エージェントコマース(Aコマース)による不動産市場への影響は? - 豪州で注目される新たな買物体験
著者
Richard Fennell
Nathan Bingham
Kate Low
Holly Irvine
Eコマースを加速させたコロナ禍に端を発し、既存物流網の限界が露呈した世界的なサプライチェーンの混乱、そして人々の消費行動を根底から変えたインフレ圧力…。近年の小売業界は“激動の時代”を次々と乗り越えてきたと言っても過言ではない。そして今、新たな変革の波「エージェントコマース/エージェンティックコマース(以下、Aコマース)」の本格的な導入が目前に迫っている。
Aコマースとは、AIアシスタントが消費者に代わって自律的に商品を調査・比較・購入する一連のシステム(仕組み)を指す。この新たな商流は、不動産セクター全体の需要構造を再定義し、AIを介する経済圏で成長できる物件と、そうでない物件の「二極化」を鮮明にする可能性がある。
そして、その鍵を握るのが「体験価値」を重視した商業施設と高度な物流不動産である。
投資家にとって「守り」となる体験型のリテール不動産
Aコマースは、価格、在庫、配送スピード、利便性といった、おおよそ買物に関わるあらゆる要素を最適化へと導く。そのため、利便性のみを強みにしてきた小売業は、実店舗への依存度が変化する中で、厳しい状況に直面する可能性が高い。
一方、顧客に特別な「体験」を提供する新たな店舗形態が、これまで以上に脚光を浴びることになる。
全国360のショッピングセンターの管理責任者を務めるJLLオーストラリアのリチャード・フェネルは「ショッピングセンターは、これまでも時代の変化に見事な適応力を発揮してきた。問題はAコマースが小売業を変えるかどうかではなく、真の課題は我々の資産がアルゴリズムには決して代替できない『体験』という消費行動をしっかりと捉え、進化し続けられるかどうかである」と指摘する。
「優れたショッピングセンターは、もはや単なる便利な買い物の場所という位置づけではない。地域コミュニティの交流拠点であり、エンターテイメント施設でもあるべきだ。人々は買い物のためだけでなく、楽しい時間を過ごすために店舗に訪れるのだ」(フェネル)
事実、2025年にオーストラリアのリテール不動産市場で記録された140億豪ドルもの取引額は、Aコマースの登場が体験型資産の価値を損なうどころか、むしろ高めていることを物語っている。
2026年2月に発表されたJLLグローバルの「Global Real Estate Perspective(日本語訳版:グローバル不動産マーケットの 展望− ハイライト」でも、ブランドとの関係性を深めるイベントや、オンラインでは決して真似のできないサービスを提供するエンゲージメントハブとしての店舗…すなわち柔軟な体験型リテールへの長期的な需要が続くと分析されている。
JLLオーストラリア インターナショナルキャピタルでオーストラリア・ニュージーランド地域の責任者を務めるケイト・ロウは、アジア太平洋地域では魅力的なリテール投資機会が限られているため、投資家がオーストラリアに目を向けていると指摘している。
「従来のオフィス資産が構造的な課題に直面し、住宅開発も規制で制約がある中、投資家は『守り』となる安定した利回りをリテール不動産に求めている」(ロウ)
社会インフラとして重要性を増す先進物流施設
Aコマースを根幹から支える物流不動産市場も注目を浴びている。
Aコマースは、顧客が自らウェブサイトを閲覧したり、店舗を訪れるという従前の買物行動の“加速化”を意味する。この変化に対応するため、小売業者は「最適な商品を、最適な価格とタイミングで、即座に届ける」という“約束”を果たすべく、サプライチェーンの再構築を迫られることになる。
この領域で成功を目指す小売業者は、顧客体験を最優先に考える必要がある。JLLオーストラリア オキュパイアサービスの責任者を務めるネイサン・ビンガムは「そのためには、自社の在庫量とその所在地を正確に把握し、顧客が『欲しいものを、欲しい時に』確実に手に入れられる体制を築かなければならない」と指摘する。
Aコマースの普及が拡大するにつれ、次のような機能を持つ物流不動産の需要が急増すると予測される。
●迅速な配送を実現するための大都市圏への近接性
●リアルタイムで在庫を可視化できる先進的な倉庫管理システム
●ピッキングや梱包を自動化するテクノロジーを支えるインフラ
●変化し続ける配送戦略に柔軟に対応できるフレキシブルな施設設計
「すべては、サプライチェーン全体の在庫状況を可視化するための優れたシステムにかかっている。この領域は、すでにAIによる最適化が進んでいる」(ビンガム)
多くの小売業者が、AIによる購買体験をスムーズで効率的なものにしようとテクノロジーへの投資を進めている。しかし、その裏側にある物理的なフルフィルメント…つまり配送プロセスに遅延や欠品といった不備があれば、AIが真価を発揮する前に顧客との信頼関係を損ないかねないだろう。
ビンガムは「こうしたリスクがあるからこそ、一貫して信頼性の高いパフォーマンスを提供できる物流不動産は今後も資産価値が下がることはない」と結論付けている。
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※本稿は、JLLグローバルが発表した「How AI shopping agents will reshape real estate」を元に作成しました。一部AIを活用のうえ翻訳・加筆しています。公式な情報が必要な場合、英語の原文をご確認ください。