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アジア圏における日本のゲートシティを目指す福岡市。その中心市街地である天神地区が大変貌を遂げています。「100年に1度」とも称される連続的な都市開発事業は、まさに1つの街を作り変えるほどのインパクトから「天神ビッグバン」と称されています。

天神ビッグバンとは?

そんな天神地区ですが、「天神ビッグバン」による複数の大規模再開発によって街全体が生まれ変わろうとしています。

天神ビッグバンとは、福岡市が主導する面的な再開発プロジェクトです。対象エリアは天神交差点から半径500m、面積は約80haに及びます。当該エリアにおいて国家戦略特区や地区計画を活用し、これまで航空法で規制されていた高さ制限を緩和すると共に容積率にボーナスを付与し、既存建物の更新が限定的だった天神地区での建て替えを促進することが目的です(参照:福岡市)。

天神地区は地震リスクのある警固断層があり、築年が経過し耐震性に課題がある既存建築物をBCPやサステナビリティに対応した最先端ビルに建て替わることで、エリア全体の安全性を高め、企業や地域住民、観光客などの来街者が安心して過ごせる街づくりをめざします。そして、企業誘致の受け皿として大規模なオフィス床の供給とスタートアップ支援施設を整備することで「雇用創出」も目指しています。

JLLの担当者は「これまで福岡市は空港が近く利便性が高い反面、航空法の高さ制限によって高層ビルの建築ができないというジレンマを長く抱えてきたといいます。既存ビルをみるとせいぜい地上10階程度が限界だった」と説明します。

それが、天神ビッグバンでは航空法の高さ制限の特例承認をうけ、天神1丁目は上限で地盤面から100mの高さまで建築物の建築が可能となりました。そして、画地の併合や地区整備計画を策定することを条件に、2026年末(当初2024年末)までに竣工するビルには大幅な容積率の緩和が認められるので、民間投資による再開発を喚起され、アジアの拠点都市にふさわしいビジネスゾーンが創出されることになりました。

福岡市では当初「2024年度末までに30棟の建替え」を見込んでいましたが、最終的に2030年代までに約100棟の建替えが見込まれています。

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大規模オフィスにIT企業が進出

容積率緩和などの「天神ビッグバン」認定プロジェクトは9件(2025年10月時点)存在しますが、ボーナス認定に向けて検討が進められている3プロジェクトが浮上しています。

天神ビッグバンの記念すべき第一号物件となったのが2021年9月に竣工した「天神ビジネスセンター」。ジャパネットホールディングスが東京の本社機能を同ビルに一部移転したことで大きな話題となりました。

それを皮切りに、旧大名小学校跡地の再開発事業としてラグジュアリーホテルやスタートアップ育成施設、広大な芝生の広場といった多様な機能を有する「福岡大名ガーデンシティ」が2023年3月に竣工。2024年12月には「ヒューリックスクエア福岡天神」と「ONE FUKUOKA BLDG.(ワン・フクオカ・ビルディング)」、そして、2025年4月に「天神ブリッククロス」、2025年6月に「天神住友生命FJビジネスセンター」が相次いで竣工しています。

これらの再開発ビルは環境性能やBCP対応などの機能に優れ、テナント向けの各種付帯サービスも充実。豊富な緑地や憩いの場となる広場などの公共空間を一体的に整備し、オフィスワーカーだけでなく、来街者や地域住民など、幅広いステークホルダーを惹きつける機能を備えています。

高機能な大規模オフィスが次々供給されたことによる最大の効果として挙げられるのが企業誘致…特に「IT企業の進出・統合移転」が目立っているように見受けられます。

例えば、会計ソフトなどで知られるマネーフォワードは2025年7月に九州・沖縄支社および福岡開発拠点を大名地区から天神地区の「福岡大名ガーデンシティ」に移転すると発表した他、スキマバイト求人で急成長を遂げるタイミーの九州支社が大名地区から天神地区へ移転に言及。クラウドPOSSシステムのスマレジが2025年3月、天神地区の商店街からオフィス兼用のショールームを「HULIC SQUARE FUKUOKA TENJIN」へ拡張移転しています。その他、DX支援のアルサーガコンサルティング、事業共創支援のRelicなども天神地区へ進出・拡張移転を行っています。

少子化によって東京では人材獲得競争が激化しており、IT企業が天神地区に拠点開設する理由の1つとして、若者人口が増加する福岡での採用活動強化が挙げられます。前述したジャパネットホールディングスやマネーフォワードがその好例といえるでしょう。

