データセンターの新規供給が限定的である理由
しかし、日本国内に目を向けると、オフィスや物流施設、ホテル等の主要アセットと比べると、データセンターの新規開発自体はまだ少ない。一部の不動産プレーヤーがデータセンター開発に注力し始めている段階だ。
新規供給が少ない要因は、データセンターに適した開発用地を見つけるのが難しいためだろう。浅木によると「データセンターの立地選定にあたっては3つのポイントを念頭に十分検討する必要があり、現在は特に電力供給が課題になっている」と指摘する。
そもそもデータセンターとは、コンピューターやネットワーク通信機器といったIT機器の大規模な安定運用に特化した施設を指す。多くのIT機器を常時稼働させるため、冷却設備も含めて膨大な電力を必要とする。また、利用者は通信ネットワークを通じて利用することが主となるため、高い通信品質を確保することが必要である。さらに24時間365日休むことなくサービスを提供し続けることが求められることから、地盤が強固で、津波・洪水等の危険が少ない自然災害に強い立地であることが重視される。これらの特性を踏まえて、浅木が指摘する「立地選定の3つのポイント」は次のようになる。
データセンターでは、オフィス等ほかの施設と比べると大きな電力が必要となる。最先端のデータセンターで必要とされる電力量は、空調機等IT機器以外で消費される電力を含めると1,500~2,000VA/㎡(対延床面積)に達するとされている。仮に延床面積10,000㎡の中規模データセンターを想定すると、必要な電力量は15MVA~20MVAに達する計算である。ところで、電力会社との契約上、受電する電力の大きさによって契約すべき標準電圧が定められている。電力会社によって電圧区分に多少の違いはあるものの、6万~7万Vの特別高圧で受電する必要がある。そもそもこういった大規模な受電環境が最初から整っている立地は限られている。そして、新たに受電する場合には多額の費用負担に加え、申請から3年以上の期間を要することが多い。特に受電までにかかる期間が、現在のデータセンター新設におけるボトルネックとなっている。
2. 通信遅延の問題
3. 自然災害の問題
多数の電子機器を扱うデータセンターにとって水害は避けたいところだ。つまり、洪水や高潮のリスクがある河川沿いや湾岸エリアは基本的にデータセンターにとって敬遠すべきエリアとなる。浅木は「河川に近いエリアや湾岸エリアであっても、既に対策が取られていて洪水リスクや高潮リスクが低い土地もある。国土交通省のハザードマップや各自治体の最新情報をもとに、洪水リスクや高潮リスク、さらに地盤など、様々な角度から自然災害リスクを調べておくとよい」と述べている。
投資を検討する際はデータセンターの専門家に相談するべき
データセンターに適する用地や物件の取得を検討するにあたっては、電力・通信・自然災害リスクの観点などから立地を選定し、加えて既存物件の場合には建物仕様や設備についても様々な点を考慮する必要がある。特に立地選定にあたっては電力確保に時間がかかるという問題があり、設備についても専門知識が求められることから、多くの利害関係者との密接な連携がかかせない。
JLL日本はデータセンターについて投資家の紹介、用地選定、テナント誘致、施設開発・運営管理、最終的な出口戦略まで一気通貫でサポートする専門チームを組成している。データセンター投資を検討する場合、まずは専門家に相談することをお勧めしたい。