ライフスタイルホテルとは?【2026年最新トレンド】 - 定義の変化・4つの新タイプ・投資時の注意点をJLLのホテル専門家が解説
著者
中村 健太郎
ライフスタイルホテルとは?「デザイン+α(体験)」へ定義が変化
ライフスタイルホテルとは、「その土地ならではのユニークな体験価値を提供し、宿泊そのものが旅の目的になるホテル」と定義したい。
かつては「デザイン性の高いブティックホテル」と混同されていたが、市場が成熟した2026年現在、その定義は大きく変化している。国内外のホテル動向に詳しいJLL日本 ホテルズ&ホスピタリティ事業部 シニアヴァイスプレジデント 中村 健太郎は、成熟期に突入したライフスタイルホテルの定義を次のように改めた。
①地域固有の文化や周辺環境を活かした個性的なデザインで「宿泊そのものが旅の目的になる」ホテル
②宿泊客がホテルに滞在することでアートや食、伝統工芸、地域の祭りなどに触れることで記憶に残る印象的な「体験」ができるホテル
「デザインが良いのは当然として、デザインに“+α”の体験価値を組み合わせた、多様なホテルが登場している」(中村)
では、なぜこのような変化が起きたのだろうか。ホテル市場全体のデータからその背景を読み解いてみた。
【データで解説】なぜライフスタイルホテルが増加しているのか?
ライフスタイルホテルが増加している背景には「ホテル供給の増加による差別化の必要性」と「宿泊客の価値観の変化」という2つの大きな要因が考えられる。
背景①:ホテル供給の増加と差別化の必要性
厚生労働省の公開データをもとにJLL作成
上記のグラフは東京都のホテル・旅館施設数の推移を示したものだ。
コロナ禍による行動制限によって一時的に訪日客数は激減したが、インバウンドの中長期的な増加を見越し、2024年からホテルの新規供給数は増加傾向にある。中村が東京都のホテル・旅館営業施設(室)の新規供給数を調査したところ、2016-2025年の10年間で約1.4倍(43%増)を記録した。
ホテルが増えれば宿泊客の獲得競争が激化する。中村は「特にビジネスホテルのような宿泊主体型ホテルは客室のスペックだけで差別化するのが難しくなっている。そのため、独自のコンセプトとサービスで競合と差別化しやすいライフスタイルホテルに注目が集まっている」と分析する。
実際に、中村が調査したところ、2023-2025年に都内で開業したホテルを見ると、ライフスタイルホテルは宿泊主体型ホテルに迫る勢いで開発されていることが明らかになった。
JLL日本 ホテルズ&ホスピタリティ事業部の調査により作成
背景②:「体験価値」を求める宿泊客の増加
ライフスタイルホテルが支持されるもう1つの要因は、宿泊客がホテルに求めるものが大きく変化したためだ。
かつてホテルの価値は「立地」や「高級感」で測られがちだった。しかし、SNSの普及などにより「そこでしかできない体験」を重視する宿泊客が増えている。
中村は、その象徴的な事例として2014年に開業した「アンダーズ東京」の成功を振り返る。
「開業当時の虎ノ門エリアは大手町や銀座、日本橋といったオフィスの超一等地と比較すると知名度等で後れを取っており、発展途上のエリアだった。しかし、高級感を備えたライフスタイルホテル(アンダーズ東京)が開業したことで他のエリアにはない特色を生み出すことができ、エリアのブランディング効果と立地のマイナス面を補う集客効果を見せた」(中村)
開業当初は懐疑的にみられていたが、アンダーズ東京が「泊まること自体が目的になる」ことを証明し、ホテルの客室単価(ADR)も高水準を記録。これによりライフスタイルホテルの事業性を高く評価するデベロッパーや投資家が増加した。
このように「差別化したいホテル側」と「特別な体験を望む宿泊客側」のニーズが合致した結果、ライフスタイルホテル市場は成長することになった。
