戦略の取組期間(イメージ) 出所:国際金融都市OSAKA推進委員会
始動期における具体的な目標として、国際金融ワンストップサポートセンター大阪への相談件数を2025年度までに100社/年間、2025年までに金融系外国企業(フィンテック企業含む)の誘致を30社、2024年度までにユニコーン3社、スタートアップ企業300社(うち大学発ベンチャー100社)の創出を掲げている。
国際金融センターの実現性
現在、大阪では大規模再開発が進められており、今後、オフィスに限らず職・住・遊の充実した街に大きく変貌し、外資系企業や新興企業が大阪に事業所開設を検討する機運が高まることが見込まれる。
加えて、2025年度は大阪・関西万博の開催年度であり、万博ではコンセプトである「未来社会への実験場」を体現する多彩な実証実験が行われる。同時に万博に関連する投資や、大阪発デジタル地域通貨の発行が検討されるなど、国際金融センターの実現を後押しするイベントを控えている。
国際金融センターに向けた課題
大阪は外国人にとって働きやすく、住みやすい街となれるか(イメージ)
外資系企業の誘致においては、大阪において外国人(高度外国人材)のコミュニティが形成されるような街になれるかどうかが成否の鍵を握っている
企業の本社・資金・情報などが東京に一極集中するという環境のなか、高度金融・テクノロジー人材、格付け機関、弁護士など金融に関わる専門機関や人材などの人的資本やフィンテック企業の不足など、課題を挙げればきりがない。しかし、この大きな“山”に立ち向かうことが国際金融都市OSAKA戦略の目指すところであり、実現のために多くの課題を乗り越えなくてはならない。
なかでも重要と考えられるのは、外国人にとって働きやすく、住みやすい街であることである。この課題をクリアしなければ、大阪とともに国際金融センターに名乗りを上げる福岡に劣後してしまう可能性もあり得る。
また、大阪と競合する都市は国内だけにとどまらない。こうしたことを踏まえると、喫緊の課題となるのは、高度外国人向けの居住環境の整備である。具体的にはこれらの高度外国人材に訴求するような認知度と教育水準の高いインターナショナルスクールの誘致や、ファミリー向けの外国人専用住宅などの整備などが待望される。外資系企業の誘致においては、大阪において外国人(高度外国人材)のコミュニティが形成されるような街になれるかどうかが成否の鍵を握っていると言っても過言ではない。
こうした課題を乗り越え、今後、大阪が金融に限ることなく国際的な競争力を有する都市となることに期待したい。
執筆者:JLL日本 関西支社 リサーチディレクター 山口 武