CRE戦略コンサルティング業務
敷地面積6,000㎡
BTS物流倉庫
プロジェクトの概要
テルウェル東日本(NTTグループ)は不動産価値の最大化や地域活性化などを目的に保有不動産の利活用を推進している。JLL日本 ストラテジックコンサルティング事業部(以下、JLL)は2011年から同グループが保有する不動産の有効活用施策を継続的に支援するなか、本プロジェクトでは神奈川県平塚市に位置する社宅跡地の有効活用施策の検証・提案を含むCREコンサルティング業務を受託した。
クライアントの不動産戦略方針を踏まえ、資産価値の最大化に向け商業施設、スポーツジムなど多岐にわたる活用ニーズを検証。最終的に配送センターとしてBTS※物流倉庫を活用する生活協同組合ユーコープの誘致を支援した。
3つの課題
当該用地は最寄り駅であるJR平塚駅から直線距離にして2㎞超に位置し、敷地規模は約6,000㎡。用途地域は製薬・食品工場や住宅などが混在する準工業地帯であり、建物解体後は駐車場として暫定利用されていた。「駅からの距離」、「接道要件」、「交通規制」の3つの課題によって活用用途が限られ、クライアントのCRE戦略方針を満たす有効活用策を導き出せずにいた。
1.駅からの距離
当初の施策として俎上にのぼったのは「賃貸住宅」の新規開発による収益化だった。しかし、当該地はJR平塚駅から直線距離にして2㎞以上、交通手段はバス路線となる。駅から距離があり、周辺の賃料相場を勘案しても事業性が乏しいことが明らかになった。
2.接道要件
賃貸住宅の開発計画が頓挫した後、JLLは次なる施策として敷地規模と周辺人口、用途地域に着目。多数のCRE戦略コンサルティング業務を担当してきた経験からスーパーマーケットやスポーツクラブの誘致を企画した。しかし、前者は大通りに面していないために集客面を懸念し、後者は事業収益力の観点から賃貸借条件で折り合いがつかなかった。
これらの有効活用施策は空振りに終わったものの、JLLは市場調査を継続する中で、生活協同組合が平塚市界隈で物流倉庫の移転を検討しているとの情報を入手し、移転先として当該地を提案。立地面では高評価を得たものの、1,000㎡以上の土地に非住宅建築物を開発する場合の都市計画法の規定である「前面道路の幅員9m以上」を満たしていなかった。
3.交通規制
従前、社宅として活用されていたため、通勤・通学時の安全性確保のため、前面道路が時間帯限定(7-9時)の一方通行規制がなされていた。荷物の積み込み作業や配送車両を手配することになり、当該時間帯も車両の出入りは避けられない。この交通規制があるため、配送センターとしての活用が非常に難しい状況にあった。
JLLのアプローチ
JLLは「接道条件」と「交通規制」という2つの課題を解消すべく、監督官庁との交渉を行った。
接道条件:平塚市と協議
JLLが調査したところ、前面道路の幅員は6m未満だったが、道路沿いに暗渠(地下水路)が存在し、合算すれば幅員9mを超えることが判明。JLLは暗渠の所有者である平塚市と協議し、事業者(クライアント)にて暗渠上部を道路として整備することを提案。暗渠内部の図面作成を行い、開発条件を満たす工事手法の検討を重ねた。
交通規制:警察署と協議
時間帯指定の一方通行標識は、もともと社宅として多くの居住者が存在していたことに起因するが、すでに社宅は存在しないため、標識の存在意義が疑問視された。JLLは警察署に交通規制の緩和を協議し、地域住民の合意形成を図るべく、近隣説明会を開催した。
成果
平塚市、警察署、地域住民との協議を行い、各種課題を解消するべく、事業者負担で道路整備を実施。元々、暗渠部分は違法駐車やゴミの不法投棄などが問題視されており、道路整備がこれらの課題解消に寄与することから、本プロジェクトは地域住民にも好意的に受け止められた。また、道路整備に伴い既存バス停を移動する必要があったが、警察署・バス運行会社の協力が得られ、バス停留所のセットバックも無事完了。
これらの取り組みによって行政から開発許可を得ることができ、最終的に生活協同ユーコープが活用するBTS物流倉庫を無事完成することができた。
テナントにとっては既存センターの開設から35年余りが経過するなかでの老朽化と配送車両の増加に対応できる新たな事業拠点を確保することができ、クライアントであるNTTグループはBTSスキームによる長期安定的な収益化を実現することができた。一方、地域住民にとっては道路整備に伴う環境改善などの恩恵もあり、地域貢献にも寄与しながら三者三様のニーズを満たすことができた。
JLL担当者の声
本プロジェクトを担当したJLL日本 ストラテジックコンサルティング事業部 ディレクター 高橋 浩二は次のように述べています。
「本件における社宅跡地の有効活用施策は長年に渡り検討がなされ、最終的にBTS物流倉庫を新規開発し、生活協同組合ユーコープ様の配送センターを誘致することができました。行政・警察・地域住民といった様々なステークホルダーとの交渉を重ね、長期間遊休地化していた用地の収益最大化に成功したCRE戦略コンサルティングの好事例だといえます。物流倉庫の開発は交通量が増えることから近隣住民に敬遠されることが多いのですが、道路整備によって周辺環境の改善にも寄与していることから前向きに受け入れられたことがプロジェクト成功の一因だと実感しています」
CREコンサルティングのご相談はJLLへ
JLL日本 ストラテジックコンサルティング事業部では国内外問わず企業の不動産戦略を支援しており、各種規制など、様々な課題を抱える遊休地の収益化などを支援してきました。CRE戦略に関する資料請求は下記よりお問い合わせください。