地元の伝統料理を作る体験教室を提供するライフスタイルホテルも存在する(画像はイメージ)
ライフスタイルホテルの供給状況
「アンダーズ東京」はラグジュアリータイプに属するが、外資系のライフスタイルホテルはラグジュアリーからカジュアルまで幅が広い。例えば「ブルガリ ホテル 東京(2023年開業)」やアマンの姉妹ブランド「ジャヌ東京(2024年開業)」などがラグジュアリータイプとされるが、アッパーアップスケールに分類される「ハイアットセントリック銀座東京(2018年開業)」の登場によってライフスタイルホテルへの注目度が一気に高まった。銀座の「高級」、「上品」、「洗練された」イメージと外資系ライフスタイルホテルのデザイン性が相乗効果をもたらした典型例だ。そして、ホテルの収益性を測る重要指標の1つであるADR(客室平均単価)が高く取れ、ライフスタイルホテルに高い宿泊料金を支払う価値があると考える客層が多いことを証明した。
それ以後「ホテルインディゴ 東京渋谷(2023年8月開業)」や「キャプション by Hyatt 兜町東京(2025年10月開業)」などのカジュアルブランドの新規開発が進む一方、日系企業によるライフスタイルホテルの開発にも拍車がかかっていった。
地域ならではのアクティビティを楽しめる点もライフスタイルホテルの魅力といえる(画像はイメージ)
2026年におけるライフスタイルホテルの四大トレンドと代表事例
近年における日系ライフスタイルホテルの先駆者といえば、旧ベルコモンズ跡地の青山の新たなランドマークホテルとしてPlan・Do・Seeが手掛けた「青山グランドホテル(2020年8月開業)」や、野村不動産が2018年から事業展開しているノーガホテルが挙げられる。これらは「デザイン性で差別化を図った好事例」(中村)である。
一方、市場の成熟に伴い、現在のライフスタイルホテルはデザイン性のみならず、特徴的なコンセプトを持つ多様な商品群へと進化を遂げている。中村は、こうした最新動向を受けて、特に多様化が著しい日系ライフスタイルホテルを以下の4つのタイプに分類している。
出所:JLL日本
トレンド①:地域密着型
ライフスタイルホテルの定義の1つである「宿泊そのものが旅の目的になる」ことを追求したのが「地域密着型」だ。ホテルがガイド役となり、ディープな地元体験を提供することを重視(特化)したタイプといえる。
例えば、星野リゾートの「OMO」ブランドは「ご近所アクティビティ」と称し、ホテルスタッフが周辺の街を案内するツアーなどを提供。地域特有の文化・歴史などにフォーカスし、宿泊を通じて、その街のファンを増やしている。こうした「地域密着型」は地元民も気づかない新たな魅力を発掘・宿泊客に訴求するため、地元の知名度向上や地域活性化にも大きく貢献する。地方創生の推進とも相性が良く、地域貢献度が極めて高い点も投資家やホテルオペレーターにとって見逃せない点といえるだろう。
トレンド②:体験型
食やアート、ウェルネスなど、特定のテーマに関する深い「体験」をホテルのコンセプトにしたタイプだ。
例として2023年11月に東京・浅草で開業した「SAKE Bar Hotel 浅草」が挙げられる。和モダンのデザイン性に加え、宿泊料金に日本酒のフリーフローが含まれるなど、日本酒を徹底的に楽しめる「体験」を最大の強みとしている。開発を手掛けたシマダグループは2020年に酒造事業に参入し、自社事業の強みをホテル運営に付加することで、本格的な日本酒「体験」を差別化要因としている。
「体験型の成功の鍵は、競合ホテルが簡単に真似できない独自の『体験』を提供できるかどうかにかかっている。同ホテルのように酒造や醸造元と連携するなど、一歩踏み込んだ企画力が求められる」(中村)
トレンド③:プライベート型
公園の緑や静かな環境を活かし、喧噪から離れた「隠れ家」のような落ち着いた滞在体験を提供する。
