今、需要が高まる「環境不動産」とは?
近年の地球環境の悪化にともない、不動産に対しても環境配慮の需要が高まっている。環境性能が高く安心安全で良好なマネジメントがなされている不動産を「環境不動産(Environmental Real Estate)」と呼ぶ。具体的には、以下のような性能を備えた不動産が環境不動産だといえる。
投資市場においても、従来のように収益等の財務情報だけによらず、サステナビリティ(Environment)・社会的貢献(Social)・不正・不祥事を起こさない事業活動(Governance)に対する取り組みによって長期的な視点で成長性やリスクファクターを評価するESG投資に関心が高まっている。不動産においてもESG投資がスタンダードとなる昨今、指標として注目されるのが「GRESB」 だ。2009年に欧州年金基金が中心となって創設し、不動産やインフラストラクチャ―を保有・運用する企業やファンドのESG配慮を測る国際的なベンチマーク評価となっている。
不動産分野でGRESBの評価は、マネジメント・パフォーマンスの2つの評価項目で指標を点数化している。GRESB参加企業の中ではパフォーマンス項目の達成が遅れている企業が多く、この分野の改善向上が不動産価値を高める鍵となっている。
環境不動産がもたらすESG不動産投資の促進
不動産テックを活用した環境不動産への舵取りは、今後のESG不動産投資の需要の高まりに応えていく重要な一手となる
環境不動産の価値を入居者・オーナー・デベロッパー・投資家等、建物を取り巻く多様な関係者に伝えることは必須だが、具体的にはどのようなものが挙げられるのか。実際の事例に基づく環境不動産の新しい価値について解説していこう。
省エネルギーによるコスト削減
大型複合商業施設の事例では、2015年度から本格的に省エネ対策を推進し、経済産業省の「平成30年度エネルギー管理優良事業者等関東経済産業局表彰」、一般財団法人省エネルギーセンター主宰の「2019年度省エネ大賞」でも省エネルギーセンター会長賞を受賞した。IoT(モノとインターネット)技術を駆使し、センサーで測定した温度や照度を基準に自動的に空調と照明を制御し、高い省エネ効果を発揮した点が評価されている。
環境の質改善によるオフィス利用者のウェルネスの向上
オフィスビルや商業施設などの環境不動産が目指す価値は、省エネや地球環境への影響はもちろんだが、そこで働く人々のウェルネスという視点も欠かせない。アフターコロナでオフィス回帰が進む2021年以降、建物の外構・内装・管理・ガバナンスまで含めた性能や仕様、取り組みといったハードとソフト両面のウェルネスへの投資は中長期的に不動産価値を向上させるものといえる。
今後、あらゆる業界においてサステナビリティが重要視される社会では、不動産にも持続可能かつ責任ある運営が求められる。保有不動産を最適化し、将来を見据えた価値向上がこれからさらに必要不可欠となってくるだろう。