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はじめに

1973年、「大阪大林ビル(現北浜ネクスビルディング)」と「大阪国際ビルディング」が竣工した。大阪初の100m超のオフィスビルとして、通称“黒ビル”、“白ビル”と呼ばれるランドマークビルが誕生した。以後、半世紀の時を経て、2024年に大阪オフィスマーケットは過去最多の新規供給を迎える。本項ではこの新規供給が大阪オフィスマーケットにどのようなインパクトを与えるのかを考察する。

図1:大阪オフィスマーケットの新規供給動向 出所:JLL日本

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2024年の大量供給は「過剰」ではない

本稿のタイトルを「2024年 過去最多の大量供給を迎える大阪オフィスマーケット」としている。これが過剰供給を意味するのかどうかについて言及したい。

結論を先に述べれば、筆者は「過剰」という見方をしていない

2024年の新規供給量は確かに単年では過去最多であるが、単年の新規供給だけで大阪のオフィス市況を判断すべきではない。

供給のボリューム面に着眼すれば、前回の大量供給期(2008-2013年)は26.3万坪、平均4.4万坪。一方、今般の新規供給集中期(2022-2027年)の新規供給量は20.3万坪、1年あたりの新規供給量は3.4万坪であり、前回を下回っている。また、その後の8年間(2014-2021年)は新規供給抑制期となり、同期間の新規供給は8.4万坪、1年あたりの新規供給量は1.1万坪に減っている。

新規供給抑制期を迎え、大阪ではオフィスの著しい需給のひっ迫を招き、多くのテナント(企業)が十分なオフィススペースを確保できず、需要が潜在する結果を招いた。途中、コロナ禍となったために結果的に潜在した需要が顕在化することはなかったが、足もとではオフィスを拡張する動きや立地やビルスペックを改善するために移転をしたいと考えるテナントのニーズが再び増えている。

新規供給集中期(2022-2027年)の動向

今般の新規供給集中期(2022-2027年)の進捗は 2023年12月末時点で26%が竣工済、同期間に竣工済のビルの稼働率は88%

今般の新規供給集中期(2022-2027年)の進捗は 2023年12月末時点で26%が竣工済、同期間に竣工済のビルの稼働率は88%となっている。竣工前のリーシング活動が活発に行われるタイミングがコロナ禍であり、テナントの動きに鈍さがあった上に大阪では高額賃料帯となるビルが多数含まれる中でのこの稼働率は順調な進捗といえる。

図2は大阪オフィスマーケットにおける今般の新規供給集中期(2022-2027年)のグレード・エリア別の新規供給量の推移を示したものである。

グレード別にみると、今般のAグレードが93%、 Bグレードが7%となっている。エリア別にみると、梅田46%、淀屋橋31%、本町10%、その他13%となっており、大阪を代表する3つのオフィスエリアが全体の87%を占めている。今般の新規供給集中期の主役はAグレードかつ大阪屈指の好立地のビルであることが鮮明となっている。

2024年の新規供給の目玉はエリアとしてみれば梅田であろう。「JPタワー大阪」、「イノゲート大阪」、「グラングリーン大阪」は大阪を代表する新たなランドマークビルとなる。いずれもオフィスだけではなく、商業、ホテル、住宅、エンターテイメントなど多岐にわたる複合開発である。

これらの開発によって梅田は「働く、遊ぶ、暮らす」街として、エリア全体の地域ポテンシャルをさらに向上させるための起爆剤となろう。リーシング状況は個々に濃淡あるものの、引き合いを含めると総体的に50%程度とみられる。

大阪では経済活動が本格的に回復しオフィス需要が戻りつつある 画像提供:PIXTA

大波乱はない

こうした背景を踏まえ、筆者の考えるメインシナリオは、オーナーの募集条件とテナントの予算が双方10%程度歩み寄った条件で着地するとみられる。この条件下であれば、かつて新築のランドマークビルが高稼働するまでに2-3年を要したようなことにはならず、今般の新規供給集中期に大阪オフィスマーケット全体に大きな波乱をもたらすことにはならないだろう。

【後編】では、大量供給による賃料・空室率への影響を詳細に分析すると共に、大阪オフィスマーケットの今後の行方について考察する。

【後編】へ続く

オフィスデータの定義

  • 調査対象エリア:大阪市中心5区(北区、中央区、浪速区、西区、淀川区)のオフィス集積エリア
  • グレード:Aグレード(延床面積:15,000㎡/4,538坪以上、基準階面積:600㎡/182坪以上、築年数:1990年竣工以降)、Bグレード(延床面積3,300-15,000㎡/1,000-4,538坪未満、築年数:1982年竣工以降)