長期的な視野で投資運用を行う投資家に加えて、中・短期的な視野で投資運用を行うプレーヤーによる賃貸住宅への投資の関心が高まっている。テナントの平均入居期間の短さと賃料の上昇トレンドという2つの要素は国内の幅広い地域で観測される中、東京圏がなお投資市場で重視される背景を探る。
本稿は全3章で構成されるマーケットレポートのうちの1章となる。全3章を通じて、日本の賃貸住宅投資における東京一極集中の要因とその地域分散の可能性を探索するため、賃貸住宅市場を地域ブロックや都道府県、市町村などの複数の地域スケールから分析する。
1章では、日本の賃貸住宅に関する不動産投資市場の分析を行った。最近の投資市場における賃貸住宅では、景気変動の影響を受けにくく収益が安定しているという従来認識された特性よりも、テナント入れ替えの周期の短さという特性が全国的な賃料の上昇基調の下で支持されているとみられる。ただし、投資対象地域は依然として東京圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県の1都4県)に集中する。投資家の投資クライテリアで東京圏が選好される状況が、当地での取引機会とその情報の集積をもたらし、それによって流動性の高さが確保されてきたことが一因とみる。