典型例はテイクアンドギヴ・ニーズ(TRUNK)が企画・運営する「TRUNK(HOTEL) YOYOGI PARK(2020年8月開業)」だ。代々木公園に隣接する閑静なロケーションや、緑豊かな眺望と東京の景観を見下ろすことができるルーフトッププール・ラウンジが評価され、ミシュランガイドが優れた宿泊施設を選出する「ミシュランキー」において2024年に国内初の1ミシュランキーを獲得した。
トレンド④:アーバンリゾート型
再開発エリアなどの都心部にありながら、非日常的なリゾート体験ができる新タイプ。代表例は2026年3月に開業した大規模再開発「大井町トラックス」内の「ホテルメトロポリタン 大井町トラックス」が挙げられる。客室は「FOREST COTTAGE(森小屋)」をイメージした配色・デザインで安らぎを感じられる空間とした他、周囲に高層建造物が皆無のため、眺望に優れ、眼下に広がる車両基地を一望することができる。その他、レストランは「鉄道旅」、ルーフトップバーは「森の秘境」をコンセプトにデザインしおり、鉄道ファンには堪らないユニークな体験に昇華している。
なお、同ホテルが位置する大井町エリアはオフィス立地として認知度は決して高くない新興エリアであるため、話題性の高いライフスタイルホテルを開業することで地域の知名度向上や、事業主であるJRの本業(鉄道事業)を取り入れたユニークな体験(車両基地の眺望など)を提供するなど、ライフスタイルホテルの魅力をすべて取り入れて開発されたように見受けられる。
「都心5区に比べて見劣りする立地性であるがゆえ、新規供給されたオフィス床をいかに埋めていくかが最も重要だと思われる。そういった意味では、ユニークなライフスタイルホテルがテナント誘致にも一定以上の効果を発揮するのではないか」(中村)
宿泊客に選んでもらうためにもライフスタイルホテル投資は初期調査が重要(画像はイメージ)
ライフスタイル投資を成功させる3つのポイント
今後も新規供給が続くと予想されるライフスタイルホテル。投資を成功させるためには、何に注意すべきだろうか?
中村は次の3つのポイントを挙げる。
ポイント①:「デザインだけ」に頼らない付加価値を
デザインの良さはもはや前提条件。デザイン性にどのような『体験価値』を上乗せできるかが、中長期的な競争力を左右する。アイデア次第で、まだ市場にない「ブルーオーシャン」を見つけることは十分に可能だ。
ポイント②:利益効率の高い事業モデルを組む
伝統的なホテルと違い、ライフスタイルホテルはレストランや宴会場の設置条件などの出店クライテリア(方針・規制)が厳格ではない。ADRが上昇する一方、レストランや宴会部門の収益性が伸び悩んでいる現在のホテル市場において、利益率の高い客室にリソースを集中できるライフスタイルホテルは事業性の観点からも魅力的だ。
ポイント③:専門家の知見を活かし初期の見極めを
「体験型」や「地域密着型」などタイプが多様化しており、どのタイプがその場の最適解となるか、この初期の見極めこそが投資の成否を分ける。JLLも「どのようなホテルを誘致すべきか」というオペレーターセレクションに関する相談が急増しており、多様化した市場だからこそ初期検討の重要性が高まっている。まずは、ホテル誘致の経験豊富な専門家にフィージビリティスタディを依頼し、適正なホテルタイプを見極めることが先決だ。
ホテル誘致・投資のご相談はJLLへ
JLLでは、全世界約350名の専門スタッフによるグローバルな知見と、日本市場での豊富な実績を活かし、ライフスタイルホテルのフィージビリティスタディ(事業性調査)から、最適なオペレーターの選定、契約交渉まで、プロジェクトの全段階をサポートします。
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