天神ビッグバン認定プロジェクト9棟

建物名 所在地 竣工年 建物規模 特徴
天神ビジネスセンター 天神1-10-20 2021年9月 地上19階 地下2階 天神ビッグバンの第一号物件。複数ガラスを重ねた「ピクセル」構造の外観が特徴
福岡大名ガーデンシティ 大名2-6-50 2023年3月 地上25階 旧大名小学校跡地に開発された大規模複合ビル。九州初上陸の「ザ・リッツ・カールトン福岡」や緑地広場、人材・企業育成施設などを整備
ONE FUKUOKA BLDG. 天神1-11-17 2024年12月 地上19階 地下4階 旧福岡ビル、天神コア、天神ビブレの跡地に開発。西日本最大級のオフィスフロア
HULIC SQUARE FUKUOKA TENJIN 天神2-3-24 2024年12月 地上19階 地下3階 オフィスの自然換気システムや庭園設置で「感染症対応シティ」への取り組みに注力
天神ブリッククロス 天神3-2-22 2025年4月 地上18階 地下2階(北棟)/ 地上2階 地下2階(南棟) 高い省エネ性能を有し、来街者の憩いの空間を整備
天神住友生命PJビジネスセンター 天神2-14-2 2025年6月 地上24階 地下2階 高さ約113mは天神トップ。最上階にウメを併設
天神ビッグバン開発予定の主なプロジェクト

●天神ビッグバン開発予定の主なプロジェクト(2025年10月現在)

建物 所在地 竣工予定 建物規模 特徴
(仮称)天神1-7計画 天神1丁目 2026年12月 地上21階地下4階 外装に木材を使用したデザイン性、使用電力を再エネ由来
(仮称)天神ビジネスセンター2期計画 天神1丁目 2026年6月 地上18階地下2階塔屋2階 連続する緑地空間、街に開かれた「アクセラリウム」などの充実したワーカーサポート機能

出所:福岡市HPを元にJLL作成

見上げると大規模ビルが視界に飛び込んでくる光景

頭上を覆う大規模ビル 画像提供:PIXTA

オフィス街として大口需要の受け皿に

オフィス機能の充実度も街に変化をもたらす大きな要素になっています。

ワンフロア500坪超のオフィス床


ワンフロア当たりの貸床面積500坪以上のオフィス床が供給され、地元企業だけでなく、日系大手企業や外資系企業の大口需要にも対応できます。JLL担当者によると「従前、福岡で100坪のオフィス移転プロジェクトがあると大型案件とみなされていましたが、今では500坪、700坪を希望するクライアントが急増しています」といい、再開発が進むにつれて潜在的なオフィス需要が喚起されるようになっています。

「最先端の大規模オフィスが次々と竣工し、比較検討できるようになったことで、これまで様子見をしていた企業がオフィス移転を検討し始めました。立地改善などを目的とした自社ビルから最新ビルへの移転や、分散していた拠点の統合、BCP対応を目的としたサテライトオフィスの需要など、これまで受け皿がなかった大口需要が一気に動き始めたといえます」(JLL担当者)

コワーキングスペース(画像はイメージ)

フレキシブルオフィスのイメージ 画像提供:PIXTA

天神ビッグバン認定プロジェクトのフレキシブルオフィス

●天神ビッグバン認定プロジェクトのフレキシブルオフィス

施設名 開業 事業者 入居ビル
リージャス天神ビジネスセンター 2025年8月 日本リージャス 天神ビジネスセンター
Signature 福岡大名ガーデンシティ 2024年1月 日本リージャス 福岡大名ガーデンシティ
CIC FUKUOKA 2025年4月 CIC Japan Innovation Services ONE FUKUOKA BLDG.
Signature 天神 明治通り 2025年12月(予定) 日本リージャス 天神住友生命FJビジネスセンター
WeWork 天神ブリッククロス 2025年8月 WWJ 天神ブリッククロス

出所:各事業者の発表をもとにJLL作成

これまで天神地区には中小規模のフレキシブルオフィスは少ないながらも存在していましたが、このような大規模複合施設の大口区画で開業するケースが増えており、人気を博しています。

例えば「Signature福岡大名ガーデンシティ」には業界・規模を問わず、多彩な企業からの引き合いが殺到し、稼働率が好調といわれており、天神ビッグバンのコンセプトである「企業誘致」に一定以上寄与しています。

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天神地区のおすすめビル

福岡大名ガーデンシティ
「福岡大名ガーデンシティ」

福岡県福岡市中央区に位置する大規模複合ビル。2023年竣工。建物規模は地上25階地下1階、オフィスの基準階面積804.35坪。天井高2,800㎜。OAフロアあり、制震構造。 最寄り駅は福岡市地下鉄空港線「赤坂駅」から徒歩2分、「天神駅」から徒歩3分。 西鉄天神大牟田線「西鉄福岡(天神)駅」から徒歩6分。「天神ビッグバン」の1つである「旧大名小学校跡地活用事業」として開発され、オフィス・商業施設・ラグジュアリーホテル・カンファレンス施設などを有する。 旧小学校の校庭を活用した敷地内には約3,000㎡の広場「福岡大名ガーデンシティ・パーク」をはじめ、レジデンス、公共館、クリニック、コミュニティ施設が入居する「福岡大名ガーデン・テラス」や、旧校舎を活かしたスタートアップ施設「Fukuoka Growth Next」が隣接する。 同施設に入居するスタートアップ企業や、ガーデンシティのオフィスに入居するテナント企業の交流イベントをはじめ、エリアマネジメントにも注力しており、下層階の商業施設は顧客との会食や接待需要にも対応する。

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