スマートビルの導入には多額の初期費用が必要であり、運用コストも従来より高額になるケースが多い。新築であれば建設コスト、既存建物を改修する場合はテナントとの調整費用も考慮する必要がある。
施設内の各所にセンサーや制御・管理機能を持った機器を導入するため、そのメンテナンス費用やシステム利用料も発生する。
無論、長期的な視点で見れば業務効率化や省エネ化でコストを回収できる可能性はあるが、導入には慎重な検討が求められる。
セキュリティリスクの増大
スマートビルではビル全体のセキュリティがシステムに依存しがちで、セキュリティへの人的コストが削減できる一方で、ウイルスや不正アクセスによるデータ漏洩やシステム破壊による損害が発生する可能性がある。
インターネットに接続されているスマートビルのセキュリティシステムは常に更新を行って最新の状態に保ち、不正アクセスやウイルス攻撃への警戒が必要である。
また、システムだけでなく、管理する人間にも適切なセキュリティ教育と最新の脅威に対応できる能力が求められる。
システムトラブル時の被害
IoT機器やシステムの故障は、ビル内の機能停止を招くなど、大規模な影響を及ぼす。緊急時に備えたオペレーション計画の策定・マニュアルの準備・備電源の確保など、迅速な対応ができる体制の構築が不可欠である。定期的なシステムメンテナンスも欠かせない対策だ。
スマートビルから考える新しいオフィスの在り方
スマートビル化により、これまで難しかった管理の効率化および職場環境改善の可能性が高まる。スマートビルがもたらす、具体的な新しいオフィス像の例を紹介する。
IoTを活用したプロセス改善
オフィスへのIoTセンター設置など、テクノロジーの採用が加速した背景には、コロナ禍を機に、感染拡大防止の観点からオフィスの衛生環境対策が不可欠となったことがあげられる。
オフィスやビルのエントランスにIoTセンサーを組み込むことで人の手を介さず訪問者の温度を自動で計測することが可能になった他、センサーで空調の湿温度を管理してオフィス空間の快適性と衛生度が両立できるようになった。
IoT活用は変化を続けるオフィスへの様々なニーズに対応できる要素を持ち合わせており、今後さらに重要な役割を果たすと考えられる。
オフィスの脱炭素化への取り組み
IoTをはじめとするテクノロジーは、深刻化する地球温暖化の問題解決にも寄与する。世界的な炭素排出量の一部が建築物由来であることが示されているなか、オフィスビルによる積極的な脱炭素化が求められており、IoT等のテクノロジーはここで重要な役割を果たしている。
不動産テクノロジーのIoTアナリティクスは、センサーを用いて、温度、二酸化炭素濃度等のオフィス環境データを集め、分析し、環境状況を把握することができる。また、照明、空調を自動的に制御し、省エネルギー対策を行うことも可能だ。IoTをオフィスへ採用 する上で、プロセスだけでなく脱炭素化等の環境問題への取り組みを目的として認識しておくことが重要だ。
柔軟な働き方の実現
スマートビル化には、フリーアドレスやABW、リモートワークなど柔軟な働きの実現をサポートする効果もある。
センサーによる社員の位置情報把握やAIカメラによる空席状況の確認システムによって、社員はオフィスの利用状況をリアルタイムで把握でき、最適な場所やポジションで仕事に取り組むことができる。またビデオ会議システムやコラボレーションツールの導入で、遠隔地の社員ともスムーズなコミュニケーションが可能となり、場所を選ばない働き方が実現できる。
これらの技術は、働き方の多様化が進む現代において企業の競争力向上にも寄与するだろう。
コミュニケーションの活性化
スマートビルは、偶発的な出会いや会話を生み出す仕掛けによって社内コミュニケーションの活性化も促す。
AIカメラやセンサーで収集したデータを活用し、社員の行動パターンやオフィスの利用状況を分析することで、コミュニケーションが生まれやすいエリアや時間帯を特定できる。その情報に基づき、ラウンジやカフェスペースの配置を最適化したり、交流イベントを企画したりすることで、社員間の自然な交流を促進できる。
社員のウェルビーイング向上
スマートビルは、社員のウェルビーイング(心身の健康と幸福)向上にも貢献する。オフィス内の温度、湿度、CO2濃度を最適に制御することで快適な作業環境を提供できるほか、AIカメラを活用したストレスチェックシステムを導入すれば、社員のストレス状態を把握し、早期に対策を講じることが可能となる。
IoTを活用したスマートビルの成功事例
脱炭素化を目指したサステナブルな建物への関心が高まっているなか、IoTを駆使した省エネ化への取り組みが見られ始めている。省エネ対策を掲げ、IoT技術を活用した大型複合商業施設の事例では、空調、照明の消費電力削減を図り、実施前に比べ共用部電力使用量を約30%削減という成果に繋げ、省エネ大賞にも選定された。
IoTなどのテクノロジーによる省エネや脱炭素化という社会的責任を果たす施策は、オーナーやテナント等、建物全体のイメージを向上させるだけでなく、ESG投資としての評価も高くなる。このような多角的な視点でIoTを活用していくことは、欠くことのできない戦略的要素となってくるだろう。
IoTセンサーでビッグデータを収集
