不動産業界のDX化はなぜ遅れているのか?
コロナ禍によって不動産業界のDX化は急速な進展をみせているが、従前の不動産業界はテクノロジーの導入が遅れていたとされる業界であった。
一般的に取引金額が大きく、一度契約したら簡単に買い換えなどができない重要な資産である不動産を取り扱うため、不動産業界の商慣習は長らく紙ベースのアナログを前提にしていた。オンラインのECサイトで「ワンクリックで購入」というわけにはどうしてもいかない。不動産に投資・賃借するには実際に物件を内覧した上で、正式な契約書類を交わすことが必要不可欠だった。
また、不動産業界ではつい最近まで手続き上、書面の発行と押印が義務化されていた。DXの第一歩はペーパーレス化とされるが、法律上それが難しかったのだ。その法律は2022年5月に施行された宅建業法の改正法によって重要事項説明書などの電子化が可能になったものの、長年の商習慣はなかなか変えられないようだ。
大手デベロッパー・不動産会社を先駆者としてDX化は進みつつあるが、いまだオフラインでの業務に依存している不動産業者は少なくない。電話やFAX、紙のチラシや店頭の間取り図を掲載するなど、不動産業界全体がDX化に舵を切ったとは言い難い状況だ。
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従来の不動産業界はどうしてもアナログな業務フローが多かったが、そのような商習慣も不動産テックによって変革されつつある
一方、不動産業界でDX化が進むに伴い「不動産テック」が注目を集めている。テックとは「テクノロジー」の略。つまり、不動産DXに関係するテクノロジーを扱う企業のことを不動産テック企業という。
不動産テックには扱うサービス領域によって細分化され、次の12ジャンルが知られている。
- ローン・保証
- クラウドファンディング
- 仲介業務支援
- 管理業務支援
- 価格可視化・査定
- 不動産情報
- 物件情報・メディア
- マッチング
- VR・AR
- IoT
- リフォーム・イノベーション
- スペースシェアリング
不動産テックの台頭によって、不動産業界におけるDX化も急速に進みつつある。従来の不動産業界はどうしてもアナログな業務フローが多かったが、そのような商習慣も不動産テックによって変革されつつあるようだ。