スマートビルはIoTセンサーを通じて膨大なデータを収集することができる。いわゆるビッグデータをAIによって自動分析すれば、ビルのパフォーマンスと事業目的のつながりを確固としたものにできる。業務上・戦術上のワークプレイス管理はスタッフの生産性を支えるアルゴリズムに委ねられるだろう。近い将来、ビルは建物利用のデータを個別のスタッフの移動や業務習慣と組み合わせて、スタッフ間のコラボレーションを促し、共同作業を増加させて事業の成功を牽引できるようになる。
より業務的なレベルでは、スマートビルはパワー・オーバー・イーサネット技術を用いて個別端末(テレビ、PC、机上のランプ等)を監視し、必要に応じて遠隔操作でこれらのスイッチをオフにして建物のサステナビリティと費用効率を向上させる。
海外のスマートビル事例
最も革新的なビルには、既にこうしたソリューションのいくつかが組み込まれている。アムステルダムにあるデロイトのジ・エッジはその好例といえそうだ。30,000を超えるIoTセンサーが建物内に設置され、社員はアプリを通じて駐車スペースやデスク、更には同僚を見つけることができる。センサーは温度・湿度、人の動き、照明、二酸化炭素濃度の監視にも使われている。この結果、比較対象となるオフィスビルよりも電力消費量が70%少なくなる。
日本のスマートビル事例
日本のスマートビルの先進的な事例の1つが「東京ポートシティ竹芝」だ。AIやIoTを活用してビル内外の人流データや環境データを収集・解析し、快適な環境整備と効率的なビル管理に役立てるスマートビルのモデルケース構築を目指している。
また、2019年竣工の「渋谷ソラスタ」ではIoTを導入したスマートビル化を推進。在館者の位置情報、トイレ・屋上ラウンジの混雑度、空調の調整、外部の気温や雨の状況、来訪者の受付予約などを席にいながらにして確認・操作できるシステムを導入するなど、本格的な「スマートビル」時代が日本にも到来している。
IoTがオフィスを効率化
スマートビルは近々、ビルの設計やパフォーマンスの最適化を超えて、ワークプレイスの設計方法自体に影響をもたらしつつある。IoTセンサーはオフィスビル内のスペース利用に関するデータを蓄積し、このデータの分析から業務のパターンや人の行動に関する重要な情報が明らかになる。これによってオフィススペースが最適化され、個人のニーズを核心に据えた事業戦略が策定される。簡単にいえば、ビルが社員のニーズを満たすために適応し、その逆ではなくなるのだ。
オフィスにおけるIoTセンサーの活用事例としてはオフィス利用率調査などが挙げられる。これまで感覚的、もしくは調査員が目視で調査していた利用率をIoTセンサーで24時間365日捕捉し、より詳細なデータを収集することが可能になる。現在のオフィス環境において利用率が低い余分な座席を見極め、スペース効率化を実現できる他、1回あたりの会議室の利用人数を調査し、会議室の数や広さを調整することが可能になる。
また、IoTセンサーは照度や室温なども計測でき、省エネを実現しながら快適かつ健康に過ごせる空間づくりに生かすことも可能だ。
IoTをはじめとするテクノロジーは既に企業がパフォーマンスとユーザー・エクスペリエンスを向上させる道具として多くのオフィス空間で受け入れられている。当然ながら、社員の動きを監視することはプライバシーに関する問題を生じさせる。しかし、こうしたテクノロジーは社員のユーザー・エクスペリエンスを向上させるために利用されると証明できるならば、社員はその採用を支持するだろう。
労働者はこうしたシステムが勤務中に有形の利益をもたらすと認識すれば、プライバシーについても承認する可能性が高まる。
米国の有力な銀行でも、コールセンターの社員の生産性に格差がある原因を特定するため、ソシオメトリック・バッジが使用された。最も生産性の高い社員が一緒に休憩をとることが明らかになると、この銀行は社員の休憩時間を調整して交流を促し、生産性を10%向上させたのである。
ソシオメトリック・バッジや類似のテクノロジーを大規模に適用できるようになれば、ワークプレイスの設計変更がビジネスに与える影響をリアルタイムで評価することが可能になる。未来のオフィス は、端末やデータで武装し続ける。
スマートビルとワークプレイスの未来
2030年までに、戦術上・業務上のワークプレイス管理は主に無数のデータセットを分析するアルゴリズムが実施するようになると予想している。ビルは所在に関するデータをコーポレート・データベースの情報やソーシャル・メディアと連携させて、スタッフ間の交流を促すことができるようになるだろう。
ワークプレイスは近い将来、あらゆる事業の管理職チームの一員となる。例えば、あるプロジェクトに従事する社員に別の専門家が近くにいることを知らせて、打ち合わせを提案するのである。職場の電子メールの自動スキャンも事前に会議を提案することに役立つだろう。
「どこで働くか」だけではなく「どのように働くか」を根本的に変化させる急速な技術発展を目の当たりにする変革期が訪れている。近い将来、成功する企業はテクノロジーを業務の中核に据えるようになり、我々の職務生活は全く異なったものとなるだろう。
オフィスへのIoTセンター設置など、テクノロジーの採用が加速した背景には、コロナ禍を機に、感染拡大防止の観点からオフィスの衛生環境対策が不可欠となったことがあげられる。